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14 腹のこと

「腹」とは複雑なもので、立ったり据わったり、黒かったり抱えたり、探ったり探られたり、決めたり固めたり、括ったり割ったり、イチモツあったり納めたり、据えたり据えかねたり、読んだり読まれたり、肥やしたり切られたり、下したり痛めたり、かと思えば背中と比べられてやっぱり背に腹は替えられないやと諦められたり、しまいには虫がおさまらなかったり。

よし、こうしようと決めて話を前に進める際に必要なのも、やはり腹であったりする。何かあったら自分で腹を切る覚悟を持てた人だけが、腹の据わった事業をおこすことが出来る。自らの腹を痛めて生み出した事業を、たとえ腹の虫がおさまらなくとも背に腹は替えられないと腹を括って撤退を決めるのも、やはり腹なのである。

変動の時節、腹の据わらなさが命取りになる事もある。日本にはプリンシプルがない、と言ったのは白洲次郎だが、プリンシプルとは言い換えれば自分自身の内的論理であり行動原理である。「主義」と言ってしまうとちょっとニュアンスが違う気がする。もっと根源的な階層にある、自身を動かすスキームだ。

そう言ってしまうと硬直した頑固さのようにも思えてしまうが、本当に腹の据わった人は、人にやさしく、融通が効く。なぜなら、人にやさしくして融通を効かせる際にはすでに、何かあればオレが尻拭いをする、との腹が据わっているからである。ソンナオトナニ、ワタシハナリタイ、といつも思っている。

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