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22 日常の構築

2012年の8月から、約3,500日間ほぼ毎日、愛犬と朝晩の散歩をしている。海岸を歩くことが多い。この10年でみるみる砂浜が狭くなって来ているのを見ている。40年ほど前に港が出来たため、砂を運び来る海流が遮られたことと、風や波によって砂が陸側に押し上げられたことが原因だ。かつてこの集落は白砂青松の名勝として知られた。しかし今は見る影も無い。
 
港の造成を悪と決めつける自然偏向の声もあるが、当時の人々にとって港は希望の源であったはずだ。それもまた集落の物語なのである。それはそれとして、目の前で砂浜が荒れて行くのを黙って見ているのは忍びない。海流はどうにも出来ないが、陸に押し上げられた砂を押し戻すことなら出来る。現に島の反対側の集落では年に1回、砂押し作業をおこなっていると聞いた。
 
そこで町内会に話を持ち込み、役員会での了承を得た。市の助成事業に応募することについても町内会総会で了承を得ることが出来た。私が助成事業の申請書を作成し、町内会長とともに市役所でプレゼンテーションをおこなった。採択された。300万円の予算が付いた。有難い話である。早ければ来月初旬には砂浜に重機を入れられる予定だ。プレゼン内容はほぼ満点で採択されたのだと後から聞いた。
 
事業のついでに、いつもオバアたちがしゃがんでバスを待っているバス停にベンチも設置する。ベンチは集落の大工の棟梁に台風でも飛ばないものを作ってもらう。さらに漁港の公園駐車場に集落の総合案内看板も設置することにした。集落への来訪者から史跡への行き方などを尋ねられることが多く、かねてより住民から要望があったものだ。私自身は何一つ儲かる話ではないが、自分の暮らす環境を自分で変えて行ける事は何にも勝る喜びである。

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