6 南島にて
奄美大島では今、桜が咲いている。満開である。立春に合わせるように桜が咲いた。
この時期、奄美大島は虹の季節でもある。雨がちな日が続き、空はいつでも黒雲に覆われている。しかし時折、思いついたように雲間から陽が差し込む。強烈な南国の陽だ。雲の下では雨が降っている。車ですれ違う知人が私の背後を指差して通り過ぎる。振り向くと村の端から端までを繋ぐ天弓である。このために雨はあったのかと思うほどに鮮やかな天空のショータイムだ。
夜、黒糖焼酎を飲みながら、近隣の屋根や畑のタンカンの木の葉を打つ雨音を聴く。南の島での暮らしとは、こうして、陽光と大気の協奏に目を凝らし雨音に耳を澄ませるものなのだろう。