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2 君がウチの子だ

2日後、フタの無い小さめのダンボール箱をクルマにこっそり載せ、「もう一度犬を見て来る」と妻に声を掛けて私は一人で家を出た。

 「まだ貰って来ちゃダメよ」と妻の声。これ以上待つつもりなんてない。今日、私は私の犬を連れて帰る。連れて来てしまえば妻の気持ちだって変わるに違い無い。
 畑の中の作業小屋に、2日前と同じように2匹の子犬が重なって眠っていた。アプリコットの兄、パーティーカラーの弟。どちらかを選ばなければいけない。
 「生まれた時間が1時間違うだけで大きさが全然違うよ」とご主人が言った。いかにも弟犬は兄に比べると弱々しく見えた。自分が白黒パーティカラーの犬と一緒に暮らす日々が頭に思い浮かばなかった。私が一緒に暮らすのはアプリコットの兄犬に違いなかった。気持ちが決まった。「こっちを頂いても良いですか?」私は兄犬を指して言った。君がウチの子だ、と声を掛けながら私は兄犬をダンボールに入れた。礼として黒糖焼酎の一升瓶をご主人に渡して車を出した。
 「えー、貰って来たの?」と言いつつ妻はまんざらでもない感じだ。表情に微笑が見え隠れしている。その上「白黒の方が良かったんじゃない?」なんて言っている。今さら取り替えなんて利かない。ただひとつの命なんだから。

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