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極度の恐怖 株安•金利高•ドル高 材料山積み

米労働市場崩れない限り利上げ

米労働省が7日発表した9月雇用統計は労働市場の堅調さを示しました。

景気を敏感に反応する非農業部門雇用者数は26万6300人僧。ダウ•ジョーンズがまとめた市場の予想中央値27万5000人を下振れたものの、ブルームバーグ集計の予想中央値25万5000人を上回りました。ほぼ予想通りと言えます。失業率は改善。予想(3.7%)に反し3.5%へ低下しました。賃金は前月比0.3%上昇、前年同月比5%上昇。小幅予想を下回ったものの、予想の範囲内でした。

金融市場は米連邦準備理事会(FRB)が積極的に利上げし景気の腰を折ると警戒しています。全体的に堅調な米雇用統計がFRB高官のタカ派発言を裏付けました。先物市場からFRBの金利政策を予想するFEDウォッチによりますと、11月2日の連邦公開市場委員会(FOMC)の0.75%利上げ確率は前日の75.2%から81.6%に上昇しました。

ウォール•ストリート•ジャーナルのFRBウォッチャーとして知られるニック•ティミラオス記者は5日、「FRBが利上げ政策を転換するかと顧客から質問されるが、米労働市場に綻びがみられない限りFRBは利上げを継続すると考える」とするバンク•アメリカ証券のアナリストのコメントをツイートしました。記者は続けて、バイデン大統領が新たに起用したFRB高官が相次いで積極利上げを支持したとツイッターに投稿しました。

米ドル買いで反応

グッドニュースはバッドニュース。堅調な雇用統計は米労働市場の強さを示すグッドーニュース。金融市場の視点では、FRBの積極利上げ観測を強めるためバッドニュース。

米雇用統計を受け長期金利の指標である米10年物国債利回りは3.88%に上昇。短期金利の指標である米2年物国債利回りは4.31%に上昇。

米利回り大幅上昇を受け外国為替市場は米ドル買いで反応しました。ユーロとスイスフランの対米ドル相場は約0.5%続落。ポンドも続落。円は145円40銭近辺の米ドル高•円安水準で推移しました。資源国通貨はまちまち。豪ドルは続落。NZドルも続落。原油高が寄与してカナダドルは対米ドルで小幅反発しました。

新興国通貨のクロス円は全体的に堅調でした。南アフリカランドは下落しましたが、トルコリラは小幅高。メキシコペソとブラジルレアルは上昇しました。

米株大幅続落

米株は全面安。ダウは630ドル続落。S&P500は2.8%下落。ナスダック100は3.9%安と4%近い大幅な下げでした。株式ETFは全面安。GAFAMは大幅下落。MSFTは5.1%急落、METAとAMZNの下げ幅は4%超。AAPLも4%近く下げました。Q3の弱気見通しを発表したAMDは14%急落。弱い見通しとツイッター問題を抱えるTSLAの下げ(6.3%安)が目立ちました。

仮想通貨も軟調

暗号資産も売られました。金融市場全体のネガティブ心理が影響。BTCは3%下げ2万ドル割れ。ETHも2%超下落しました。QQQと金利を睨んだ動きでした。XRPは4%上昇しました。米SECとの訴訟の行方を楽観視、BTCや ETHと比べ規模が小さいことも上昇率を大きくしているようです。

住宅ローン金利7%突破

OPECプラスの大幅原産を受け原油価格は上昇基調。ニューヨーク市場の原油先物WTIは4.74%続伸、終値は92ドル64セントと90ドル台に乗せました。モルガン•スタンレーのアナリストは来年1〜3月期にも100ドルを突破すると予想。ゴールドマン•サックスも原油が一段高になるとみています。

米国はクルマ社会。ロサンゼルスのガソリンは1リットル=約280円と過去最高水準に上昇。生活を圧迫しています。サプライチェーン制約が緩和し新車在庫が増えましたが、消費者の余裕はなくなりました。中古車のマンハイム価格指数の1月は前年比45%上昇でしたが、8月は0.1%低下しました。

マイホームの夢は遠のきました。米10年物国債利回りと連動する住宅ローン金利は大幅上昇。アメリカ人の利用が最も多い住宅ローン30年物金利は7日時点で7.12%に上がりました。1年前は約3%でした。日本円換算で5000万円のローンを組んだ場合の金利負担は月20万円程度増える計算。景気低迷でローン審査が厳格化、住宅市場は大幅に悪化する恐れがあります。

CPIと決算

10日の週の米市場は材料が豊富。注目は13日発表の9月消費者物価指数(CPI)です。クリーブランド地区連銀のインフレ予測モデルは、CPIが8月の8.1%から8.2%に、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは6.5%から6.64%に伸びが加速することを示唆しています。予測通りであれば、FRBの積極利上げがさらに意識され、金融市場が荒れる可能性があります。14日のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)も材料になりそう。IMF会合やG20財務相•中銀総裁l会合も注目です。

米株式市場では第3四半期(7〜9月)の企業決算が相場を動かすとみられます。銀行大手が発表を先行します。地合いは悪い。恐怖指数VIXとCNN恐怖強欲指数は「極度の恐怖」を示唆。さらに総悲観に傾けば、相場が反転する期待が強まるかもしれせん。

FX市場は金利をにらんだ展開が予想されます。円は日本政府の介入が意識される水準まで再び下落しました。ロイターがまとめた予想は1ドル=143〜147円。ブルームバーグの予測モデルは142円41銭〜147円41銭でした。

仮想通貨は引き続きマクロ経済が主要な材料になりそう。金利とQQQおよびVIXに注目。ドル指数(DXY)と反対の動きを示すと予想されます。BTCとETHはレンジを抜けるか注目。DXYが下落基調に転じれば、大きく動くとの指摘があります。

米国の金融市場は不安定。FX、仮想通貨、株式のボラティリティの起点はいずれも債券市場(金利)にあります。米国債市場に注目を。




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