20230710 「児童数の減少と地域の祭りの変化」を読んで
ここ最近は石村萬盛堂博多夜ばなしのことばかり書いていたので全然論文を読めておりませんでした。なんだかんだで2週間くらい読んでなかったのかなと。これくらい空くと論文の読み方を忘れてしまっているのもあって,リハビリ的に短くて簡単なものを読みたいな~と思っていたら,自分の関心にぴったりのタイトルを発見!
久保沙也香 (2013). 児童数の減少と地域の祭りの変化. 金沢大学文化人類学研究室調査実習報告書, 28, 81 – 89.
石川県珠洲市(すずし)という能登半島の先端に位置する市の若山町での聞き取り調査を元に,明治時代から小学校の児童数の変化を検討したのが論文の前半にありました。「子どもの数が減っている!」「それで祭の維持ができなくなっている!」という危機意識は全国的に共通してもたれていますが,実際にこうして「ある地区の児童の数の変動を長期間にわたってまとめてみた」研究は少ないように思えたので,こうして実際の数値を詳細に示してもらえて「子どもが減っている」ことを再確認かつ再体感できたのはよかったです。
まあでもこの論文の中でも,小学校の統廃合や校区の範囲の変更などについての記載があり,なかなか数値だけを単純に比較できない問題はどうしてもあるので,これまであまりこうした数値を載せる研究はなかったのかもしれませんが,やはりこうした数値は載せて行った方が良いなあと思いました。
その後,5つの地区の祭の変容などについての記載があるのですが,基本的には児童数の減少で従来の伝統的なやり方での祭の維持はどこでも難しくなってきており,学校の授業の一環として行われる「ふるさと学習」の対象として祭が維持されていくようになるプロセスについて説明がなされていました。
以下,重要と思われたところを引用します。
この「学校行事として祭が維持されていく」というのは,ある意味博多小や博多中で博多祇園山笠を学ぶのと同じようなものであり,これは全国的に現在みられている動きだと思います。
ただ,この学校で祭を教えるのは劇薬でもあると思います。それは,基本的にこのような活動を行うのは小学校のみであることが多く,小学生と地域の高齢者をつなぐことはできても,その間の層(中学生~壮年層)の参加が逆にしにくくなる可能性があると思っています。特に,中学校や高校の場合は小学校に比べると祭への参加を含めた学習が行われることは少なく,中学生が卒業生として小学生を教える動きはなかなかつくりにくいこともあるため,中学校以降の子どもが祭と関わる手段を逆に減少させてしまう可能性もあると思っています。
山笠などの場合,学校とは全く関係のない「大人の山笠の世界」が確固として存在しており,中学生以降はそちらの参加をメインにしていけばよいのですが,そのような祭は全国で見ると少ないのだと思います。
このあたり,自分が教員養成に関わっていて学校と祭の関与は高まってほしいな~と思っている立場ですが,それは意外と難し問題だなあとも思っていて,学校と祭の関わりについてはまたいつかいろいろと調べてまとめてみたいなあという思いを新たにしました。
ここまで書いて「子ども山笠の写真があったような気が?」と思って探してみると,2019年の7月7日に千代小の子ども山笠が櫛田入りをしているところの写真を見つけました。子ども山笠と学校,大人の山笠の関係なども調べてみたいなあ…。