#トビンニャの話
奄美の酒席にはトビンニャが付きものだ。和名をマガキガイと言う。5〜6cmの巻貝だ。奄美大島北部ではトビンニャと呼ばれ、南部ではティラダと呼ばれる。「酒席にはトビンニャが付きものだ」と言ったが、正式には「付きものだった」。
北海道に帰省した際にはどこの酒席にもシマエビが付きものだったが、こちらもまた過去形である。ネットのNHKニュースでは「ことし7月、資源量の減少で休漁していたホッカイシマエビ漁が7年ぶりに再開され」たとのニュースがあった。「6年間休漁していたにもかかわらず、資源量は完全には戻っておらず、地元は将来にわたって持続可能な漁のあり方を模索」していると。
【NHK北海道WEB】
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/lreport/articles/300/104/53/
先日、トビンニャを研究する鹿児島大学の先生のお話を伺う機会があった。先生によるとトビンニャの産卵時期と収穫時期が大きく重なっており、未成熟のものまで収穫した事が主な原因ではないかとの仮定で、ここ数日のうちに漁業関係者との会合を持つとの事であった。今後は成熟を示す特徴の現れていない貝は、海へ返すというルールが出来そうだ。これまでに禁漁域を設けて効果を上げた地域もあり、複合的な要因を分析する事により、さらなる効果を見込める可能性もある。
私は漁業については素人だが、しかし酒飲みではある。帰省の際にシマエビが食べられない寂しさは十分に感じて来たし、奄美の酒席にトビンニャが無い虚しさも味わっている最中である。「トビンニャが無いならほかのものを食べればいいじゃない」などというマリー・何とかネットみたいな言葉は聞きたくない。食は大切な文化なのだ。