穴の空いたバケツに水を注いではいけない ー組織風土変革を進めるためにー
穴の空いたバケツとは
マーケティングにおいては、「穴の空いたバケツに水を注いではいけない」という考えがあります。
たとえばあなたが通販サイトで商品を購入するとき、こんなことが起こったらどう感じるでしょう?
・目当ての商品をカートに入れるボタンが分かりにくい
・配送日の目安がはっきりしない
・購入時に配送先を入力する画面が使いにくい
おそらく、「もうエエわ」と別のサイトで買い物をしたくなると思います。
マーケティングにおける「穴の空いたバケツ」とは、このようにユーザーが途中で離脱したくなる「穴」が随所にある状態を指します。この状態で宣伝費を投じてサイトや商品を宣伝しても、ユーザーが流入する端から零れていってしまい、非常に効率が悪い。
そこで、ユーザーを呼び込む前にまずバケツの「穴」を塞ぐ、というのが「穴の空いたバケツに水を注いではいけない」という考え方です。
今の日本企業には「穴の空いたバケツ」が転がっているのではないか
前置きが長くなりましたが、私はこの考えが、マーケティングだけでなく、組織風土変革においても重要ではないか、と考えるに至りました。
組織を変革する為に、時にはトップダウンで力強いメッセージを発信したり、時には草の根的に風土活性化のイベントや施策を講じたりする。これはいわば、組織風土を変革するエネルギーが不足している組織という空っぽのバケツに水を注ぐ活動とも言えます。
それ自体は必要なことなのですが、一方で受ける側のバケツ、すなわち組織や人がそれらを受け入れる準備や余裕がない、穴の空いたバケツだったら? ただ施策が空回りするばかりで、一部の人を除いて白けた空気が蔓延してしまうのではないでしょうか。
視点を変えると、水は「人」そのものかも知れません。組織を強化するためにリファラル採用などで人員を増強しても、辞めていく人が多ければ効果は半減です。
組織というバケツの穴を塞ぐ
なら「穴を塞ぐ」と言うことはどういうことか。
私は、現在組織に属する人々のペインを真摯に受取り、それを解決するほかないのでは、と考えています。それを怠り、いくら人事施策を打っても、組織風土変革など為し得ないのではないか。そんな気がしてならないのです。
現場のペインを解消して離職率を改善した例として真っ先に思い浮かぶのがサイボウズの人事制度改革です。多様なワークスタイルを導入し、離職率を28%から3%へと大きく改善したのは目覚ましい功績だと言えます。
大事なのは現場のイシューに向き合うこと
ここで言いたいのは「ワークスタイルを改善すれば良い」という話でなく、現場のイシューにきちんと向き合って適切な策を講じることが大事ということです。
サイボウズにおいては多様なワークスタイルを求める現場の声があったから「100人100通りの人事制度」が生まれたにすぎません。これは現場の一人ひとりの声に真摯に向き合い、策を講じた結果と言えます。
もちろん、草の根の風土変革活動が無駄と言うつもりはありません。ただし、穴の開いたバケツにジャブジャブと水が注ぎこまれている様では、誰も幸せになれないのではないかと、残念な気持ちになるのが正直なところです。
どうやったらこの穴が塞げるか。これからも考え続けたいです。