25 ボイド(Boids)
鳥や魚が群れになると、まるでひとつの生き物のように一体となって動く。この現象を単純な原理によって再現出来るのではないかと考えた人がいる。アメリカのアニメーション・プログラマ、クレイグ・レイノルズだ。
レイノルズは、ひとつの点(鳥オブジェクト)が、状況によって3つの動きをするようにプログラムした。ひとつ目は、他の点が集まっている群れの中心へ向かおうとする動き。ふたつ目は、他の点と同じ方向に進もうとする動き。みっつ目は、他の点とぶつからないようにする動き。この3つの性格を持った点がたくさん集まると、まるで鳥や魚の群れような自然な動きを見せた。このモデルは「鳥もどき(bird-oid)」からボイド(Boids)と名付けられた。映画のCGアニメーションで見られる動物たちの多くは、このボイドによって作られている。
【ボイドによる魚群のシミュレーション動画】
https://youtu.be/BtRpOG1VexU
ボイドに与えられた3つのプログラムのような内在的論理が人間の中にもある事は容易に想像できる。ちょっとした自然現象や社会情勢によって変動する株価や、異質なものを攻撃・排除したくなるイジメの心理なども、ヒトに与えられた内在的論理の一部である。現在のコロナ禍の中での人々の動きにも当てはまるかも知れない。クラスターが発生したというニュース番組を見て「なぜ今この時に、そんなお店に行くの?」と思う事は多いだろう。世界的な環境問題の要因もそんな人間の無意識下の内在的論理によるところが大きいであろう事は想像に易い。
であれば、自分たちはそういう生き物なのだ、と自覚することで防ぐ事が出来ることも多いのではないだろうか。それを前提とした行政によるシステムの構築はもちろん大切ではあるが、個々の生活領域にあっては一人一人の内在的論理が変わることで、世界が抱えている問題群に大きな変化をもたらす事が出来るはずだ。人は無条件な情動で動く鳥や魚よりは賢い生き物である事を信じたい。
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