ロバート秋山のクリエイターズファイル「石丸ツワノ」の日本語がすごい
ロバートの秋山さんが、ちょっと引っかかるタイプのクリエイターを彼のエッセンス満載に体現するこの「クリエイターズファイル」という企画。クリエイターってそもそも癖がある人が多いですよね。でもなんかすごい人みたいだからということで、見ている側としてはついそのまま受け入れてしまいます。
そんなクリエイター任せな世の中の「受容」にちょっと待てと言ってくれるのがこのクリエイターズファイルです。これを見て爆笑できるのは、それまで感じてきた疑問を疑問ともせず見過ごしてきた証拠です。
そんなクリエイターズファイルの最新盤としてフィーチャーされているのが「石丸ツワノ」です。ツワノは大正を代表する作詞家で、日本人の誰もがその詩に故郷を思うほど日本人の心に根付いています。
ツワノの代表作は「真っ赤っか」。一部を抜粋してみます。
真っ赤っか 真っ赤っか
夕焼け似とる 赤身がええ
けちんぼしとるとちがうんほ
……
こちらは「おどろうカンデロリラ」です。
カンデロリラ ハミハミ
カンデロリラ ハミハミ
おどりましょう
……
こんなん、実際に詩として学んだことなかっただろうか?韻を踏んだと思えばいきなりそれをぶっ壊す一文が続く。同じ言葉が何度も重複されたと思えば、その重複がまるで無意味だったかのように意味不明な言葉が投下される。私たちはそれをどうにか理解しようとする癖がついているし、意味が分からないと言ってしまっては身も蓋もないので、「え?」という気持ちを腹の底にしまい込み、ある人の感性として納得することにする。
でもロバートの秋山さんはそうしません。「え?」を最大限解釈可能なものにしたうえで、それを自分が演じることにより、誰もが腹の中に押し込んで忘れ去っている「え?」を掘り起こしてくれます。そしてそれは決して中途半端なものに終わりません。もはや一つの世界として完成させて見せてくれるのです。
中途半端でないことの極めつけとして、ツワノの子孫が「ツワノの世界展」を訪れ、主催者に感謝するシーン。著名人の子孫って、立ち位置的に結構違和感があるものですが、でもそれは私たちの心にそっとしまわれていたはずです。そんな細かいところにまで気を配り、一つのコンテンツを作り上げる秋山さん。素晴らしいクリエイターです。