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#オリエントの魅力〜良いモノとは何なのか

価値には単体としての価値と関係性の価値がある。そのモノ自体の性能や性質に注目すれば単体としての価値がわかる。モノと自分との関係性に注目すれば、関係性の価値がわかる。私たちの生活に直結するのは、モノと自分との関係性の価値である。たとえAくんの親戚に有名人がいようが、同級生が超優良企業に勤めていようが、Aくんの生活に密接な影響を与える関係性がなければ、そこにAくんにとっての価値は無い。高級車はきっと単体としての価値が高いのだろうが、それに乗る「私」との関係性が価値的であるかどうかは別の話だ。ランニングコストが高すぎて生活を圧迫するのでは良好な関係とは言えず、価値的ではない。
 
さて、先週に引き続き腕時計の話だ。中でも私の愛用するオリエントの話である。先週、機械式の腕時計の方がクォーツ式のものよりも高価であると言う話をした。なぜか。まず部品数が違う。「機械式腕時計が100個以上の部品からなるのに対して、クオーツ腕時計(アナログ)の部品点数は50個から80個程度であり、後に開発されたデジタル表示式のクオーツ腕時計ではそれが40個程度にまで減少した」
出典【公益社団法人 発明協会『戦後日本のイノベーション100選』「高度経済成長期:クオーツ腕時計」】
https://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00035&age=high-growth
 
部品数が増えればそれを組み立てる工数も増える。工数が増えれば人件費も増える。さらに腕時計を語る際には「石数」という言葉も登場する。腕時計の内部に宝石が使われている事を知っている人は少ないだろう。時計には歯車やクルクル回るパーツがたくさんあり、クルクルの支点には必ず軸受と呼ばれる部分がある。クルクルすると当然摩擦が発生してパーツが摩耗するので、金属で軸受を作ったのでは耐久性が得られない。かつてはここに硬度の高い天然のルビーなどが使われていたが、現在では同硬度の人工ルビーや人工サファイアが使われている。クォーツ式なら多くても4つか5つの石が使われていて、機械式では21石前後が平均的だ。ちなみに私のデイリーウォッチであるオリエントRN-AC0H03Bには22個の石が使われている。人工ルビーでも0.2g(1カラット)で数百円から数千円するので、当然ここでも価格差が生まれて来る。
 
そう、オリエントの話をしようとしていたのだった。オリエントはこだわりのある機械式腕時計づくりを続けている。近年セイコーエプソンの傘下となったが、昔ながらのスタンスは変えず、加えてエプソンの技術を取り入れた製品づくりをしている。セイコーやシチズン、カシオなどの影に隠れてしまっている感はあるが、製品のコストパフォーマンスの高さで人気を得ている。
 
オリエントのアイコン的製品であるダイバーズウォッチ、RN-AC0Q01B、愛称「マコ」は税込¥48,400ほどだが、同程度の性能と外装を持つ海外製品を見ると、有名高級ブランドO社の40〜50万円クラスのラインが目に留まる。私の愛用するパイロットウォッチRN-AC0H03Bも¥35,000ほどのものだが、性能的に米国の有名ミリタリーウォッチブランドの10万〜20万クラスの製品に引けを取らない。円安のせいもあるだろうが、性能に対する価格感には相当な開きがある。次にデイリーウォッチを海外製品にアップグレードしようとすると、50〜60万以上のものでなければ到底アップグレード感を持つ事が出来ない。これはネットで各製品を見渡した実感だ。
 
オリエントの場合、その単体としての価値に関係性の価値が加わる。安価なので心置きなくデイリーユースが出来る。愛着が湧く。安価ゆえの可愛らしささえ感じる。こと腕時計選びに関しては、円安にともなう海外製品の価格バイアスをいかに乗り越えられるかが、本当に良いものを見極めるポイントになるのではないだろうか。

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