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5 ジェイルブレイク
ちょっとは寝てばっかりいる。あちこちで寝て、あちこちでオシッコをする。そう、それが問題だ。
ちょっとは生後2週間たらずではあるがホームセンターで買って来たカゴ型のベッドを易々と脱出してしまう。そしてヨタヨタと歩を進めながらオシッコをする。飼い主がそれを踏み、ペタペタと数歩歩いてから気がつく。掃除をする。必要なものは、ケージだ。
ネットでケージを探してみると、安いものだと3千円台から高いのだと1万円以上もする。それらを眺めながら、この程度のものなら100円ショップの材料で作ることが出来ると思った。
仕事用のサイドテーブルの足にダイソーのワイヤーネットを張り巡らして結束バンドで固定した。中にはガスレンジ用のアルミ下敷きをトレー状に折って敷いた。これでオシッコ対策もバッチリだ。アルミなので夏の今、ひんやり感を確保できる。締めて800円。生後20日足らずのちょっとにはちょうど良いサイズのケージの完成だ。さっそく私はゲージの中にちょっとを入れてみた。
まだ視力も定かではないちょっとは、ケージの中をあちこちクンクンと嗅いだあとワイヤーネットの1段目に前足を懸けた。次に3段目あたりにもう一方の前足を懸け、今度は後ろ足を1段目に懸けた。こうやってワイヤーネットの一番上まで登ってから、小さな体はボテッと反対側に落ちた。私の手作りゲージは苦もなく破られたのだ。
普通の歩行さえ覚束ず目だってちゃんと見えていないはずのヨタヨタ子犬が、ネットの目に足を懸けて、うんしょ、うんしょ、と上って5回に3回くらいは脱出に成功する。今までのヨタヨタ歩きは、この時のための小芝居だったのか?