12 家族
家族の話は少し複雑だ。私の住まいは妻の実家、サザエさんで言えば私はマスオさんの立場だ。つまりはマスオさんのマツオさんだ。そして義母と私はこの頃、今ひとつ気持ちが折り合う事が出来ずにいた。婿姑問題ってヤツだ。そんな時に私が義母に相談をする事もなく犬を連れて来た。妻から義母へ話は伝わってはいたものの、当然義母の心証はよろしくない。私も私なのだ。義母は事ある毎に「こんな犬どこかへやっちゃおうか」とか、わざと「ちょっと」とは呼ばずに「コロ!」などと呼んだりした。私への不満を遠回しにそんな形で表現していたのだ。そんな義母も、足元に小さいのがじゃれついて来れば悪い気はしないのだろう。ヨシヨシなどと言いながら構ってあげている。
しかし、二人の折り合いの良し悪しに関わらず、外出する時にはちょっとの食事やトイレシートの始末などは義母にお願いしなければならない。私は「お願いします」と頭を下げざるを得ない。ここへ来てちょっとの立ち位置は単なる飼い犬では無くなった。「潤滑油」「蝶番」「鎹<かすがい>」みたいなものだ。こうやって、ちょっとは段々私たちの家族の一員として、ひとつの役割を担う事になったのだった。