「たった一回のコンサートの感動が、その後の人生をずっと励ましてくれることがある」
そういえば私は、はじめてオーケストラのコンサートを聴いたのはいつだったのだろう。
小学校の芸術鑑賞会で学校にオーケストラが来た気もするし、どこかのコンサートホールに出かけた気もする。
中学校でクラリネットを始めていたから、芸術鑑賞会で吹いていたクラリネット奏者が、後に大学でお世話になる山本正治先生ということはなんとなく覚えてはいたのだけれど。
小さなころからピアノを習って吹奏楽部に入って熱心に部活動に励んでいても、記憶などこんなものだ。(オーケストラのコンサートに限って言えば、の話だけれど。)
はっきりと覚えている、印象に残ったオーケストラのコンサートは、高校2年生のとき。
吹奏楽部の夏のコンクールがきっかけだった。私達の高校が自由曲に選んだのはレスピーギ作曲の「ローマの噴水」。
これは吹奏楽のために書かれたのではなく、オーケストラのために書かれた曲。実際にオーケストラではどんな音がなるのかを聴きに行こう、ということで、部員全員で聴きに行ったのだ。
今までクラリネットの音でまっすぐと吹いていたメロディが、ヴァイオリンの繊細なニュアンスに。
こんなにもやわらかく、力強く、くるくると表情を変えるのか、と瞬きするのを忘れて身を乗り出して聴いたのを、ありありと思い出せる。
そうだ、もしかしたらあのときにオーケストラで演奏したいと思ったのかもしれない。(今では全然違う道に進んではいるが。)
私が、オーケストラの、クラシックのコンサートが好きなのは、ここではないどこか違う世界に行けるからだ。
どんな世界にも、どんな時代にも連れて行ってくれる。どんな感情だって引き出してくれる。
音楽に身を委ね、想像を働かせては(しかしそれも自身の自由だ)、ぼうっとした頭でコンサートホールを後にする。
だから、こんなマガジン(「あなたの音楽を届けるために」)を書いたりして、私だけじゃなくて、もっといろんな人に聞いてほしい、と毎日考えているのかもしれない。
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日本フィルハーモニー交響楽団が、こんなプロジェクトをはじめました。
詳しくはリンク先を読んでいただきたいのですが、今回は初めての取り組みということもあり、まずは「勤労感謝の日」に行うコンサート、さらにひとり親のご家庭に焦点を絞っているそう。
人しれず困難を抱えていることが多いひとり親のご家庭と、その中で、文化的な活動に触れる機会が少ない状態にある子どもたち。双方に音楽をきいていただきたい、そして親子で同じ時間を楽しんでいただきたい、と願っています。
「たった一回のコンサートの感動が、その後の人生をずっと励ましてくれることがある」
心からそう思います。だって、私自身がそうだから。音楽の力に支えられて毎日生きているから。
このプロジェクトが成功しますように。そして継続されますように。私も微力ながら支援させていただきます。