16 人並みの犬に育てたい
生後2週間で親を亡くしてしまったちょっとにとって、社会化は大きな問題であった。適切な時期に親や兄弟との関係性の中で社会化が行われないと、噛みグセや吠えグセのある犬になる。
そこで私や妻が親犬や兄弟の代わりにちょっとと遊び、ある時は強く叱ってみせたりしていたのだが、生後2ヶ月を過ぎたこの頃には集落の子どもたちの間にも子犬の存在が知れ渡り、外へ出れば自然に子ども達が寄って来て全力で遊んでくれるようになった。
また近所の漁港公園は格好の散歩コースなので、遠く市内から犬を車に乗せて散歩をさせに来る人も多く、ちょっとにとっても散歩友達が増えた。家族以外の人や生き物と接する事は社会化にとって悪い事ではない。
妻のちょっととの接し方は独特で、ちょっとを膝の上に載せて一緒にテレビを見る。「きな子〜見習い警察犬の物語〜」などは2人で真剣に見ていた。「いいか、ちょっちゃんもこんな風になるんやで」と妻が語りかけているが、私はそうは思わない。立派な犬にならなくても良い。人並みに当たり前の犬になって欲しいと思っていた。しかし2019年の今、ちょっとは7才になったが、その道のりは決して当たり前なものではなく、事件や病気との闘いであった。けれど、それはまだ先のお話。