【おあいこさま】
「それでここの伝承を聞いて回ってると、はぁ感心だねぇ。
…じゃあ“おあいこ様”についてお話しようかな。ここらの山に昔から住んでてね、おじさんのおじいちゃんが、そのおじいちゃんから聞いたって言うからだいぶ昔からいるんだよね。
妖怪…と言うより神様に近いかな。 何の、って強いて言うなら平和の神様かなあ。おあいこ様の周りでは争いは起きないんだ。この市が物騒な事件や戦争に縁がないのはそのためだよ。
みんなじゃんけんやるだろ。あれはおあいこ様の姿を真似て祀った儀式が手遊びになったものなんだ。ほんとほんと。争うくらいならじゃんけんで決めなさいって小さい頃よく言われたもんだよ。
おあいこ様は小さな諍いも許さないよ。おじさんね、君らぐらいの年の時、兄貴とケンカしたんだ。仕事やなんやでイライラしてたんだろうね、私をつきとばしたのがきっかけでね。
ほら、おじさん左手が無いだろう。おあいこ様に食べられちゃったんだよね。
…お兄ちゃん?あの仏壇に供えられてる箱見えるかい。あれだよ。左手が入ってる。」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?