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いつか暗い海を漂うことになったとしても
ライトハウスロースターズ。
その名の通り、灯台のように街を見下ろせるような、シアトルの少し高台にあるコーヒーショップ。1993年に創業し、もう25年もコーヒーで明るく街を照らし、シアトルの人たちに愛され続けている。
店内で少し長く過ごしていると、大行列、というわけではないが、お客さんが途切れないことに驚く。ここは駅前でも繁華街でもなく、観光客の私などはダウンタウンからバスを使わないと来られない閑静な住宅街にあるはずなのに。
カウンターに座ったかと思ったらエスプレッソマキアートをくい、くい、と流し込み、またねと去るおじいさん。
きゃいきゃいと楽しそうな女性が数人、店内で少し話し、その大きなカップを持って、帰って行く。
犬の散歩がてらにテイクアウトしたり、コーヒーカップはもう長くからっぽじゃないのかしらと思うほどに店員さんと話し込んで行く人。
私の大好きなコーヒーシーンがつまっていた。
美味しいコーヒーと、あたたかなお店と、心からくつろぐお客さん。
たとえ持ち帰り用に立ち寄るたった一瞬でも、流れる優しい雰囲気を感じることができるだろう。
そんなコーヒーショップの、とある日曜日の午後。
私は大きな焙煎機の横で、ときどきお客さんの中に入ってみたりもしながら、クラリネットを演奏した。
毎日、それこそきっと25年間ずっと、彼らが愛情を込めて豆を煎る大切な焙煎機。
ただコーヒーが好きというだけで、コーヒーの街に来て、その街を代表するようなコーヒーショップで、大好きなクラリネットを演奏しているなんて、夢にも思わなかった。
私が思い描きもしていなかった夢を一緒に叶えてくれた人がいるなんて、まさか泣いて喜んでくれるお客さんがいるなんて、本当に、夢じゃないんだろうか。
(ピアニストのRurikoさん、オーガナイズしてくれた沢田さん)
いつか真っ暗闇の海で迷うことがあったとしてもきっと、このひとすじの光だけは私を導いてくれる。
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