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36 散歩中の頂き物

ちょっとの散歩で集落を歩くと、様々な頂き物をする。
元来、島の人はもてなし好きで、勤め人だった頃、島内を営業で回った際には、営業先で持たされた缶コーヒーや栄養ドリンク、ヤクルトや旬の果物で車の後部座席がいっぱいになった。
しかし今、私はただの散歩人であって、もてなされる筋のものではない。それでも会う人ごとに持って行け持って行けと色々なものを手渡される。主に野菜が多いのだが港を散歩すると釣れたての魚も頂く。人の厚意に悪い顔は出来ない。有難く頂く。
しかし如何せん散歩中の事、重いものは困ってしまう。島には島キュウリと言う野菜がある。小振りの大根ほどもあるキュウリだ。重い。それを2本持たされた。手提げ袋でもあれば良いのだが、こう言ったものは大抵の場合、ハダカで持たされる。ちょっとのお散歩バッグには散歩中に飲ませる水のペットボトルと受け皿、海岸で遊ぶためのオモチャやオヤツなどがズッシリ入っている。島キュウリを2本入れる余裕は無い。仕方がないので散歩ヒモを持った手に重い島キュウリを乗せて歩いた。時に罰ゲームのようなスタイルになる。さらに重かったのはヘチマ。島ではヘチマを味噌汁の具にする。
こうして8年間、朝晩の散歩に歩くことで、ヨソモノだった飼い主は次第に集落の人間として認められて行ったのだった。

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