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9 アイドル誕生

ちょっとが暮らしているのは奄美大島だ。だから家から3分も歩けば海だ。その日ちょっとは初めて海に入った。と言っても波打ち際をちょっと歩いただけだけれども。けれどもちょっとにとっては大冒険だった様で、帰宅後は大量のオシッコをした後、疲れ切って寝てしまった。

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この日からちょっとは散歩の度に海辺へ行くようになった。砂浜では大人から子供、ヤンチャな中学生のニイちゃんも遊んでいる。そこにちょっとが現れると、普段学校ではヤンチャしていそうな男子中学生でも途端に目尻が下がる。

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「マジ可愛くね?」ちょっとを撫でて「ちょー可愛い」「ちょー気持ちいい!」「マジふわふわ!ヤベくね?」と、言葉遣いはアレだけれども感情が動いている事は良くわかる。中学で「子犬教育」を始めたら悪ガキはいなくなると思われる。

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「何?何?ちょーヤバいんですけど」と言いながら近づいて来るのは女子中学生だ。ちょっとが1歩1歩近づいていくと「歩いて来るんですけど?!ヤバ、ヤバ、可愛い!」と言って動けなくなる女の子も。やはりこちらも中学での「子犬教育」の有効性を感じさせる結果となった。

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女子中学生が来れば女子高校生も来る。

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学生だけではなく、義父のデイケアの送迎に来る看護師さんもちょっとに首ったけだ。「おはようございまーす」と玄関を開けると義父そっちのけで「キャー、ちょっとちゃん!」としばし戯れるのが日課となってしまった。ちょっとが可愛すぎるのがすべての原因だ。看護師さんが、ちょっとを見つめながら胸の前でギュッと手を組み数秒間立ち尽くす、という事件もあった。「いつまで見ていても飽きない」と言うのが当人の言い分だ。迎えに来られたはずの義父はそっちのけだ。いずれにせよ、ちょっとが可愛すぎる故の事であるので致し方のない事ではある。

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