【まにまの旅路はやらいでか】
そろそろ「おじさん」と形容しても違和感のない歳だ。
胃袋が小さくなってきた。油物は、もう受け付けない。好んで足を運ぶのは、うどんのチェーン店だ。卵を割ってかけたものが好きだ。
入口を入りすぐに注文をし、僕は店内のデザインに沿って歩を進める。うどんを受け取り、レジで会計を済ませる。
「ありがとうございます」
気づけばそこは応接間。折りたたみ式のテーブルに並ぶは見た顔の中年男女十数名。
息を飲んで一歩踏みだし。
敷居を跨ぐとそこは、何も無かった。
敷き詰められた賞状の頭上には、海老の群れ。
来年のことを話すと、鬼が笑いに来た。暇なヤツだ。
酒を煽れば百鬼夜行。豆腐に醤油は邪道である。イタリアンドレッシングをこれへ。
果たして、煙の体の具現化は上手くいったのか。失敗したのだろう。
四半世紀、長い長い恵まれた時間。眠ってはいけない。もったいないことだ。
それらしく形容することは無い、ただの、黄金の、炭酸。ビールである。
天井を見れば友の顔。私を気遣う友の顔でいっぱいだ。くだらねぇ、くだらねぇと呟けば、天から礫、祖母の礫。
蒸発の概念を知っていたのは僕だけ。それをいつまで引きずるつもりかと尋ねれば、返ってくるのは古臭い言葉の応酬。
僕が今作りたいのは鬼の顔だ。
僕はここで引き返すことにした。
気づけば、見慣れた田んぼの真ん中。おばあちゃん、おばあちゃんの両の眼は何を見る。
どこだって変わらないのだ。環境を変えたとて。俺は。
ここはどこだ。