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17 田舎者への道

田舎暮らしをしている。離島の小都市の辺境の集落に住んでいるのだから、田舎暮らしと言って良いのだろう。Wikipediaを見ると、「『田舎』という概念は、都市というものが出来てはじめて(対比的に)登場した」とある。続けて、「一般に、都会ではない場所、人口や住宅の少ない地域が田舎」であると。つまり「都市」とは何かがわからなければ、「田舎」もわからない。ではWikipediaで「都市」を調べてみると、「1960年の国勢調査から 『4,000人/平方キロメートルの人口密度で5,000人以上の人口集積を持つ地域』が『人口集中地区(DID)』として統計上、"都市" として扱われることになった」とある。さて奄美市は都市なのか都市では無いのか。
 
名瀬港を取り囲む中心市街地に上方、下方と呼ばれる地域を合わせた約5.7平方キロメートルが、一般的な島民が都市であると感じている区域だ。そこで暮らす人口は、約32,600人。1平方キロメートルあたり約5,700人だから、奄美市の中心部は十分に都市であると言う事が出来る。なので、田舎暮らしをしようと奄美大島へ越して来て、奄美市の中心部に住んだ場合は田舎暮らしをした事にはならない。田舎暮らしを志して奄美大島へ来る際には、ぜひ「辺境」を目指して頂きたい。
 
さて、私の暮らす辺境ではこの時期、集落の言葉で「ヨゴ」と呼ばれる小虫に悩まされる。他の集落では「スベ」などと呼ばれる場合もある。「ヌカカ(糠蚊)」である。こいつ、人の血を吸う。体長が1mm〜2mmなので、襟元や袖口などから容赦なく服の中に入ってくる。耳の中にも鼻の穴、髪の中にも入り込む。刺されると大変である。ボコボコと直径1cmほどに腫れ、何しろ痒い。ヒリヒリ感も感じる。水脹れになる人もいる。腫れが引くとカサブタになり、完治までに2週間〜1ヶ月くらいかかる。どうやらこのヌカカ、海岸に密生しているアダンの林内の砂地で発生しているらしい。3月末~5月初旬が発生のピークである。
 
この辺境の集落に、昨年1年間で11名の転入者があった。人口390人ほどの集落だから、11名の転入は事件と言っても良い。さてこの11人、ヌカカに刺されながら今何を思っているのだろうか。月末の町内会総会で11名が紹介されるそうだ。きっと無関心に放って置かれたい人もいるのだろうが、そうは行かないのが田舎なのだ。総会の後には、飲み会と言う洗礼もある。次々に訪れる艱難を乗り越えて、都会人は立派な田舎者になって行くのである。

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