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あの頃あって、今もあるもの

冬の休日。休みの日はいつもロードバイクで外を走っているのだけれど、冬になると走れなくなり、かわりに家でインドアサイクリングをすることになる。今はバーチャルサイクリングも充実しているけれど、さすがに飽きるので冬場は運動がてら、よく近くの円山に登る。今日は妻を誘ってこの冬初めて円山に登ってきた。登山道にまだ雪が積もり切っておらずに雪解けでドロドロになっていてかなりコンディションが悪く歩きにくかったけれど、いつも通りの木々、小動物の足跡、うるさいくらいの鳥たち、ちょろちょろ走り回るエゾリスたちを見ながら一時間半ほどかけてゆっくり歩く。

人間の存在と一切関係なくそこにある原始林とそこに生きる動物たちを見ているとほっとする。私たちの経済活動や組織のどうこうや人間関係のなんやかんやなんて、人間が勝手にやっているほとんどどうでもいいことなんだということが、理屈ではなく心の底から実感できるからだろう。

帰りに近くのミスタードーナツで朝食を食べて、スーパーで買い物をして家に戻る。自分の部屋でオイルヒーターを椅子の隣において、ずっとラジコでFMをつけっぱなしにしてうとうとしながら、ぼんやりとネットを見たり本を読んだりしてのんびり過ごす。山下達郎のラジオ番組は、ほぼオールディーズしか流さないのだけれど、今日はジャミロクワイが流れてきて驚いた。さすがにジャミロクワイはオールディーズではないだろうけれど、私が大学生のころに聞いていた音楽はもう30年前の音楽だということに改めて気づく。

最近また、村上春樹の小説を読んでいる。仕事に疲れるとつい読みたくなる。20歳の時に初めて読んだ「ノルウェイの森」。あれから30年近く経ってもまだ読み返す。何度も読み返したくなる本があるというのは、それだけで幸せなことだと思う。

私の学生時代はもうはるか昔の話だ。私も私の周りにいた人たちもあれから歩きづつけて、こんなに遠くまでやってきた。

あの頃聞いていた音楽、あの頃読んでいた本、あの頃一緒にいた人。はるか昔からそこにある円山の原始林。

そんなものたちがあの頃のまま、
今もあることの幸せをかみしめる。


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