十年後のボクへ。
今日は自らの力で人生を大きく変えたある一人の男性の話をしたい。
彼は、"優しい人"だった。誰もがそう口にした。
優しくて、優しくて、優しくて、あまりにも優しいからマザーテレサそう呼ぶ人もいた。
自分を後回しにしてでも人のデザインを手掛けるのも、旅立ったメンバーの名前を伏せることなく呼んでくれるのも、ミニコーナーの打ち合わせにもそれはもう入念に取り組むのも、片付けていて会場を出るのが一番遅いのも、いただきマンボウと言うとめしあがレンコンと必ず返してくれるのも、初対面の人の恋愛相談を対等に正面から受け取ってくれるのも、目を合わせてありがとうを伝えてくれるのも、全部全部彼の優しさであった。
歳を重ねる毎に増えていく笑い皺が彼の優しさを物語っていた。
そんな彼の転機となったのは2017年ではないだろうか。
ある日のレギュラー番組、いつもいるはずの彼の姿がなかった。何故だろう?疑問には感じたがそこまで気に触れなかった。違和感が残らなかったのは次の回では復活していたからだと思う。
その日が彼の人生を大きく変えることになると知るのはまだ先のこと。
舞台を控えていた。
"俺節"原作を元に脚本化された。演歌歌手になるため上京し、仲間と愛する人と共に夢を追いかける青年の奮闘を描く物語。彼はこの物語の主人公を演じた。
観劇した正直な感想は「…持つのか?」
感情が昂るシーンが多い上に演歌を魂で歌い続ける。
約三時間半全力で駆け回る舞台を一日二回、計34公演。
共演者の人たちにも心配されるぐらい毎公演一切手を抜かず、終盤は声も掠れている状態。これは彼が大千穐楽後にブログで語っていたことだけど「生死を覚悟して向き合った」って。彼がこの舞台で手にしたのは計り知れないほど大きいものだったと思う。間違いなくわたしはそう。今でも声も匂いも思い出せるぐらいだから。
そんな記憶に残る舞台から一年後。
彼が病と闘っていたことを知った。
点と点が線になった。
発表されたのがグループに関してのことと重なったから理解に追いつくので精一杯。そんな素振り見せなかったじゃない。それが彼の優しさだったけど、わたしにはそれが悲しかった。
彼の中で何かつっかえていたものが取れた。
言い方を変えると、吹っ切れた。
ブルーに輝くレンズも、無数に光るピアスも、彼を守るためのそれらが、心も変えていくみたいだった。
自分を守るために、距離を置いた。
彼の気持ちに寄り添えなかった。
彼は以前までの"優しい人"ではなくなった。
いや、これだと誤解を招くな。優しいんだけど、自分を取り繕った優しさではなくなった。
これは自分から相手に向けられていた大きな優しさが、自分<相手だったものが、自分=相手に変わったからではないだろうかと感じている。
彼は全て気付いている。これまでの自分と。これからの自分に。そしてそれを感じている人がいることに。それを認めるのはすごく勇気のいることだったんじゃないかな?
やっと、四年かかったけどやっと、あの時の彼の気持ちがわかった気がした。
彼と歩み始めて、気付けば十年が経った。
嵐を呼ぶ男たち。コンサートが中止になったり、飛行機が飛ばなかったり、メンバーの旅立ちだったり、平坦な道ではなかった。
だけど、歩んできた経験のすべてが今のわたしをつくっている。
必然的に彼と出会った年齢にわたしも追いついた訳なんだけど、今の自分の年齢であの感性はやっぱり半端ないですね。人間として達観した今の姿には、十年後も到底追いつけそうにない。
最後に、ここで宣言させてほしい。
わたしにも守りたいものができました。
愛と感謝を忘れず、真っ直ぐ。
わたしの人生を全部捧げたいと思えるぐらい大切な人。
必ず、一緒に夢を叶えるよ。
必ず、一緒に幸せになるよ。
だから、あなたもずっと幸せでいてね。
2022.9.11