所得税高いしiDeCoも使えない…非居住者の憂鬱
あれ、なんでこんなに給料少ないの?非居住者のワナ
香港に居住しながら、フリーランスとして日本での収入を得ている私。ある日ふと、「あれ、なんでこんなに振り込まれる給料少ないんだろう?年金も自分で国民年金払ってるのに……」と気づきました。そして、仕事を受注している会社の経理部に問い合わせたところ「あー、海外居住者の方は源泉所得税が高いんですよ。20%だったかな?」とサクッと回答され……ショック!このしがない給料から20%も⁉本当に驚きました。確定申告をして払い過ぎた分取り戻そう!を意気込みましたが、そもそも非居住者への税率は最低20.42%であるため払い過ぎているわけではなく、取り戻せないことが判明。「税金の支払い分は原稿何枚分だろう……」としない方が良い計算をして途方にくれました。
海外に住んでいながら日本で収入がある場合「二重課税」されるリスクがある
私はもう8年も香港で暮らしており、香港の永住権も持っています。一方で、日本では非居住者という扱いになっており、マイナンバーも取得していません。日本に住所がないためです。
でもだからと言って、日本に税金を納めなくてよい、というわけではありません。日本において給与として受け取っている収入は、必ず源泉徴収されます。そして、通常は居住している国においても、同じ収入に対して税金を納める義務が発生します。
二つの国で同じ収入に対して課税されることを「二重課税」と言います。これを避けるために、国と国との間で租税条約が結ばれ、どちらかの国で支払った税金は一方の国では支払わなくてよいというような取り決めがされています。
ただ、これってすごく面倒くさい。租税条約は個別の国同士が結んでいるものだから、国によっては情報を得るのが大変です。また払い過ぎた分を還付してもらうのだって、書面での手続きが必要になります。
でも実は、私が住んでいる香港の場合、「源泉主義」という考え方を元に、収入が発生した場所が香港でない限り、課税されません。その点、私の場合は日本にだけ税金を納めればよいということになるため、手続きはそれほど難しくありません。
非居住者は所得税の源泉徴収が最低でも20.42%…辛い
問題はここからです。日本では非居住者に対する源泉所得税率が通常の所得税率より高いのです。最低でも20.42%。居住者だった場合、私の収入ならせいぜい5%から10%なのに倍以上取られてしまう。これがとても辛い。辛すぎる。
例えば課税所得が200万円だったとして、所得税が10%違うと20万。これが何年にもわたって引かれていくと思うと、非居住者って憂鬱……となるわけです。
運転免許の更新期間は約2ヵ月…非居住者にも容赦ない
非居住者は、日本で行わなければならない事務手続きにおびえています。例えば運転免許の更新。お知らせのハガキが来ると、心がかなりザワつきます。はがきに書かれている更新可能な期間はせいぜい2か月程度。その間に否が応でも帰国しなければなりません。風邪ひいたとか、今は無理とか言ってもだめです。
特に非居住者の場合、住民票やマイナンバーカード、健康保険証等を保有していないため、日本で使える身分証明書が限られています。そのため免許証は何が何でも死守しなければなりません。
ちなみに、日本に住所がありませんので、免許の更新時は実家などの住所を使うことになります。その際その家主のサイン(印鑑)が入った書面が、通常必要な書類に加えて必要になります。
非居住者は証券口座を開設できずiDeCoもNISAも使えない
iDeCoやNISAに関する原稿を執筆したり編集することがよくあります。この制度、知れば知るほど、使ってみたい。掛け金が所得控除されたり、売却益に税金がかからなかったり……すっごいいいな!と思います。投資したい!
国は私たちの生活の質を向上し、安全を確保してくれる大切な存在で、それを動かすための税金は国民として納める義務があります。でも決められた金額以外多く支払う必要もありません。
NISAやiDeCoは税金を抑えながら資産を増やす制度。居住者なら使わない手はない……と思います。
非居住者も代表取締役になれる
非居住者の憂鬱な点ばかり書いてしまいましたが、ここ数年の間に改善された事柄として、非居住者が日本の株式会社の代表取締役に就けるようになりました。これ、結構画期的ですよね。私のように、日本に住所がなくても会社を設立することができるわけです。実際私も、友人と会社を設立した後、途中で代表取締役に就任したという経験があります。(現在は清算決了済み。代表1名、社員1名の会社でした)
法人の場合は経費が使えるからお得、なんて言われますが、実際のところ経費として認められない支出も多く、また会社にする場合、健康保険に加入しなければならなかったり、厚生年金に加入しなければならなかったり、はたまた会計士を雇ったりで想像以上にお金がかかるものです。
非居住者の所得税が高いということで、会社にした方が良いのかこのままいくか、しばらく悩むことになりそうです。