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33 悪戦苦闘能力

今から23年前、1998年元旦の夜に放映された「NHKスペシャル 21世紀に挑む」の中で、ジャーナリストでノンフィクション作家、評論家でもある立花隆は、6人の若者と話をした後で、「21世紀に一番必要な力は『悪戦苦闘能力』だと思います」と締めくくった。「21世紀は『難問の連続』が待ち受けている。今までの解決法では解決できない。問題解決には発想力・構想力・アイデアだけでなく、それを実現する力、行動力が必要になる。がむしゃらに突進するのではなく、戦略・戦術を持って柔軟に対処する力が21世紀には必要になる」と。まるで今のコロナ禍を眼前にしているかのような言葉だ。
  
「悪戦苦闘」と言うと壁にぶつかりながらアザだらけになって進むかのようなイメージがあるが、コンピューターシステムの開発手法のひとつに、「計画的に」悪戦苦闘する「アジャイル開発」という手法がある。それまでの、工程を分割して順番に作業を進めてゴールへと向かう「ウォーターフォール開発」に対し、短いサイクルで要求の決定・実装・テスト・修正・リリースという一連の工程を繰り返し、徐々に完成度を高めて行く。「waterfall」が滝を意味するのに対し「agile」は「素早い」「機敏な」「回転が速い」といった意味になる。
 
ウォーターフォール開発が一発勝負なのに対し、アジャイル開発は要求を満たせているかを何度も確認しながら進む。ウォーターフォール手法で開発されたものがもし要求を満たさなかった場合、修正には莫大な費用と時間がかかってしまう。「計画的に」悪戦苦闘しながら進む事でアジャイル手法は要求に対する精度を高めていく。それは「悪戦苦闘」ではなく「善戦快闘」と言えるかも知れない。
 
アジャイル開発は緊密なコミュニケーションとチームワークを基盤として進められる。危機の時代を生き抜く術として、「現実の要求を満たすか」を尺度とし、緊密なコミュニケーションとチームワークを基盤とし、素早く機敏で回転の速い、積極的な「悪戦苦闘」を積み重ねたい。

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