#人生がくるりとひっくり返る時
プレーヤーとして力を発揮し切れなかった選手が名指導者になるケースがある。最近ではサッカー日本代表の森保監督や野球日本代表の栗山元監督などがそうだ。逆に名プレーヤーとして名を残したが指導者としては評価されない、また指導者の位置にも上れない選手もいる。
人生は50年目くらいから表と裏がくるりとひっくり返る。一個の個体のように見える「人」とは実は、環境とか時間的な経緯とか交友関係、家系や宗教などの「文脈」または「背景」の集積であって、それが何となく形を成した固形物のように見えているだけなのだ。一定の時間を経ると成長した背景は色を増し、ルビンの壺のように背景だと思っていた部分がくるりとひっくり返り、実体として浮かび上がって来る。
年を重ねてから充実した時を得るためには、それまでにどれほどの背景や文脈を紡いで来たのかによる。背景とか文脈とは自分で意図して紡ぐ事の出来る部分と、そうでは無い部分がある。自分で何とか出来る部分は努力すれば何とかなる。問題はそうでは無い部分だ。実は背景としての比重はこちらの方が重い。
私は、子供に教えなければいけない事はこの自分ではどうにも出来ない「背景」をどうにかする力であると思っている。それは縁を取り込む力であり、大谷翔平のマンダラチャートには「運」と書かれていてその詳細はゴミ拾いであったり人への態度であった。つまりは日常の過ごし方や人に対する振る舞いだ。大人が子供に向かってカッコ付きの「夢」の大切さを語る時に決定的に欠けているのもこの一点で、目標や夢をどっかりと据えてしまうとそれ以外の要件に対してはクローズドになりがちだ。日々の環境の変化に心を開き取り入れて行くオープンマインドによって、自分自身の「背景」が活性化する。活性化した背景がいつの日かくるりとひっくり返って、社会の中で必要とされる自分自身になる。