41 奄美学 その地平と彼方 -山下欣一先生を偲ぶ会 - のこと
この週末、年初から約9ヶ月を掛けて準備を進めて来たフォーラムを終えた。内容は、約50年前に奄美の文化を総合的に系統建てる「奄美学」を提唱した民俗学者・山下欣一先生の一周忌を偲ぶ会としての市民フォーラムだ。山下は、民俗学とは決して過去を懐かしみ郷愁にひたるものではなく、未来を描くための設計図であるとの思想を持っていた。記念講演には関西学院大学から、山下とも交流があり現代民俗学の最先端を走る島村恭則教授を招いた。
民俗学という、興味を向けるであろう対象者が非常に限られる分野であるため、当初は県立図書館の小さな研修室を借りて行う予定であった。しかし、来賓として奄美市長に挨拶をお願いしようと市役所と訪れ、市長と小一時間の打ち合わせを持ったところ市長から、郷土の未来を描く内容であればぜひ、島の高校生や中学生にも聞かせたい。であればもっとキャパシティの大きい市民交流センターを使ってはどうかとの提案があった。駐車場が足りなくなれば市役所の駐車場を使っても構わない、との事だった。市長からの挨拶が決定したところで奄美市および奄美市教育委員会の後援を貰い、さらに主要新聞社3紙からの後援も得た。
NPOの理事長と二人三脚で内容を詰めて4ヶ月目に実行委員会を立ち上げた。メンバーは奄美博物館の館長、大島の南に位置する瀬戸内町の郷土館の学芸員、NPOのメンバーでもある市議会議員、40年前に山下欣一が立ち上げた郷土研究会の事務局長等である。それまでミーティングはNPOの理事長が経営するレストランで行なっていたが、それからの実行委員会は博物館の会議室で行うことになった。6月から9月までの間に実行委員会を重ね、内容を固めた。9月の末からポスターやチラシの配布に加え、島の主要メディアである新聞3紙、FMラジオを使い、全方位から告知のシャワーを行った。実行委員でもある市議は、教育委員会や市内の高校3校を訪れ生徒の参加を促した。ポスターを完成させてからは、私も個人のSNSで準備の進捗を見せる事で関心を広めるよう努めた。開催の数日前にはNPOの理事長が、前日には記念講演をおこなう島村教授自身がコミュニティFMに出演してフォーラムへの機運を高めた。当日の朝には地元の随一の新聞のコラムでフォーラムが取り上げられて、告知の最終打となった。
会場の市民交流センターのキャパシティは350だったが、新型コロナ感染症対策のため、定員はキャパシティの半分の175名となった。156名の来場者があった。成功だ。迫力のある島村教授の記念講演は、まるで大学の講義そのもので来場者からは「学生に戻った気分になった」との声が聞かれた。パネルディスカッション、フロアーセッションも多くの発言者を得て成功裡に終わった。終了後のアンケートには喜びの声が溢れていた。
「島人でよかった」「後期高齢者のこの歳になって初めて知ったこともあり、感慨を新たにした」「世界自然遺産登録を機に、これからの島人はどうあれば良いのかを考えていたが、その答えが見つかった」「多くの気づきを頂いた。感謝!」「シマほど素晴らしい所は無いことに気づいた」「すばらしい企画をありがとう」
翌朝の地元紙では1面トップの扱いだった。裏方として少しだけ報われた気持ちになった。
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