参議院京都選挙区でれ共共闘が必要なわけ

※ 後記:以下の文章は、お読みになったらわかるとおり、政党にとってということに訴えた政党に向けた文章(あるいはこういうロジックで政党に訴えようと市民に向けて呼びかけた文章)であって、立候補を表明した人、あるいはこれから立候補を表明する可能性のある人に対して、なんら批判めいたことを言いたい文章ではありません。当然ですが、立候補は自由です。個人に対する圧力などは厳につつしんでいただきますようお願いいたします。(1/14)

新三極時代に向かう中でのれ共対立

『地平』誌の拙稿の展望とその先駆としての参議院京都選挙区選挙

先日11月7日に発売された月刊『地平』で、私の論評「二度目はもっと悲劇として?——新三極を闘い抜け」が掲載されました。

そこで私はざっとこんなことを書きました。

石破自民党が続くにせよ、野田立民政権に交代するにせよ、両者の大連立になるにせよ、両者は連携して緊縮デフレ方向の政策を進める。高市早苗さんが役職につかなかったのは、この結果起こる悲惨の責任を負わず、むしろそれを追及する側に立つためだろう。よってこれからは、石破さんや野田さんのような勢力と、新党か将来の自民党を率いる高市さんの反緊縮右派と、反緊縮左派の、新三極の闘いになる。
それは、フランスの「マクロンvsルペンvsメランション」とか、ドイツの「既成政党vsAfDvsワーゲンクネヒト」など先進国いたるところに見られる図式が日本でも出現するということである。
その際には、メランションら左派ポピュリストと共産党が連携して総選挙で躍進したフランスのケースは参考に値するだろう。——ということです。

このように展望すると、今度の参議院選挙の京都選挙区は、この図式の先駆になるかもしれないと思われます。
キーはやはり、このフランスの成功例に学べるかどうかだと思います。

全国的れ共対立の動きのもとで京都選挙区出馬は?

さてそうしたところ、昨年末、長いこと反緊縮運動をいっしょにやってきた同志と言うべき、最も信頼し尊敬する人から、今度の参議院選挙で、れいわ新選組(以下「れい新」)から立候補したいとの相談がありました。
参議院のれい新候補と言えば、比例代表では、特定枠でも使わない限り、長谷川羽衣子さん(京都在住)に議員になってもらわないと困りますので、順当に考えればこれは、京都府選挙区から出たいとの表明の意味になります。
私はそのときこれについて、反対の意見を伝えました。

この動きはその後公になりましたが、今一時止まっているようなので、このあいだに私見を述べておきたいと思います。

今、全国的には、共産党さんとれい新の関係がかなり険悪になっているように感じます。
上記のこれからの新三極を民衆の側から闘うにあたって重要なことは、共産党さんの支持者、活動家の占めるゾーンを、いかに緊縮リベラルの側にいかせないか、れい新の支持者、活動家の占めるゾーンを、いかに極右の側にいかせないかということです。
特に、京都は共産党さんの支持者、活動家の占めるゾーンが、他の地域からは想像がつかないぐらい大きいので、このことは大変重要なことになります。
その点で、この京都の平場でこれまで、共産党さんとれい新の関係者の間で長い間共闘の努力が重ねられてきたことはとても貴重なことであって、ここに中央で見られる亀裂が持ち込まれることは、なんとしても避けたいところになります。
このようなことを以下で詳しく説明します。

感情的こじれを産むのは双方にとって得ではない

共産党支持ゾーンを立民に追いやってはならない

ひとつ考えていただきたいのは、共産党さんもれい新も、五年後、十年後には、今の形態で存続しているかわからないということです。

れい新の側のみなさんには、もし共産党さんが、例えば今の社民党さんのように、多くの有権者にとって票を託そうと思う規模の勢力ではなくなったとしたらどうなるかを想像していただきたいです。
多くの支持者や活動家は、立民さん(またはその後継勢力)か、れい新(またはその後継勢力)のどちらかに流れるだろうと思います。
そう考えると、今のうちから立民さんにいかないように政策的批判をしておくことは重要なことですが、れい新側にとっては、今の共産党さんの支持者や活動家のみなさんに感情的恨みを抱かれることは、得策ではないとわかると思います。

れい新支持ゾーンを極右に追いやってはならない

共産党さんの側のみなさんにも、もしれい新が空中分解したらということを想像していただきたいと思います。
れい新はこのかん、既存政党がリーチできなかった層を開拓してきました。すなわち、新自由主義政策で痛めつけられた大衆を政治的に活性化させることに、ある程度成功してきたわけです。これらの層は、れい新に票を入れてもくれますが、極右の支持者にもなります。

世界的に見ても、反緊縮左派と極右は支持層が重なっています。
サンダースさんの支持者で、彼が民主党の大統領候補になれなかったら、トランプさんに投票する人はたくさんいたわけです。あるいは、フランスで黄色いベストを着て街頭に出た人たちは、メランションさんにもルペンさんにも入れるわけです(マクロンさんには決して入れない)。あるいは、ドイツのザーラ・ワーゲンクネヒト派は、極右AfDから直接票を奪って勢力を伸ばしているのです。
これは、先進国どこでも見られる普遍的な法則だと言えるでしょう。

もし日本にれい新がなくなったならば、行き場を失った支持者大衆を、共産党さん(またはその後継勢力)がつかむチャンスになります。しかし、共産党さんがつかみそこねた人たちは、こぞって極右に流れ込むことになります。
この「極右」というのは、今の参政党や保守党ぐらいの弱小勢力を思い浮かべてたかをくくっていてはいけません。高市早苗さんが新党を率いているかもしれませんし、彼女の率いる自民党かもしれません。
そこに、行き場を失ったれい新支持者が流れ込んだら、日本の極右は手のつけられない大躍進をするに違いありません。

そう考えたら、共産党さんの側のみなさんにとっても、今のれい新の支持者から感情的恨みを抱かれないようにすることが、いかに重要かがわかると思います。

恨みの感情は軽視できない

年配の、とても能力の高い活動家の人たちが、半世紀前の若い頃の左翼党派どうしの争いを今だに根に持って、現実の運動シーンにとって全く意味のない反共産党意識で動いている例は数多く目にします。感情的恨みというものは、軽視していいものではありません。

京都の土地柄の特殊性

「立憲共産党」などもともとない!

特に、京都の外のみなさんには、京都の土地柄の特殊性をぜひともご理解いただきたいと思います。
この地においては、地域の中でいろいろな課題に取り組んでいるたくさんの人たちは、ある程度年配の人はだいたいは共産党さんの支持者で、そうでない世代の人も、総じてあたりまえのようにゆるく共産党さんにシンパシーがある雰囲気です。

そして、そうした運動のシーンで、立民さんの存在感は全くありません。
むしろ、たとえ積極的な共産党支持者でない人でも、立民さんには敵視され煮湯を飲まされてきた思いがある人が多いです。実際常に、府政でも市政でも、立民さんは自民党さんと並んで与党の一角をなしてきました。要するに、ずっとケンカしてきた相手だったわけです。
だから当地では、緊縮タカ派の野田執行部ができたことに今さら驚くことは何もなく、もともと立民さんの本質はみんなよくよく見切ってきたと言えると思います。

それゆえ、野党共闘と称して中央で共産党さんが立民さんにすりよる姿勢に関しては、この地では、本来はもともと多くの共産党支持者・活動家が違和感を感じていたはずのところです。
その意味で、現状の野党共闘を批判するれい新の側からの訴えかけは、本来ならば共感をもって受け止められてしかるべきところがあります。

ところが逆に、そうした京都の現場にいる共産党関係の人を含めて批判されているかのように受け止められる言い方をしたら、自分たちとは関係ないことで言われなき批判を受けている気持ちになって、反感を買うでしょう。

運動現場ではれ共共闘が積み重ねられてきた

京都の地ではこのかん、消費税反対闘争、京都市長選挙、保育所の問題、中学校給食、新幹線問題等々、さまざまな課題についての市民の取り組みに、共産党関係の人たちと肩を並べてれい新の支持者や活動家が参加して、時間をかけて、一定の信頼関係を深めてきました。
京都のれい新の勢力は、共産党さんの支持者と比べてまだ圧倒的に少なくて、いろいろな運動を進めるためにどれほど役立っているか心もとないところはありますが、少なくとも、党派色のない多くの市民の間にこれらの運動を広げるにあたって、それが共産党一党に牛耳られているわけではないことを示すために、有用だった面はあったと思います。

もしこうした平場の運動シーンの中に、れ共間の党派的亀裂が持ち込まれることになったならば、運動にとって打撃は大きくなると思います。
これまでも、大衆運動に党派対立が持ち込まれて、無党派の大衆が嫌気がさして運動が衰退した例は数知れずありました。

れい新にとっても、独自に自前の運動を作る力量があればいいのですけど、京都の平場ではそんな力量は全くないのですから、すでにある運動のひさしを借りて、活動家が真摯にひとのためにに貢献する姿を見せることで、固い支持者を地道に獲得するしかありません。
それなのに一旦でも反発や不信感を与えて支持を遠のかせてしまったならば、回復は容易ではありません。

京都選挙区れ共共倒れはマイナスが多い

自民・維新で二議席の可能性はもともと高い

さて、今年の7月に改選される参議院京都選挙区の議席は現在、自民党の重鎮の西田昌司さんと、共産党の倉林明子さんが持っている二議席です。
前回の選挙では、山本太郎さんも倉林さんの応援に入りました。結果、西田さんの六割ぐらいの得票で、三位の立民さんの候補にギリギリ競り勝って当選しました。

今回、自民党には裏金問題の逆風は依然あるでしょうし、西田さんは北陸新幹線を京都の地下に通そうとしている件で反発を受けているということはありますが、しかしさすがに地盤は固いです。落選するとみなすことは現実的ではないでしょう。
私たちはこれまで、京都市長選挙で西田さんが采配する陣営と互いに全力をあげて対決し、その強さを痛いほど思い知ってきているところです。
しかも、西田さんは積極財政派ということになっています。安藤裕さんあたりから言わせれば、欺瞞でただのガス抜きだということになるでしょうけど、まあそうは言っても、今にわかに国民民主支持になった層などにとっては、他のネオリベ議員と比べて反発は少ないだろうとは思います。

一方、今度の参議院選挙では、維新さんの候補が出てくると言われています。いくら維新さんの勢いが落ちているといってもここは関西です。しかも、京都に強固な地盤を持ち、国民民主系、立民系に影響力を持つ前原誠司さんが、今、立維国糾合を策して維新に属しています

それゆえ、ただでさえ、西田さんと維新候補で二議席が占められる結果になる可能性がとても高い選挙だと言えると思います。
それは、特定の党派性を持たない、ふわりと進歩的な、れい新にとっても票田である層や、かならずしも共産党さんに忠誠心が強いわけではなく地域でさまざまな課題に取り組んでいる活動的な人たちにとって、最悪な結末ととらえられる可能性が高いと思います。

共産党との力の差はまだ歴然とある

ここにれいわ新選組の候補が出馬するとどうなるでしょうか。
まず、スローガンとしては、倉林さんとれい新候補が二人とも当選することを目指すということは当然掲げられるでしょうから、一応書いておくと、それは、倉林さんとれい新候補がそれぞれ西田さんを上回る得票をするということを意味します。そのような奇跡が起こることは心から歓迎したいと思いますが、極めて難しいことだと思います。

ではれい新候補が二議席目に入って当選することができるでしょうか。
共産党の支持率は落ちているとはいえ、ここは京都です
去年の総選挙の京都府での比例代表の得票は、れい新は共産党さんの五割強でした。私からすれば、ようやくここまで差を縮めたかという数字です。今はもう少し詰めていると思いますが、追いつくまではまだまだだと思います。

おまけに、倉林さんには個人票がかなりあります。元市議で固い地盤をお持ちですし実績も多い人です。

共産党の組織問題は票に影響しない

勘違いしてはならないと思いますが、最近の共産党さんの、いわゆる粛清・パワハラ体質の問題で、支持者がかなり減っただろうなどと「期待」するのは全く筋違いだと思います。
一般有権者の大多数はそんなこと知らないし、興味もないし、たいした問題だと思っていません。それは、会社が上意下達だからその会社の商品を買わないという人はあまりいないのと同じです。
ブラック企業体質の維新さんが支持を受け続けたり、斉藤元彦さんが知事に再選されたりするのを見ると、むしろ有権者の多くはそういう体質を「教育が行き届いている」ぐらいに見て、かえって好ましく思っているような気がします。

去年の衆議院選挙で共産党さんが比例票をかなり減らしたのは、こうした問題のせいのように言うのは勘違いで、私見では、政権交代の機運が高まったと見た薄い支持者の中に、それを期待して立民さんに入れた人がかなりいたせいにすぎないのではないかと思います。長期的な地力の低下はもちろんあると思いますが、それは今度の参議院選挙で大きく影響するような問題ではないと思います。

自維勝利での反発は運動現場にもれいわ新選組にもマイナス

そうすると、れい新候補の出馬によって、倉林さんとれい新候補は共倒れになり、維新さんの候補が当選することになる可能性が高いです。
そうなったら、共産党さんのコアな関係者だけではなくて、前述の、特定の党派性を持たない、ふわりと進歩的な、れい新にとっても票田である層や、かならずしも共産党さんに忠誠心が強いわけではなく地域でさまざまな課題に取り組んでいる活動的な人たちから、れい新は決定的に反発を受けてしまうと思います。
それは今後、れい新の支持者や活動家が、京都の平場でのさまざまな課題に取り組む運動に参加していくことを困難にします。いろいろなところで運動自体、後退や足踏みを余儀なくされるでしょうし、れい新の側は貴重なマーケットを失うと思います。

あるべき新三極図式の前哨戦としてのれ共共闘

逆に、共産党さんの地力が低下し、前原さんが立維国連携の音頭をとり、しかも開催中の万博の報道を関西マスコミが肯定的に流す中では、れい新が候補を立てなかったとしても、倉林さんの当選はかなり危ういと言えると思います。
それゆえ、れい新がほりおこしてきた、共産党さんがリーチできてなかった層の投票を得ることは、倉林さんの当選を確実にするために重要なことだろうと思います。

よってここは、今度の参議院京都選挙区の選挙を、近い将来全国で見られるであろう、先進国共通の新三極図式の前哨戦ととらえ、あるべき連携の実験としての、れ共共闘を探るべきではないかと思います。
もう少し具体的には、次のようなことを提唱したいと思います。

  • 京都選挙区にれい新は立てない。

  • 京都選挙区ではれい新と共産党さんで協定を結んで共闘する。

  • それが困難なら何か地域のれい新活動家も加わる市民団体と倉林さんとの間で協定を結び、地域で実質的に共闘する。

  • 協定には次の政策を含む。

    • 消費税の究極廃止と即時5%減税。インボイス即時廃止。

    • 富裕層・大企業への課税を高める(累進性強化)税制改正法案の提出。

    • それが実現されるまでのあいだ、社会保障・医療・教育・防災政策の大幅充実のために、財政赤字が発生することに躊躇しない。

私はこういうことについてのセンスは皆無で事情に全く疎いので、たぶんへんなことも言っていると思います。何か具体的ないいアイデアがある人は、ぜひ声をあげていただきたいと思います。