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4 命名「ちょっと。」

2012年7月31日、わが家に家族が増えた。子犬の育て方なんて何も知らない。ネットの情報だけが頼りだ。都会暮らしの新米ママってこんな気持ちなのかも知れない。

 子犬はまだ目もはっきり見えていない。ヨタヨタと立ち上がったかと思うとその場でチョロチョロとオシッコをする。そして寝る。寝る。寝る。子犬育ては2日目を迎えた。

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 さて、この子は生後1週間なのか2週間なのかはっきりと分かっていない。2週間だった場合はそろそろ離乳期に入る。まずは誕生日を特定しなくてはいけない。・・どうやって??すべてはネット頼みだ。YouTubeで「生後1週間 子犬」と「生後2週間 子犬」で検索し、動画を見比べてみた。
 明らかにウチの子は生後1週間の「出て来たばっかり感」ではなかった。プラス1週間分の図々しさが備わっている気がした。よし、ウチの子は生後2週間、7月14日生まれに決めた。来週からは離乳期に入る。さて、次はこの子の名前だ。
 思い入れの強すぎる名前は後で人に説明する時に気恥ずかしい思いをする。今住んでいる奄美大島の島ことばで何か良い言葉はないか?しかしそもそも島の方言を良く知らない。では人の名前シリーズはどうだろう?タカシ、ヒロシ。今風じゃないな。ネットで前年度(2011年)の男の子の名前ランキングを検索した。大翔(ひろと)、蓮(れん)、悠真(ゆうま)、颯太(そうた)、蒼空(そら)
 昭和40年代生まれのオジサンの感性にはどうにも馴染まない。空に飛んで行きそうなフワフワな名前ばかりだ。男ならもっと大地に根を張って泥まみれになって闘って欲しい。幼い頃、家にいた犬の名前が「メンメ」と「タロー」。妻の実家には「ノブロー」と「ジロー」がいた。いや待て、このままだと単なるリストアップの繰り返しになる可能性がある。命名へのアプローチが間違っている気がして来た。
 悩む私の横を、妻が洗濯物を抱えて歩いている。そこへ子犬用のベッドから小さな生命体が転がるように出て来てオシッコを始めた。「いやだ、ちょっと、そこどいてよ!」妻が叫んだ。子犬の名前が決った。
 命名「ちょっと。」
 句読点のマルが付く。これが正式表記だ。

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