17 コロナ時代と知的でクールなのび太への道
河野太郎行革相の言動が注目を集めている。ハンコを無くす。その先にはFAXも無くしたいと。効率的に仕事を進めたいと思う人なら誰もが一度は思う事を、国家レベルで推し進めて頂けるのなら大助かりだ。
河野大臣の経歴を見ると、ジョージタウン大学国際学部比較政治学専攻、前職が富士ゼロックス社員とある。ジョージタウン大学は政治・国際関係の世界的権威であり、卒業生にはクリントン米国元大統領などがおり、5名のノーベル賞受賞者を輩出している。言いたい事は大学の権威ではなく、河野大臣がここで実践的なクリティカルシンキングを身に付けて帰国した事は間違いないだろう、と言う事だ。
これまで記して来たGTDやWBS、PERT図は、物事を論理的に推し進めるためのツールであった。一方、クリティカルシンキングは物事を論理的に進める以前の、そもそもそれは本当に必要なのか?とか、そもそも何をすべきなのかと言った、前提の正否から評価して行く在り方だ。トヨタのA3報告書なども、クリティカルシンキングを組織として実現するための実践的なツールであると私は理解している。
クリティカルシンキングのメリットは物事を本質的に捉えられる事であるが、生活や仕事の上では、強引な上司や饒舌な営業マンに騙されなくなる。つまりジャイアンをギャフンと言わせる事が出来るのだ。「お前はオレの言うことを聞いてりゃいいんだよ」と言う態度に対し、「でも、そもそもそれって必要ないですよね?」と明確な根拠と共に言い返す事が出来れば、本当に重要な問題に集中出来、多くの社会的損失を防ぐことが可能になる。
「ハンコは必要」「FAXは必要」と言ったこれまでの慣習や方法を盲目的に踏襲する事は、「オレの言うことを聞いてりゃいいんだよ」と言うジャイアンや上司に無条件で屈服する事と同じである。悔しいじゃないか。
クリティカルシンキングのポイントは、1. 「いつまでに何がどうなれば良いか」を常に意識する事、2. 自分や他人の考え方のクセを自覚する事、3. 「本当にそうなの?」「どうしてそうなの?」と問い続ける事の3点だ。
「いつまでに何がどうなれば良いか」を忘れると、何かを決めるための会議が、開催する事が目的の会議になってしまう。自分や他人の考え方のクセがわかっていなければ、戦時中の大本営のような大間違いに繋がってしまう。「本当にそうなの?」と問い続けることは、「最初に掛けるべきボタンはこのボタンホールに入れて良いのだろうか?」と問う事である。間違った前提の上で事が済んでしまってから過ちに気付かないために。
「コロナとの共存」が言われて久しいが、その内実は「本当にこれ必要?」と根底から問い直すクリティカルな在り方ではないだろうか。
*今週の参考図書
・『実践型クリティカルシンキング』佐々木 裕子 2014年/ディスカヴァー・トゥエンティワン
・『できる人はなぜ、「A3」で考えるのか?』石井 住枝 2015年/SBクリエイティブ
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