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2024年の予想


去年もやっていた年間の予想(尊敬する株主の木村さん(Gunosyの会長)の真似)を今年もやってみる。



2024 年の雑感

本邦では、テクノロジーへの期待が、加熱を通り越して本来は通らなかったような法律や規制改革が行われるだろう。

ライドシェアの文脈もそうだが、フェムテック文脈に絡めたピルからの薬局DX(すでにインドネシアではGrabで薬が届く)やWeb3までテクノロジーとスタートアップは日本のすべての課題を解決する、「銀の弾丸」として取り扱われ、そして早晩、勝手に失望されるだろう。

まだアトムは現れない


ハイプサイクルでいう「過度な期待」である。そしてその中で一番期待されて一番幻滅されるのは生成AIだと考える。(しかし実際は浸透し多くの領域の仕事を変える)
一方、OpenAIは我々が思っているよりもテクノロジー原理主義であり、開かれていない。
テクノロジー産業の終着点を考えるなら水平展開エコシステムではなく垂直統合であり、エコシステムの顔をしながら最後は統制をかけ、息苦しい場所になるだろう。

いくつかの本来撤廃してはいけない規制が撤廃され、幻滅期には大きな問題になるが、この「過度な期待」を味方につけ、幻滅期に耐えうるビジネスを構築した上で、本物への投資が幻滅期にできるプレイヤーこそが次世代の覇者となるだろう。

この不安定な状況を制するのは熱狂の太陽ではなく、次の時代まで耐える人工の青白い原子炉の灯である。

つまるところ熱狂から執念の時代に移り変わると予想する。

この執念の時代を生き抜き、かつDXへの失望が一回りしつつも、確実に産業にAIが埋め込まれた時期こそ、次なる世界を感じることができるわけだが、今年は種まきである。

テクノロジーセクターの話をしようと思っていたが紅白のYOASOBIを観ていて…


ウクライナ戦争が始まった時、もしくは安倍首相が暗殺された時、ChatGPT4が出た時、イスラエルがパレスチナに進行した時(この時はもう何が起きても驚かなかったが)
誰もが予想しなかった出来事だらけである。

コロナがはじまって、今まで地面だと思ってたものがそうでなかったと気づいたあの瞬間に近い感覚。そのような不安定さが日本だけでなく世界中そしてあらゆる場所で蔓延し続けるだろう。

しかしこれは一種の膿出しであり、脱皮である。
みんな欺瞞だとわかりつつも触れなかったものが、痛みを伴いながら次の世界へとかわっていく数年間になるのではないか。
ジャニーズがいなくても年は越せるし、揉み消されていた疑獄は明らかにされる。

今まで30年余り生きていた中で嗅いだことがない匂いである。

変わらないことへの諦観から黒船モデルである(外国人が顧客、既存の商流とは違った商流をデザインできる)民泊産業を選んだが、これはある意味日本が何も変わらず衰退し切る前提であった。

衰退し切った上での再生ではなく、いい意味での再活性化のシナリオが僅かばかり見えてきた気がしており、とても嬉しい。

とはいえどんなシナリオでも波乱の一年になると予想しているが、スタートアップは乱れがある瞬間しか大化けはないので今年も奇貨を多少なりともおきつつ、やっていきたい。

追記:1/10


年が明けてからあまりに大荒れで、まさにうみだしが進んでいるようだ。シニカルな気持ちで書いたので、状況に合わせて淡々とやることをやるだけ、という感じの設定になっていたが、考えが変わったので来年の振り返りのために追記しておきたい。

能登地震や円安、喜べない形の株高、国の形がかわろうとしている。このうみだし、と言っているものの中には、うまくいくのであれば今までの生活が大きく変わってしまう人も少なからずいるだろう。そして今変えなければいけないのも事実であり、大変な対立が生まれるだろう。

そんな中で必要なのは、悲観的に改革を進める冷徹な実行主義だと思うが、本当に進めるに当たっては『今までの生活への敬意』こそが必要なのかもしれない

「誰一人取り残さない」デジタル化をデジ庁が打ち出した時、そんな生温い話でいけるわけないだろう、と冷めた目で見ていたが、国の形が変わる際、誰かの故郷がなくなる瞬間、誰一人取り残さないと言いつつそんなことはない瞬間にお題目でも楽観的な目標が必要なんだろう。

今年は冷徹に実行者を気取り、正論だけを吐くのではなく、
本当の意味で共感、それもしょうがないよね、とため息を着きながら妥協して改革を支持する方々に少しでも良い未来が訪れることを目指してやっていきたい。

去年の振り返り


去年の予想はこちら

-レイターが厳しく、シードアーリーは骨太な人材が増え、良いビンテージになるのではないか

→思っているよりレイターステージは厳しい状況になっている。資金調達やIPOの出口の状況を考えるに、2022末に思っていたより厳しい。それでも倒産が出まくっていないのは日本の環境がゆるいからだろう。シードアーリーはレイターに投資できなくなったリソースがより前に投資しようとしていて思ったより筋肉質な会社が増えている印象はない(シリアルが起業している場合は除く)

-ITコングロマリット群が増える→コンパウンドスタートアップの流行やPEによる二段階ロケットモデルが出てきたりと想像していた状況に近い。ただし、本当にその果実を手にできるプレイヤーはかなり少ないと感じる。プロダクトの質を見ればすぐわかるのに、すごい金額を投じる投資家は勇気があるな、、、と。

総合格闘技なので、モメンタムが維持できて買収でOKなどど俯瞰してみているのかもしれないが、2000年代ではないので、白兵戦で血みどろをやる場所では実力の差がはっきり出るだろう

-バーティカル×リアル×DX

→我々がいるインバウンドや不動産、ホテル
×テックはコロナからの回復を目掛けて少しづつ参入が増えているが、全バーティカル領域という意味ではそんなに増えなかった。

DXでの差分をベースに産業を切り取るという発想は現時点においてはチャンスがあるというのは変わらない見方だが、ファイナンス環境が悪化している中でなかなか大規模な投資をソフトウェアの差分に対してレバレッジをかけて実施するのは難しかったのだと感じる。

2023は早稲田、大阪、台湾(正式に)オフィスを開設した

当社も今年はよく投資をしたが、今思えば2021などの好調期にファイナンスした余韻がなければここまでの投資は難しかっただろう。

-スタートアップへの優秀な人材の転職が増えて欲しい→今年も数十人の採用を実施したが、人材の質は上がってきている。Nextユニコーン調査の企業の平均年収が大企業を超えたというニュースも衝撃的で2013とは隔世の感があるが、個人的には竹槍で特攻するタイプの人材を採用する会社が減ったように感じ寂しい。
若くて、いくつかの地獄を見て、良いビジネスマンになるにはうってつけのスタートアップが、採用がうまく回り出したことで、教育コストを皮算用するようになった。Wantedlyの高齢化やTechCrunchの撤退も一つの時代の終焉の合図だったんだろう。

こう振り返ると結構当たっているように感じるが、年初から兆候が見えているわかりやすい1年だったんだろう。
(そしてそもそもAIがここまで来るなんてのは考えもしなかった)


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