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5 二月 - 如月 -

さて、2月だ。和風月名で如月。衣更着(きさらぎ)とも言い、衣を重ね着する月であるという。いかにも寒そうだ。しかし、七十二候を見ると一転、春を思わせる言葉が躍る。「東風解凍(はるかぜ こおりをとく)」「黄鶯睍睆(うぐいす なく)」「魚上氷(うお こおりをいずる)」「土脉潤起(つちのしょう うるおいおこる)」「霞始靆(かすみ はじめてたなびく)」

 20〜30代の頃は自分のやりたい事ばかりを考えて、周りの風景や季節感、暦など気にも留めなかったが、年を経るごとに周囲の状況に気持ちを向けられるようになってきた。「はるかぜ こおりをとく」などと聞くと、雪解けの頃、残雪から覗く土の上に黄緑色の小さなふきのとうが顔を出している景色が目に浮かぶ。場所は父に連れられてアイヌネギを採りに行った知来の山だ。 

「つちのしょう うるおいおこる」と聞けばこれも雪解けの時期、陽だまりの空気の中に匂い立つ土の香気を感じる。子どもの頃、ようやく自転車を乗り回せるくらいに自宅の周囲の雪が融けて、数ヶ月ぶりの土の匂いの中を遊びまわった。まだ地面は泥でビチャビチャなのに。

今年は父が亡くなって10年目であり、ちょうど土の匂いが香り立つ頃、懐かしい佐呂間へ帰郷の予定である。

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