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父をみて思った「いくつまで働くか」ということ
田舎の父が3月末をもって、勤め先を辞める。高卒で公務員になり60歳で定年。非常勤に雇用形態を変えながらも働いていた。また非常勤の試験を受けることもできたそうだが「後ろ(後輩)がつかえているし、これ以上は」と延長は望まなかったという。
数年前から帰省するたびに「辞めた後、どがんしようかなぁ・・・」とこぼしていた。お金に困っている訳ではないが、家にずっといても仕方がないし、張り合いもないだろう。趣味の謡曲や仕舞、トロンボーン、ちょっとした畑仕事だけでは、1日が終わるとも思えない、何かしら働きたいと思っているという。
「何をしたいの?」
「資格を活かして働きたかけど、田舎ではなかけんね・・・」
父は勉強家で、宅建やマンション管理士、国内旅行業務取扱管理者、FP2級、等数々の資格を趣味で取得していた。特に不動産の分野には興味が強いようだった。しかし、私の生まれ育った町は、いわゆる限界集落予備軍で、そもそも雇用がない。仕事がありそうな県庁所在地に行くにも片道車で2時間。通うのは現実的ではない。父の先輩の中には、行政書士の登録を済ませ(公務員として行政事務に17~20年従事すれば無試験で行政書士の登録が可能)開業した方もいるという。それも考えたようだが、登録料や資格維持のための費用が掛かるらしい。それをペイできるほど働けるかを考えると難しそうだという。
「どれだけ働いたとしても70歳までやろ。あと5年なぁ・・・」
厚生労働省の2016年の調査によれば、男性の平均健康寿命は72歳。体調の維持管理という責任をもって働くとなると、70歳という数字はなかなかに現実的だ。5年で開業し、軌道に乗せ、円満に廃業する。これまた厳しそうだ。
結局、父の「どがんしよう」は答えが出ず、4月から無職になる。
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就活生や若手社会人で「どんな働き方をしていきたいか」「どう働いていくか」について、真剣に考えたことがある人は多いと思う。しかし「いくつまで働くか」を真剣に考えたことがある人は少ないだろう。私もそうだった。
”今”の自分、”少し先の未来”の自分を想像し、思いを巡らすことまではできるが、”もっと先の未来”までの想像は、考えが及ばない。また、勤め人であれば、定年年齢があり、漠然とそこを自分のゴールにしてしまうからではないだろうか。人生はその先も続いていくというのに。
勿論、労働が人生の全てではないし、アーリーリタイアをしたい人がいても構わない。しかしながら、人生100年時代、「老後資金に世帯で2000万円」と言われる昨今である。定年年齢の65歳でリタイアしたとして、残り35年をそれまでの蓄えでまかないきれれば良いが、金銭的な問題で働けるだけ働きたい、と思う事もあるかもしれない。体を動かすことが少しずつ難しくなってもゆるく働けないか、と思う事があるかもしれない。お金の心配は全くなくても、やりがいを求めて、労働を続けたいと思うかもしれない。
そんな訳で、「いくつまで働くか」についても早いうちから考えた方が良いと思った。その年齢まで働くにはどうしたら良いか、どんな手段があるのか、どんなスキルが必要なのか、逆算して入念な準備が要ると思ったからだ。結局、父はお金に困っていないこともあり、本気でそれを考えてこなかったのだろう。田舎で仕事がないのは最初からわかっていたし、起業をするにも70歳を期限にしたとして、残り5年では厳しいこともわかっていただろうから。これは仮定でしかないが、もし70歳まで絶対働きたかったら、60歳で定年を迎える前までに準備をして、契約職員にならず、60歳で起業が一番現実的だったと思う。
父の人生なので娘はこれ以上言うまい。職業人でなくなっても、父の人生はこれからも輝き続けるものである事には違いはないのだから。
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