手作り品と量産品の間を目指したい
石けんの製造販売を開始して1年が過ぎました。ありがたいことにリピーターのお客様のお陰で、少しずつ生産量が増えてきました。
最近はお客様のお選びになる石けんから季節の移ろいを感じます。
冬の北風が冷たい季節は、濃厚な泡と保湿力が高い酒かす椿石けんが大人気でしたが、花が咲き木々が芽吹くこの季節になるとさわやかな香りで精神のバランスを整えるクロモジ石けんと、リラックスアロマの代表格のラベンダー石けんが急に出るようになってきました。
すーっと透きとおるようにウッディで爽やかなクロモジの香りと、甘くフローラルなオーガニックラベンダーの香りが工房に広がります。
こちらは先日製造したばかりのラベンダー石けん。型に流し入れた後、切り分けて、温度管理をしながら乾燥・熟成させていきます。
こうしてできあがっていく石けんは、途中で何度かpHや水分量等の各種検査を行います。
検品作業と真空包装を経て、化粧箱や上質紙で包み、医薬安全課に届出済みの化粧品登録をしたラベルを貼り、ようやくお客様のもとへお届けできるようになります。
最近、ありがたいことに卸のお話を多くいただくのですが、こうした手作業が中心なので製造能力に限りがあります。
いずれは人を入れて、もっと大量に作らなくてはならないのですが、できれば現在の延長線上でゆるやかに製造量を増やしていけたらと思っています。
もちろん会社としては年々成長していきたいとは思うのですが、あまり量産にとらわれると、製造の工程を簡素化したり、原材料が大量仕様のものしか使えなくなり、デザインを入れられなくなったり、どんどん私たちの手を離れて無味乾燥な石けんになっていってしまう気がするのです。
いくらオーガニックでも心ときめかない石けんは作りたくない。
パーム油不使用の環境に優しいエシカルな原材料で、お肌の美容液になるような素材で、見た目も美しい本物の香りの石けん。
ひとつひとつの石けんから心が伝わるような、そんなものづくりをしていきたいのです。
「みんなが使っているから」という曖昧な理由で「消費される」のではなく、「私はやっぱりこれが好き」と自分軸でMATSURIKAの石けんのファンになってくださるお客様のために作りたい。
春先に発売して大好評で販売終了した「春2019」石けん。一層一層ごとに違う石けんを流し込んでいるので、非常に手間暇かかります。
昔家で趣味で石けん作りしていた頃は、小さな型を使い、こんなデザイン簡単だと思っていたのですが、大容量で失敗なく製造となるとまったく話が違います。
数量限定でしたが、なんとか作れたのは、私たちの小さな生産規模だからこそできたデザイン石けんだと思うのです。
きちんと化粧品製造の薬機法の基準をクリアした安全な製品でありながら、手の温もりを感じる石けん。
私たちが目指すのは、手作り品と量産品の間なのだ。
お客様が欲しい時に使えるように、ある程度の量を作りながらも手間をかけて見た目が美しい石けん。使用感も良くて人にプレゼントしたくなるデザインなど、これからもこだわっていきたいなぁと思うのです。
ありがたいことに新規のお客様の多くは口コミと紹介。
そしてパーム油不使用などのキーワードで、検索して探し出してくれたお客様ばかり。
急に売れてしまうと常連のお客様のニーズに応えられなくなってしまうので、自らお金をかけた広告は出していません。
こんな風に「じわじわ」拡がればいいと思っている。
こうした姿勢は経営者としては、褒められたものではないのかもしれませんが、もともと子育てしながらの私たちの製造能力には限りがある。
「完売」や「売上げ急増」はきらびやかだけど、きっとその反動も大きい。
だからと言って「手作りなのでぜんぜん数が作れません」というのも違う。無味乾燥になっていく量産品とも違う。
私たちの心と手の届く範囲で可能な限り作り、その石けんが使った人の琴線に触れるような、そんなものづくりを目指していきたいです。