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45 空前絶後の手帳学

さて、ぼちぼち12月である。文房具屋の店頭には新しい手帳も出揃っている時期だ。だが言っておく。「買わされるな」と。
この一連の文章の中で何度も記して来た通り、私は文具オタクである。もう少し詳細に言えば、手帳オタクでありノートオタクであり、ペンオタクであり定規オタクだったりステープラーつまりホッチキスオタクだったりもする。ちなみにMAXのホッチキス、vaimo11の握り心地と重量感は最高であると言っておこう。さらに・・と続けたいがキリが無いのでやめておく。
 
手帳の話だった。目新しいフォーマットやちょっと高級そうに見えるおしゃれなカバー、そしてこれさえあれば人生なんでも上手く行くぜ、みたいな謳い文句の手帳を買わされてはいけない。何となく毎年これを使っているからと買っているその手帳も、もしかするとダメかも知れない。これまでに多くの手帳が販売されて来たが、それらを買って上手に使い切ったと言える人が、一体どれだけいるだろうか。「半年もたたないうちにメモ部分が足りなくなった」「1年終わって振り返ってみたら、なんかスカスカ。全然使えて無かった」「きっちり決められたフォーマットが窮屈だった」「1日1ページなんて所詮ムリだった」そんな人のなんと多い事か。それは手帳やノートに対する認識の間違いによって導かれた結末である。
 
まず一番大事なことを言っておこう。「生活や仕事、人生をスムーズに回すために必要な作業は『トラフィック処理』である」。これが、今回の一文で提示する視座だ。そして、手帳とかノートはトラフィックを見える化するための手段である。ここで言うトラフィックとは「生活や仕事上の情報や状況の変化や流れ」といった意味である。
 
手帳に記すべき情報は、大きく分けて3種類ある。「プラン」「スケジュール」「ログ」だ。多くの人はスケジュール帳として手帳を使う。次にメモや記録、つまりログだ。生活や仕事上の目標や数年後の希望などを書く人もあろう。これがプランだ。
 
私はSNSで文房具好きが集うコミュニティに所属しているが、そこでは時折スケジュール管理が上手くいかないと言った悩みを打ち明ける人がいる。きっちり日時を決めてスケジュール欄に書き込むが、雑事や突発的な変更で結局スケジュール通りにならず、キレイに書き込んだスケジュール帳も役に立たないのだそうだ。しかし実は、それは当たり前の事なのだ。例えば11月23日に立てたスケジュールは11月23日の状況に応じて立てたスケジュールであり、モノゴトが1日分変容した11月24日の世界にはそぐわない。1ヵ月前に立てた予定が今日、通用する事は、実は不思議な事なのである。人も、世の中も、変わる。それに合わせて自分のプランも変えて行かなくてはいけない。そこで必要となるのが「トラフィック処理」だ。多くの人のつまづきは、トラフィック処理が上手に出来ないか、それを上手に表現・記録出来ない事による。
 
まず、長期のプランを立てる。「5年後にはこうしていたいな」と言った感じの展望だ。それに基づいて「いつ、何をするのか」を具体化してスケジュールを立てる。予定が済んだらログを録る。「いつ何をどのくらい、なぜ、どのようにしたのか、その結果どうなったのか、何がどのくらい変化したのか」つまり日記だ。さて、この段階で自分を取り巻く状況はスケジュールを立てた瞬間とは違って来ている。この変化を、プラン、スケジュールにフィードバックつまり反映させる。この作業がトラフィック処理である。今日出来なかったことは明日の予定に組み込む。今日知り得た情報を長期プランに適用する。それによってスケジュールも変わる。手帳やノートに求められる要件は、これら変化や流れを表現し得る媒体なのかどうかと言う事である。
 
「プラン」「スケジュール」「ログ」を書き、毎日時間を作ってトラフィック処理をする。トラフィック処理とは言い換えれば「振り返り」だ。20年以上も様々な手帳術を試して来たが、上記のすべてを上手く回す事の出来る方法論は、バレットジャーナルである。バレットジャーナルについては以前にも書いた。ネット上にもたくさん情報があるのでそちらを参照されたい。その上で、今回記した内容をもっとも上手に表現できる手帳とは、フォーマットの固定された市販の手帳ではなく、「まっさらなノート」だと私は思っている。

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