外のれいわ新選組関係者にご理解いただきたい京都の特殊事情——前稿の続き

※ 訂正:1月24日に最初に投稿した時、京都に「市民連合」と名乗る団体はないと書きましたが、そこで、「ユナイトきょうと」がそれにあたるのでしょうかと言っていた「ユナイトきょうと」は、正式には、「市民連合ユナイトきょうと」と言うそうです。訂正しおわびいたします。本文をそれに合わせて修正しておきました。(1月25日)

まずお知らせ

1月20日に立花孝志さんがエックスで、長谷川羽衣子さんを裁判で提訴するとの投稿をあげました。

これは、長谷川羽衣子さんが1月19日にエックスにあげた投稿に反応したものです。
そこでは、「兵庫県知事選でのデマや誹謗中傷はSNS・リアルともにひどかった」と一般論をして、その一例として、立花さんが奥谷議員の自宅前に押しかけて脅迫同然の街宣をしたことをあげ、同様に例を並べる形で、竹内元議員が追い詰められて辞職し、自死したことを例示しています。
生粋の京都人の書き方は、「クソ野郎」よりはちょっと手強いですね。立花さんは何に対して提訴しようというのでしょうか。

これを受けて長谷川さんはこんな投稿をしています。本人が拡散希望なので紹介しておきます。

前稿で述べたこと——れいわ新選組が地域の大衆運動にこれからもっと貢献できるように

共産党支持者が地域の大衆運動を担っている

先日1月13日に「参議院京都選挙区でれ共共闘が必要なわけ 」と題した記事(以下「前稿」)をこのノートに投稿しました。
きたるべき参議院選挙の京都選挙区(定数2)では、反緊縮的政策協定のもとに、れいわ新選組は共産党さんの倉林明子参議院議員の応援をすべきであるとするものです。
以降、まわりの何人かの人たちと、れいわ新選組本部への働きかけや、意見の発信をしてきましたが、共通して言われるのが、京都の地域的特殊性を、なかなか理解してもらえていないのではないかということです。

私が前稿で強調したのは、れいわ新選組の今後の地域活動の進展にとって、しんどい足枷になるようなことは、わざわざしなくてもいいではないかということでした。
ご理解いただきたい京都の特殊性の筆頭にあがるのは、地域の中の大衆運動のほとんどどこにいっても、共産党の支持者の人たちが圧倒的な担い手になっていらっしゃるということです。そして、そんな中でれいわ新選組の支持者たちが、なんとか運動に真摯に取り組むことで信頼を得る努力を続けてきたということです。

前稿で警告したのは、たとえ、れいわ新選組が公認候補を立る立てないにかかわらずもともと倉林さんが当選できなかったとしても、勝ち目のない公認をしたあげく倉林さんが負けて維新候補が当選したならば、れいわ新選組は戦犯扱いされて、その後の地域活動に支障をきたすということです。

そんなことになったあとで、れいわ新選組の支持者が集会に出たら、
「ああ、れ〜わさん、わざわざきてくらはったんや。えらい立派なお志でよろしおすなぁ。」
とか言われて死にたくなります。

以下では、そういう党利党略的事情だけでなくて、もっと大きな視点でも、京都の地域的特殊性をよく理解してもらって判断していただきたいということを述べます。

維国立で反・反緊縮の一極を作る動き

前原誠司さんの強さと野望

まずもって、前原誠司さんという人がどんな人かということが、京都の外からは理解しづらいのではないかと思いました。旧民進党を小池百合子さんたちの「希望の党」と合流させようとして失敗した人ですが、覚えていらっしゃいますか。
生粋の消費税増税派で財政危機論者で利上げ派で、民進党が壊れたあとは国民民主さんのところに行って、今は維新さんのところにいます。安保論はかなりタカ派の改憲論者です。政策的にはあらゆる面でれいわ新選組とは正反対に位置する人だと思ってください。

一般にはよく失敗するたいしたことない人というイメージがあるかもしれませんが、地元のイメージは全然違います。とても人気が高く、衆議院の小選挙区で常に自民党さんを打ち負かして当選する圧倒的地盤を持っています。

国民民主は維新や維新以上の緊縮政党と共同会派を組んでいる

この前原さんが、希望の党の失敗にめげずに、こうしたれいわ新選組とは正反対の政策のもとで、立民・維新・国民民主をまとめあげた第二保守政党を作って政権交代しようと、うまずたゆまず努力し続けてきました。

だから京都の場合、国民民主党というものも、京都の外で今イメージされているような積極財政派風の政党ではありません。前原さんの子分です。
府議会や市議会では、国民民主さんは、維新さんや京都党さん(今の維新以上に「小さな政府」志向の強い地域政党)と、共同会派を組んでいます。

立民の反・反緊縮ぶりに直接実害を受けた

それに、京都の立民さんの指導部の「反・反緊縮」ぶりも、京都の外からは想像できないかもしれません。
たしかに、特にリーダーの福山哲郎さんにとっては、このかんのいきさつを考えれば、前原さんとは相当確執があってしかるべきだと思います。しかし、はたからみたら、かつての盟友時代と変わらず、反・反緊縮、反共産党のために、軌を一つにして連携して動いているように見えてしかたありません。

特に、私は、れいわ新選組ができる以前から、京都の立民指導部にはさんざん邪魔をされてきました。
私は2019年の統一地方選挙で、「薔薇マークキャンペーン」の一環として、反緊縮的な経済政策を掲げてくれた候補に「薔薇マーク」を出して、みんなで応援することを呼びかける運動をしていました。
そのとき、京都の立民指導部は、立民の候補者みんなに、「薔薇マーク」を受けないよう指示したのです。私たちのことを好意的に見てくれた候補者も何人かいたのですが、受けてくれませんでした。
ただ一人、一番理解くださった候補者のかたが、公表しない条件でこっそり受けてくださって、結局当選されたのですが、その後立民に大変冷遇され続け、とうとう会派の離脱に追い込まれています。

前原さんの志向は世界の傾向の日本における先駆け

だから私たちは真の敵は何か、クリアに見定めなければなりません。

前稿でも述べたとおり、今先進国では、緊縮既成政党vs右派ポピュリズムvs左派ポピュリズムの新三極図式が見られるようになってきています。かつて左右に分かれて覇を競っていた中道二大政党が、今、左右のポピュリストの隆盛を受けて結束し、緊縮・市場主義の一極を形成しつつあるのです。
日本を見ても、石破自民と野田立民はほとんど同じことを言っています。今後両者は、維新さんや国民民主さんからも同調者を糾合し、大連立または「◯党合意」などの形での事実上の大連立を作って、大衆増税に進んでいくことになるでしょう。
前原さんたちは、京都でその先駆を作りつつあるというわけです。それが、今度の参議院選挙の京都選挙区における維新候補なのです。そうやすやす当選させるわけにはいきません。

前原さんたちは、非自民、非共産の一本化を目指し、立民さんも共闘する形で維新候補を当選させようともくろんでいます。立民さんはそれに応じるかもしれません。応じずに、勝算はなくても独自候補を出すかもしれません。
どちらにしても、反・反緊縮です。やはり当選させるわけにはいきません。

前原さんたちの「非自民」の「自民」とは積極財政派

京都の外にいるとなかなかわからないかもしれませんが、今度改選の自民党さんの参議院議員、西田昌司さんは、政治思想はほとんど極右ですが、経済政策については積極財政派で、MMTを自称しています。
長く衆議院議員をされて先頃引退したもうひとりの自民党のドン、伊吹文明さんもまた、政治思想はほとんど極右みたいに見えますが、経済政策については積極財政派です。
京都に陣を張って百年戦ってきた自民党と共産党は、平成新自由主義改革に抵抗して昭和的光景を守ろうとしてきたメンタリティにおいて、共通していたとも言えるのです。

前原さんの言う「非自民」とは、こんな西田さん率いる京都の自民党さんを念頭においた「非自民」なのだということに注意しないといけません。自民党さんの中でも、新自由主義的改革を志向する部分とは、あの人はむしろ親和的になるだろうと思われます。

緊縮・大衆増税派の一極が勝利のうちに誕生するのを許すかどうか

もっとも前稿でも述べたとおり、安藤裕さんから言わせれば、西田さんの積極財政はエセだそうで、参政党から衆議院選挙に出た安藤さんが共産党のほうがましと言うくらいで、実際そのとおりエセには違いないと私も強く思うのですが、どっちにしろ必ず当選します。西田さんが落選することを前提に作戦を組むのは現実的ではありません。

したがって焦点を当てるべきは残り一議席です。
これを維新候補に渡し、緊縮・大衆増税派の一極が勝利のうちに爆誕することをむざむざ許すかどうかということです。

共産党候補が維・国・立連合に拮抗できるところ

維新候補が有利である要素はたくさんある

このように言うと、京都の外の人からは、維新&国民民主に立民さんまで加わった勢力に、いかにれいわ新選組が助力しようが共産党さんだけで勝てるはずがないと思われるかもしれません。
単純に比例代表の得票を足し算しただけならばそう思われるかもしれません。しかしその推論はかならずしも正しくありません。

たしかに、今度維新さんから立候補する予定の新實彰平さんは、元関西テレビアナウンサーで著名な人です。維新さんと国民民主さんに加えて立民さんまで推薦が出たら大変有利なことは間違いありません。
また、選挙期間中は万博開催中ですから、在阪テレビ局が好意的報道を重ねて維新さんの一般の印象は今より回復するかもしれません。自民党の支持層だった人たちが、自民党に怒って、西田さんに投票するのをやめて維新さんの候補に入れるかもしれません。維新さんの候補の側に有利になる材料を見つけようとしたら、きりがありません。

ですがだからといって倉林さんに当選の目がないわけではなくて、どうなるか読めない互角の戦いになる可能性は十分にあるというのが、京都の独自性なのです。

倉林さんには個人票がたくさんある

今度改選される共産党の倉林さんが、前回の参議院選挙で得た票は、24万6436票で、1万4千票差で立民の増原裕子さんに競り勝っています。このとき、増原さんは国民民主さんと社民党さんの推薦を受けています。もちろん、連合京都の推薦も受けています。それを上回っているのです。
同じ時の共産党さんの京都府での比例代表得票は、16万7302票余でしたので、倉林さんは共産党基礎票に8万票ほど上積みしていることになります。
倉林さんは、市議会議員を20年近く勤めてきた人です。それぐらい市議をやると、個人後援会の動員力はちょっとした政党を超えるものです。

維・国・立の過去票の足し算は疑問

他方、前回2022年の参議院選挙で維新さんから立候補した楠井祐子さんは、国民民主さんの推薦を得て25万7852票を得ています。これだけ見ると、この前の倉林さんの得票を1万票ほど上回っています。

しかし、維新さん自身の支持率は、前回の参議院選挙の当時と比べてかなり落ちています。たとえ立民さんが推薦を出しても、立民さんに投票していた人が、どれだけ指導部の言うとおりに、維新候補に入れるだろうかも疑問です。私は立民支持の学生グループの人と交流がありますが、彼らの中には反緊縮派も多いと言っています。
最近のにわか国民民主支持者には、かつてのアベノミクスの景気拡大的イメージに期待して自民党に入れてきた比較的若い層が多いと見ていますが、そんな人たちのどれだけが、積極財政派の名がとどろく西田さんに入れるのをやめて、前原さんの子分の当地の国民民主さんの言いなりになるかというのもだいぶ疑問です。

福山和人さんのような戦いができれば勝てる

2018年の京都府知事選挙で、自民、公明、立民、民進、希望の党の推薦する西脇隆俊さんの40万2672票に対して、国政政党としては共産党さんだけの推薦を受けた福山和人さんが、得票率44%、31万7617票を取って迫りました。
この善戦の原因の大きな一つが、はっきりとした反緊縮的な公約にあったということは、私がこのかん何度も指摘していることです。

倉林さんも、このときの福山さんのような戦いができれば、勝利は掴めます。
そのためには、本心を言えば倉林さんは無所属で出るのが一番いいと思うのですが、それが無理でも、少なくとも地域レベルでのれいわ新選組関係者とのあいだに、前稿で述べたような反緊縮的協定に基づく共闘体制を作って、前原さん的なるものをターゲットに据えた批判を展開すれば、だいぶいい戦いができるのではないかと思います。

共産党が日常の光景である強さ

地域に根を張っている

さて、「京都は共産党が強い」ということは言葉としては聞いたことがあっても、外の人にはなかなかピンと実感が伝わらないのではないかと思います。

京都では、医者にかかるとか弁護士にかかるとか、子どもを預けるとか、介護が必要になるとか、人生の大事なところのどこかで必ず共産党の関係の人にお世話になります。

それに、地域の趣味のサークルにも、地域の自治活動のボランティアにも、必ず共産党支持者であるメンバーがいます。創価学会の会員さんにあうよりも割合は高いです。
近所にもかならず共産党のポスター貼っているお宅があって、たいていは別に変わり者ではなくて、普通の良き隣人です。

そして、共産党さんの地方議員の人や、その候補者とか、党員活動家の人たちが、長年にわたって地域の困りごとなどに世話をやいて、信頼を獲得しています。
こんなに地域に根をはる活動ができているのは、ほかには自民党さんと、あとは前原さん個人ぐらいで、立民さんも維新さんも存在感がありません。もちろんれいわ新選組も。

先述したように、自民党さん(につながる伝統保守派)と共産党さんは、この都に陣を張って、まさに百年戦いつづけてきたわけです。内心を探れば互いにリスペクトのようなものすらあるようにも見えます。
そんな中では、維新さんもれいわ新選組も、せいぜい木曾義仲とか、それこそ新撰組ぐらいに思われているだけでしょう。

ともかく、京都では他所と比べて、世間一般の中で、共産党支持者の人が異端視されたり、身構えられたりすることは比較的なくて、たとえば長崎市の世間の中でのキリスト教徒のような日常光景の一部です。れいわ新選組のほうがよほど身構えられると思います。
もちろん反共意識が強い人たちもたくさんいるのですが、それは、他所で漠然とソ連や中国といっしょくたにした根拠ないイメージでいだかれている反共意識ではなくて、本当に共産党さんやその支配する時代の行政から、自ら実害を受けたり、実害を受けた人を身近で見聞きしたりしたことを背景に持つ割合が高いように思います。
だからかえって根深いのですが、そのこと自体が、共産党さんの存在感の大きさの現れのように思います。

まだまだ共産党の得票は多い

だから選挙の得票も他所よりずっと多い。
たしかに京都でも全国と同じで、共産党さんの支持者の高齢化が進み、得票率の長期傾向的な低下が進んでいることは間違いがないのですが、でもなんだかんだ言ってまだまだ強いです。

比例代表の得票率では、京都の共産党さんは立民さんよりちょっと少ない程度。公明党さんには、常に三割り増しぐらいで勝っています。
さすがに自民党さんは倍ぐらいの差がありますが、それでも「倍」ですよ。共産党の得票が自民党の半分とかというと、全国的にはとんでもない高得票だと思いますが、ここに住んでいるとだんだん感覚が麻痺して、逆になんでいまだにこんなに自民党が得票するんだという気持ちになるぐらい。
これが左京区ともなると、共産党さんの得票はいつも立民さんの票を超えていて、去年の総選挙では維新さん(支持が増えたのは近年)をギリギリ上回って、自民党さんの得票に迫っていました。

京都府議会でも京都市議会でも、一昨年の選挙後に国民民主・維新の合同会派が生まれるまで、長らく基本的に、共産党は自民党に次ぐ第二党でした。立民さんはそれにはずっと及ばない議席(現在府議会3議席、市議会1議席)です。

オワコン「野党共闘」がもともとなかったところ

運動の中に立民の影はない

それから、京都で「れ共共闘」と言うことが、全国的にイメージされる「野党共闘」とずいぶん違うものだということも、京都を離れるとイメージしづらいのかなと思います。

全国レベルで見た時、袖にされてもされても、共産党さんが野田執行部の立民さんにすがりついている野党共闘など、蹴り飛ばして当然です。
しかも、立民さんはこのかん、日本の軍事大国化、帝国主義化を進めるさまざまな法案に賛成し、消費減税を否定して財政緊縮を叫び続けているわけですからなおさらです。

しかし、京都の街中で見える光景はそれとは全く違います。
前回の投稿でも述べましたが、京都では立民さんは、市政、県政の与党として、ずっと自民党さんと手を組んできました。共産党さんとの共闘など見向きもせず、常に敵視してきました。
京都の街中には、消費税やインボイスに反対する取り組みとか、保育や給食の課題に取り組む運動とか、新幹線延伸に反対する運動とか、文化財や景観を守る課題に取り組む運動とか、さまざまな大衆運動がありますが、多くの場合、共産党支持者の人たちが熱心に取り組んでいて、全くと言っていいほど立民さんの影はありません。これらの取り組みに対して立民さんは、多くの場合冷淡で、かえって敵対してきたと言えます。

「市民連合」ってあまり聞かないなあと思ったら

だから、他の多くの地域のような、立民さんを含む野党共闘を取りまとめるための「市民連合」ってさっぱり聞かないなあと思っていました。
「ユナイトきょうと」と名乗る団体がそれにあたるのかなと思っていたら、たしかに正式には「市民連合ユナイトきょうと」と言うそうです。
しかし、名の知れた地域活動家が参加していて、共産党さんの支持者もれいわ新選組の支持者もいらっしゃいますが、立民さんの関係者が中で頑張っていらっしゃる印象はありません。私の知識がないだけかもしれませんけど。
この人たちは、立民さんにも都度一応声はかけているみたいですけど、相手にされていないようですし、もともと期待もしてないようです。

それゆえ、自分の目に触れる限り、この地の多くの共産党支持者や関係者にとって、立民さんのお偉いさんたちは敵とみなされてきたと感じます。

立民の茶番仲間とみなす選挙方針はそぐわない

あからさまに反共でタカ派で緊縮派の野田執行部の成立で、従来の野党共闘運動は全国的に混乱しているし、共産党の中央の人たちだって、従来どおりの立民追従に、はっきりすっきりみんなが同意しているわけではないはずだと見受けられます。
そんな中では、京都はこれからあるべき立共関係を先取りして示してきたと言えると思います。
いかに共産党さんが集中制だと言っても、今の全国的力量では、京都の組織全体にそっぽを向かれたらやっていけるはずがありません。ほかのテーマについてはともかく、立民さんとの付き合い方というテーマについては、京都の大衆的状況が共産党の中の人たちを突き動かして、全国方針に多かれ少なかれ影響を与えるということは、可能なのではないかと思います。

こんなところに、れいわ新選組の選挙方針として、共産党さんが立民さんの茶番仲間であるかのようにみなす全国方針を、機械的に持ち込むような事態は避けるべきだと思います。