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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパミンD₂受容体

第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問218-219

一般問題(薬学実践問題)


【物理・化学・生物、衛生/実務】

■複合問題|問 109-218-219

Q. 76歳女性。夫と息子との3人暮らし。高血圧症、てんかん、統合失調症及び不眠症の治療を行っている。処方1~3は、以下の時系列記録の1年前から継続している。
(処方1)
アジルサルタン錠40mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|朝食後|28日分|
(処方2)
バルプロ酸Na徐放錠100mg 1回1錠(1日2錠)|
リスペリドン口腔内崩壊錠1mg 1回1錠(1日2錠)|
1日2回|朝夕食後|28日分|
(処方3)
ラメルテオン錠8mg|1回1錠(1日1錠)|
レンボレキサント錠2.5mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|就寝前|28日分|
7月4日(かかりつけ医受診後来局):
処方1~3継続、eGFR56mL/min/1.73m2
8月1日(かかりつけ医受診後来局):
処方1~3継続、eGFR32mL/min/1.73m2
家族「腎臓の精密検査のために、かかりつけの先生が、大学病院の腎臓内科の外来受診を予約してくれました。8月8日に本人を連れていきます。」
8月4日(家族から薬局へ電話相談、及び薬剤師から医師への確認):
家族「前回受診時にかかりつけの先生に伝え忘れましたが、よだれが出るようになったり、顔の表情が無くなったり、歩行が遅くなったりすることが7月中旬ぐらいから目立ってきました。」
かかりつけ医師「随意運動は問題ありませんでした。薬の副作用ですね。」


実務

問 109-218|実務
Q. 8月4日に医師から指摘のあった副作用の原因薬物として、可能性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. アジルサルタン
2. バルプロ酸ナトリウム
3. リスペリドン
4. ラメルテオン
5. レンボレキサント


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物理・化学・生物

問 109-219|生物
Q. この副作用と同じ症状が現れる可能性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 大脳皮質運動野の障害
2. 大脳辺縁系の障害
3. 大脳基底核の障害
4. 視床下部の障害
5. 皮質脊髄路の障害


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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパ|matsunoya


こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。

matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、【物理・化学・生物、衛生/実務】 の複合問題を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 / 問218-219、論点:抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパミンD₂受容体を徹底解説します。

薬剤師国家試験対策ノート NOTE ver.
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパ|matsunoya

薬剤師国家試験対策には、松廼屋の eラーニング
薬剤師国家試験対策ノート

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このコンテンツの制作者|

滝沢 幸穂  Yukiho Takizawa, PhD

https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa

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設問へのアプローチ|

薬学実践問題は原本で解いてみることをおすすめします。
まずは、複合問題や実務の問題の構成に慣れることが必要だからです。
薬学実践問題は薬剤師国家試験2日目の①、②、③ の3部構成です。
今回の論点解説では2日目を取り上げています。


厚生労働省|過去の試験問題👇

第109回(令和6年2月17日、2月18日実施)
第108回(令和5年2月18日、2月19日実施)
第107回(令和4年2月19日、2月20日実施)
第106回(令和3年2月20日、2月21日実施)


第109回薬剤師国家試験 問218-219(問109-218-219)では、リスペリドン / 錐体外路症状に関する知識を生物および実務のそれぞれの科目の視点から複合問題として問われました。


複合問題は、各問題に共通の冒頭文とそれぞれの科目別の連問で構成されます。
冒頭文は、問題によっては必要がない情報の場合もあるため、最初に読まずに、連問すべてと選択肢に目を通してから、必要に応じて情報を取得するために読むようにすると、時間のロスが防げます。
1問、2分30秒で解答できればよいので、いつも通り落ち着いて一問ずつ別々に解けば大丈夫です。
出題範囲は、それぞれの科目別の出題範囲に準じています。
連問と言ってもめったに連動した問題は出ないので、平常心で取り組んでください。


💡ワンポイント

複合問題ですが、問109-218-219を解くうえで必要な情報は、黄色い線で示した部分です。
それ以外の情報取得は必要がないです。読んでいると時間のロスに繋がります。

問109-218-219 論点解説|matsunoya_note

問109-218および問109-219は、リスペリドンの錐体外路症状に関する記述の正誤を問う問題です。
医療用医薬品添付文書および副作用発現のメカニズムの理解が必要です。

冒頭文で必要な情報は、
処方(リスペリドン)
副作用の特徴(パーキンソニズム:流涎、仮面様顔貌、無動、筋固縮)
です。


それにしても、ひどい品質の問題設計です。😱

今回の問題の文字数を数えてみましたが、選択肢を含めて681文字でした。そのうち、冒頭文が496文字です。
処方に記載された医薬品は5種類あります。ポリファーマシーです。
しかも、複合問題の冒頭文の構成があまりにも散文的で様式が要領を得ません。任意な書き方の構成で読みづらいです。

副作用の特徴(パーキンソニズム:流涎、仮面様顔貌、無動、筋固縮)から、5つの医薬品のうちのリスペリドンを選択させる問題ですが、リスペリドンは、セロトニン・ドパミン・アンタゴニスト(SDA)として、単一化合物でドパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有し、ハロペリドールと同様に強い抗精神病作用を示すとともに、錐体外路系の副作用が少なく、陰性症状に対しても有効な新しい抗精神病薬として開発されたプロフィールを持ちます。

論点に対して、フォーカスがずれています。

高齢者で腎機能が落ちている患者の場合という前提で、副作用が通常よりも強く出たというストーリー仕立てですが、それは、リスペリドンにおける安全性(使用上の注意等)に関する項目では優先順位が低く、薬剤師国家試験で問われるべきコアカリキュラムの基本的な知識を求める基準から逸脱しています。

出題するとしたら、その医薬品の安全性(使用上の注意等)に関する項目のうち、警告、禁忌、重要な基本的注意とその理由、特定の背景を有する患者に関する注意などから、コアカリキュラムの中で基本的な内容なので薬剤師の知識として審査すべきことを出題する必要があります。

リスペリドンは肝臓で代謝される医薬品ですが、代謝物が腎排泄型であるため、腎機能障害患者において半減期の延長及びAUCが増大することがあるため慎重に投与する必要があるのは知識として知っておいていいですが、その因果関係で錐体外路系の副作用が出現した1症例について特定することを求めることは、出題の優先順位としておかしいです。

また、1問につき2分30秒で回答させるには、文字数散文的な所見の描写5種類の医薬品が含まれる処方など、意図的に戦略的に、国家試験において、薬剤師としての資質の検出力を落とすために、残念な仕上がりの問題設計をして提出していると推察されても仕方のない出来上がりです。

さらに、第109回薬剤師国家試験の薬学実践問題【物理・化学・生物】で気づいたのですが、医薬品の領域に著しく偏りがあります。
論点となる医薬品の領域は、可能な限り均一に幅広くとって、多様性がある状態で問われなければ、薬剤師としての基本的な資質を検出する目的から解離します。

このような問題の場合、レビュワーが責任者に差し戻して、指導と修正の指示を出すプロセスが必要です。
クオリティの低い、ゼロ点合格を目指すベクトルを持った問題が国家試験に出されていることがまかり通っている状態では、国家資格の意味が崩壊します。

レビュワーが照会する以前に、作問にあたってのガイドラインまたは標準作業手順書が必要とされます。
少なくとも、1問につき処方として掲載してよい医薬品の数、冒頭文の基本的な構成要素とその位置などの体裁に関しては、書式の様式(No.1)など決めておくことが品質マネージメント上、必要です。
国家資格試験の問題設計において、ガバナンスのプロセスが成立していないのではないでしょうか。

誰かが、薬剤師の国家資格の実効性に関し、薬剤師国家試験の品質を憂慮して、止めるべきものは止めなければ、カイゼンのPDCAサイクルが進みません。


時間にゆとりがない人は、論点およびポイントから読んでくださいね。
上記の太字を選択して Ctrl + F でジャンプできます。


🫛豆知識 医療用医薬品添付文書等

医療用医薬品添付文書等を一読しておくと応用力がつきます。

PMDA 医療用医薬品添付文書等 リスペリドン

製造販売元/ヤンセンファーマ株式会社 リスパダール錠1mg/リスパダール錠2mg/リスパダール錠3mg/リスパダール細粒1%
インタビューフォーム F1_リスパダール錠1mg/リスパダール錠2mg/リスパダール錠3mg/リスパダール細粒1%
患者向医薬品ガイド G_リスパダール錠1mg/リスパダール錠2mg/リスパダール錠3mg/リスパダール細粒1%


以下、インタビューフォームから抜粋します。

1.開発の経緯

抗精神病薬ハロペリドール、ブロムペリドール等のブチロフェノン系薬剤は、統合失調症の薬物療法として合成・開発されてきた1)。
その後、ラットでの研究において抗精神病薬により誘発されるカタレプシーをセロトニン拮抗薬が減弱させることが報告され2)、さらに、選択的なセロトニン5-HT2受容体拮抗作用薬をドパミンD2受容体拮抗作用を主作用とする従来の抗精神病薬に併用したところ、陰性症状の改善、ドパミンD2受容体拮抗薬の副作用である錐体外路症状の減弱がみられることが確認された3)。

そこで単一化合物でドパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有し、ハロペリドールと同様に強い抗精神病作用を示すとともに、錐体外路系の副作用が少なく、陰性症状に対しても有効な新しい抗精神病薬の開発が開始された。

その結果、従来の抗精神病薬とは構造の異なるベンズイソオキサゾール骨格を有する新規化合物リスペリドン(商品名:リスパダールⓇ)が1984年に合成された。

リスペリドンは薬理学的な特性からセロトニン・ドパミン・アンタゴニスト(SDA)と呼ばれている。

統合失調症を対象に、本邦において1988年より第Ⅰ相試験、1989年より第Ⅱ相試験、1991年より第Ⅲ相試験が実施され、有用性が確認されるに至り、リスパダールⓇ錠1mg、2mg、細粒1%の製造承認を1996年4月に取得した。
その後リスパダールⓇ錠1mgと生物学的同等性が確認されたリスパダールⓇ内用液1mg/mLの輸入承認を2002年3月に取得し、続いて、リスパダールⓇ錠3mgの輸入承認を2002年12月に取得した。その後、より服薬コンプライアンスの向上を目指し、リスパダールⓇOD錠1mg、2mgの製造販売承認を2007年3月に取得し、リスパダールⓇOD錠0.5mgの製造販売承認を2009年7月に取得した。

また、米国においてリスペリドンは「自閉性障害に伴う易刺激性」の適応を取得しているが、本邦では適応外で使用されているのが現状であった4)。

当該状況を踏まえ、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で小児の自閉性障害に対する本剤の医療上の必要性は高いと評価されたため、自閉性障害に伴う易刺激性を有する日本人小児及び青年患者を対象に本邦において2012年より第Ⅲ相試験が実施された。

本試験で小児期の自閉性障害に伴う易刺激性に対する有効性及び安全性が確認されるに至り、「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」への効能又は効果、用法及び用量追加にかかわる製造販売承認事項一部変更承認を2016年2月に取得した。

なお、DSM*-IV-TRにより定義される「自閉性障害」は、DSM-5への改訂により疾患定義が変更されたことを踏まえ、DSM-5に基づいて、効能・効果を「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」と設定した。
*American Psychiatric Association(米国精神医学会)のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神疾患の診断・統計マニュアル)

全ての効能又は効果について再審査が終了し、統合失調症に関しては2008年2月に薬事法第14条第2項各号(承認拒否事由)のいずれにも該当しない、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に関しては2021年6月に医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しない、との再審査結果を得た。

2.製品の治療学的・製剤学的特性

1.ベンズイソオキサゾール骨格を有する抗精神病薬SDA(セロトニン・ドパミン・アンタゴニスト)である。(P.2、P.19)
2.統合失調症の幻覚及び妄想等の陽性症状と共に、感情的引きこもり及び情動鈍麻等の陰性症状も改善する。 (P.13)
3.小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対する有効性が確認されている。 (P.13~16)
4.錠、OD錠、細粒、内用液と個々の状況に応じた剤形選択が可能である。 (P.5)
5.重大な副作用として悪性症候群、遅発性ジスキネジア、麻痺性イレウス、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、肝機能障害、黄疸、横紋筋融解症、不整脈、脳血管障害、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、低血糖、無顆粒球症、白血球減少、肺塞栓症、深部静脈血栓症、持続勃起症が報告されている。
なお、主な副作用として、食欲不振、不眠症、不安、アカシジア、振戦、構音障害、傾眠、めまい・ふらつき、流涎過多、便秘、悪心、嘔吐、筋固縮、月経障害、易刺激性、倦怠感、口渇が報告されている。

PMDA 医療用医薬品添付文書等 リスペリドン 製造販売元/ヤンセンファーマ株式会社 
インタビューフォーム 
F1_リスパダール錠1mg/リスパダール錠2mg/リスパダール錠3mg/リスパダール細粒1%

以下、医療用医薬品添付文書から抜粋します。

薬効分類名

抗精神病剤

一般的名称

リスペリドン

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

2.1 昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある。]
2.2 バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強されることがある。]
2.3 アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)[10.1 参照]
2.4 本剤の成分及びパリペリドンに対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能又は効果

  • 〈リスパダール錠1mg、リスパダール錠2mg、リスパダール細粒1%〉

    • 統合失調症

    • 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性

  • 〈リスパダール錠3mg〉

    • 統合失調症

5. 効能又は効果に関連する注意

〈小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性〉
5.1 原則として5歳以上18歳未満の患者に使用すること。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 本剤の活性代謝物はパリペリドンであり、パリペリドンとの併用により作用が増強するおそれがあるため、本剤とパリペリドンを含有する経口製剤との併用は、避けること。

8. 重要な基本的注意

〈効能共通〉

8.1 投与初期、再投与時、増量時にα交感神経遮断作用に基づく起立性低血圧があらわれることがあるので、少量から徐々に増量し、低血圧があらわれた場合は減量等、適切な処置を行うこと。
8.2 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.3 本剤の投与により、高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意するとともに、特に糖尿病又はその既往歴あるいはその危険因子を有する患者については、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。[8.5 参照],[9.1.6 参照],[11.1.9 参照]
8.4 低血糖があらわれることがあるので、本剤投与中は、脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状に注意するとともに、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。[8.5 参照],[11.1.10 参照]
8.5 本剤の投与に際し、あらかじめ上記8.3及び8.4の副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)、低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう指導すること。[8.3 参照],[8.4 参照],[9.1.6 参照],[11.1.9 参照],[11.1.10 参照]

〈統合失調症〉
8.6 興奮、誇大性、敵意等の陽性症状を悪化させる可能性があるので観察を十分に行い、悪化がみられた場合には他の治療法に切り替えるなど適切な処置を行うこと。
〈小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性〉
8.7 定期的に安全性及び有効性を評価し、漫然と長期にわたり投与しないこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

9.1.1 心・血管系疾患、低血圧、又はそれらの疑いのある患者
一過性の血圧降下があらわれることがある。
9.1.2 不整脈の既往歴のある患者、先天性QT延長症候群の患者
QTが延長する可能性がある。
9.1.3 パーキンソン病又はレビー小体型認知症のある患者
悪性症候群が起こりやすくなる。また、錐体外路症状の悪化に加えて、錯乱、意識レベルの低下、転倒を伴う体位不安定等の症状が発現するおそれがある。[11.1.1 参照]
9.1.4 てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者
痙攣閾値を低下させるおそれがある。
9.1.5 自殺企図の既往及び自殺念慮を有する患者
症状を悪化させるおそれがある。
9.1.6 糖尿病又はその既往歴のある患者、あるいは糖尿病の家族歴、高血糖、肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者
血糖値が上昇することがある。[8.3 参照],[8.5 参照],[11.1.9 参照]
9.1.7 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
悪性症候群が起こりやすい。[11.1.1 参照]
9.1.8 不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態等の患者
抗精神病薬において、肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されている。[11.1.12 参照]

9.2 腎機能障害患者

本剤の半減期の延長及びAUCが増大することがある。[16.6.1 参照]

9.3 肝機能障害患者

肝障害を悪化させるおそれがある。[11.1.5 参照],[16.6.1 参照]

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があらわれたとの報告がある。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒトで乳汁移行が認められている1)

9.7 小児等

〈統合失調症〉
9.7.1 13歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
〈小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性〉
9.7.2 低出生体重児、新生児、乳児、5歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

患者の状態を観察しながら少量(1回0.5mg)から投与するなど、慎重に投与すること。高齢者では錐体外路症状等の副作用があらわれやすく、また、腎機能障害を有する患者では最高血漿中濃度が上昇し、半減期が延長することがある。[16.6.1 参照]

10. 相互作用

本剤は主としてCYP2D6で代謝される。また、一部CYP3A4の関与も示唆される。
(中略)

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
「重大な副作用」及び「その他の副作用」の項における副作用の頻度については、統合失調症患者を対象とした結果に基づき算出した。

11.1 重大な副作用

11.1.1 悪性症候群(頻度不明)
無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CKの上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎障害へと移行し、死亡することがある。[9.1.3 参照],[9.1.7 参照]
11.1.2 遅発性ジスキネジア(0.55%)
長期投与により、口周部等の不随意運動があらわれ、投与中止後も持続することがある。
11.1.3 麻痺性イレウス(頻度不明)
腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、本剤は動物実験(イヌ)で制吐作用を有することから、悪心・嘔吐を不顕性化する可能性があるので注意すること。[15.2.1 参照]
11.1.4 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(頻度不明)
低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量の増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがある。
11.1.5 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、γ–GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。[9.3 参照],[16.6.1 参照]
11.1.6 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
11.1.7 不整脈(頻度不明)
心房細動、心室性期外収縮等があらわれることがある。
11.1.8 脳血管障害(頻度不明)
11.1.9 高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡(頻度不明)
高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意するとともに、血糖値の測定を行うなど十分な観察を行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、インスリン製剤の投与等の適切な処置を行うこと。[8.3 参照],[8.5 参照],[9.1.6 参照]
11.1.10 低血糖(頻度不明)
脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。[8.4 参照],[8.5 参照]
11.1.11 無顆粒球症、白血球減少(頻度不明)
11.1.12 肺塞栓症、深部静脈血栓症(頻度不明)
肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、息切れ、胸痛、四肢の疼痛、浮腫等が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[9.1.8 参照]
11.1.13 持続勃起症(頻度不明)
α交感神経遮断作用に基づく持続勃起症があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

(中略)
神経系障害注1)
アカシジア、振戦、構音障害、傾眠、めまい・ふらつき
頭痛、ジストニー、鎮静、運動低下、立ちくらみ、ジスキネジア、無動、しびれ感、痙攣、仮面状顔貌、頭部不快感、錯感覚
パーキンソニズム、錐体外路障害、精神運動亢進、注意力障害、構語障害、よだれ、嗜眠、意識レベルの低下、会話障害(舌のもつれ等)、味覚異常、記憶障害、てんかん、末梢性ニューロパチー、協調運動異常、過眠症、弓なり緊張、失神、平衡障害、刺激無反応、運動障害、意識消失

心臓障害注2)
頻脈、動悸、心室性期外収縮、上室性期外収縮
洞性頻脈、房室ブロック、右脚ブロック、徐脈、左脚ブロック、洞性徐脈

血管障害注3)
潮紅
起立性低血圧、低血圧、高血圧、末梢冷感、末梢循環不全
(中略)
注1) 症状があらわれた場合には必要に応じて減量又は抗パーキンソン薬の投与等、適切な処置を行うこと。
注2) 心電図に異常があらわれた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
注3) 増量は徐々に行うなど慎重に投与すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

15.1.1 本剤による治療中、原因不明の突然死が報告されている。
* 15.1.2 外国で実施された高齢認知症患者を対象とした17の臨床試験において、本剤を含む非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6~1.7倍高かったとの報告がある。また、外国での疫学調査において、定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率の上昇に関与するとの報告がある。
15.1.3 本剤を含むα1アドレナリン拮抗作用のある薬剤を投与された患者において、白内障手術中に術中虹彩緊張低下症候群が報告されている。術中・術後に、眼合併症を生じる可能性があるので、術前に眼科医に本剤投与歴について伝えるよう指導すること。

16.6 特定の背景を有する患者

16.6.1 高齢者及び腎機能障害患者での成績
健康成人、高齢者、肝機能障害患者及び腎機能障害患者にリスペリドン1mg錠を単回経口投与したとき、活性成分(リスペリドン+9-ヒドロキシリスペリドン)の薬物動態は、健康成人と比して、中等度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:30~60mL/min/1.73m2)でt1/2に35%の延長及びAUCに2.7倍の増大、重度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:10~29mL/min/1.73m2)でt1/2に55%の延長及びAUCに2.6倍の増大、高齢者でt1/2に30%の延長及びAUCに1.4倍の増大が認められた18)(外国人データ)。[9.2 参照],[9.3 参照],[9.8 参照],[11.1.5 参照]

16.7 薬物相互作用

健康成人、健康高齢者又は患者(統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害、精神病)を対象とした薬物相互作用の検討結果を以下に示す(外国人データ)。

16.7.1 リスペリドンの薬物動態に対する他剤の影響[10.2 参照]
(1) カルバマゼピン
統合失調症患者11例にCYP3A4誘導作用を有するカルバマゼピン(400~1000mg/日反復投与)とリスペリドン(6mg/日反復投与)を21日間併用したときの活性成分(リスペリドン+9-ヒドロキシリスペリドン)のCmax及びAUCτは約50%減少した19)
(2) シメチジン及びラニチジン
健康成人12例にCYP3A4及びCYP2D6阻害作用を有するシメチジン(800mg/日反復投与)とリスペリドン(1mg単回投与)を併用したときの活性成分のCmax及びAUCはそれぞれ25%及び8%増加した。また、ラニチジン(300mg/日反復投与)と併用したとき、それぞれ36%及び20%増加した。20)
(3) パロキセチン
統合失調症患者12例にCYP2D6阻害作用を有するパロキセチン(10、20及び40mg/日反復投与)とリスペリドン(4mg/日反復投与)を併用したとき、活性成分の定常状態におけるトラフ値がそれぞれ1.3、1.6及び1.8倍上昇した2)
(4) セルトラリン
統合失調症又は統合失調感情障害患者11例にCYP2D6阻害作用を有するセルトラリン(50mg/日反復投与)とリスペリドン(4~6mg/日反復投与)を併用したとき、活性成分の血漿中濃度に併用薬は影響を及ぼさなかった。また、セルトラリンを100mg/日に増量した患者では、活性成分の定常状態におけるトラフ値が15%上昇し、150mg/日に増量した2例では、それぞれ36%及び52%上昇した。21)
(5) フルボキサミン
統合失調症患者11例にCYP3A4及びCYP2D6阻害作用を有するフルボキサミン(100mg/日反復投与)とリスペリドン(3~6mg/日反復投与)を併用したとき、活性成分の血漿中濃度に併用薬は影響を及ぼさなかった。また、フルボキサミンを200mg/日に増量した患者では、リスペリドンの定常状態におけるトラフ値が86%上昇したが、9-ヒドロキシリスペリドンの血漿中濃度に影響を及ぼさなかった。22)
(6) イトラコナゾール
統合失調症患者19例にCYP3A4阻害作用を有するイトラコナゾール(200mg/日反復投与)とリスペリドン(2~8mg/日反復投与)を併用したときの活性成分の定常状態におけるトラフ値は65%上昇した5)
(7) ベラパミル
健康男性成人12例にP糖蛋白阻害作用を有するベラパミル(240mg反復投与)とリスペリドン(1mg単回投与)を併用したときの活性成分のCmax及びAUC∞はそれぞれ1.3倍及び1.4倍増加した23)
(8) その他
統合失調症患者12例にCYP2D6の基質であるアミトリプチリン(50~100mg/日反復投与)とリスペリドン(6mg/日反復投与)を7日間併用したとき、健康成人18例にCYP3A4阻害作用を有するエリスロマイシン(2000mg/日反復投与)とリスペリドン(1mg単回投与)を併用したとき、双極性障害患者19例にCYP3A4の基質であるトピラマート(100~400mg/日反復投与)とリスペリドン(1~6mg/日反復投与)を39日間併用したとき、健康高齢者16例にCYP2D6及びCYP3A4の基質であるガランタミン(8~24mg/日反復投与)とリスペリドン(1mg/日反復投与)を7日間併用したとき、健康成人24例にCYP2D6及びCYP3A4の基質であるドネペジル(5mg/日反復投与)とリスペリドン(1mg/日反復投与)を14日間併用したとき、それぞれ活性成分の薬物動態に併用薬の影響は認められなかった24),25),26),27),28)
16.7.2 他剤の薬物動態に対するリスペリドンの影響
健康高齢者18例にジゴキシン(0.125mg/日)とリスペリドン(0.5mg/日)を10日間併用したとき、双極I型障害患者10例にバルプロ酸(1000mg/日)とリスペリドン(2~4mg/日)を14日間併用したとき、それぞれの薬剤の薬物動態に併用の影響は認められなかった。精神病患者13例にリチウム(炭酸リチウムとして443~1330mg/日)を反復投与したときのリチウムの薬物動態に、リスペリドン以外の他の抗精神病薬併用からリスペリドン(6mg/日反復投与)併用へ変更しても影響はみられなかった。また、16.7.1での同時検討で、リスペリドンはカルバマゼピン、エリスロマイシン、トピラマート、ガランタミン及びドネペジルの血漿中濃度に影響を及ぼさなかった。19),25),26),27),28),29),30),31)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

〈統合失調症〉
17.1.1 国内臨床試験
国内で実施された二重盲検比較試験を含む総計727例における臨床試験の結果、有効性評価対象症例722例に対する中等度改善以上の改善率は51.5%(372/722例)であった。また、二重盲検比較試験によって統合失調症に対する本剤の有用性が認められている。
安全性評価対象症例723注)例中420例(58.1%)に副作用が認められた。主なものは、アカシジア126例(17.4%)、振戦95例(13.1%)、易刺激性92例(12.7%)、不眠症87例(12.0%)、筋固縮85例(11.8%)、流涎過多81例(11.2%)であった。32),33),34),35),36),37),38),39),40),41)
注)承認用量外の本剤を投与された患者20例を含む。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

行動薬理並びに神経化学的実験の結果より、主としてドパミンD2受容体拮抗作用及びセロトニン5-HT2受容体拮抗作用に基づく、中枢神経系の調節によるものと考えられる43),44)

18.2 薬理作用

18.2.1 抗ドパミン作用
ドパミンD2受容体拮抗作用を有し、ラットでアンフェタミン又はアポモルフィンにより誘発される興奮や常同行動等の行動変化を用量依存的に抑制した。その程度はハロペリドールと同等若しくはやや弱いことが示された。43)
18.2.2 抗セロトニン作用
セロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有し、ラットでトリプタミン及びメスカリンにより誘発される振戦や首振り運動等の行動変化を抑制した43)
18.2.3 カタレプシー惹起作用
ラットでのカタレプシー惹起作用は、ハロペリドールより弱い。また、ラットの中脳-辺縁系(嗅結節)でのドパミンD2受容体に対する結合親和性は、錐体外路症状との関連が深いとされている線条体での親和性より高い。
しかしハロペリドールでは線条体における結合親和性の方が高い。
なお、セロトニン5-HT2受容体拮抗作用が線条体におけるドパミン伝達の遮断を緩和している可能性がある。43),44),45),46)


まず基本的な知識について復習しておきましょう。

■■GPT4o


患者の所見に関する考察

患者の所見

  • 年齢・性別: 76歳女性

  • 生活環境: 夫・息子との3人暮らし

  • 既往歴: 高血圧症、てんかん、統合失調症、不眠症

  • 主訴(家族の訴え):

    • よだれが出る(流涎)

    • 顔の表情が乏しくなる(仮面様顔貌)

    • 歩行の遅延(無動、筋固縮)

  • 医師の所見:
    随意運動には問題なし、副作用の可能性を示唆

処方薬

患者の処方薬から、主訴との関連が考えられる薬剤を検討します。

(1) アジルサルタン(ARB: 降圧薬)

  • 主な作用: 血圧降下作用(AT1受容体遮断)

  • 副作用: 高カリウム血症、低血圧、腎機能障害(まれに)

  • 本件との関連:
    主要な副作用に錐体外路症状(EPS)はなく、関与の可能性は低い

(2) バルプロ酸ナトリウム(抗てんかん薬、気分安定薬)

  • 主な作用: GABA濃度上昇による抗てんかん・気分安定作用

  • 副作用:

    • 錐体外路症状(パーキンソン症候群様症状)(まれ)

    • 肝機能障害、高アンモニア血症

  • 本件との関連: 可能性はあるが、頻度は低い

(3) リスペリドン(抗精神病薬: 非定型抗精神病薬)

  • 主な作用: ドーパミンD₂受容体・セロトニン5-HT₂受容体拮抗作用

  • 副作用:

    • 錐体外路症状(EPS: パーキンソニズム、ジスキネジア、アカシジア)

    • 高プロラクチン血症(乳汁分泌、月経異常)

  • 本件との関連: 最も関与が疑われる(EPSに一致)

(4) ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬: 睡眠薬)

  • 主な作用: メラトニン受容体(MT1/MT2)刺激による概日リズム調整

  • 副作用: 傾眠、めまい

  • 本件との関連: 錐体外路症状は報告がなく、可能性は低い

(5) レンボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬: 睡眠薬)

  • 主な作用: オレキシン受容体拮抗による覚醒抑制

  • 副作用: 傾眠、ふらつき

  • 本件との関連: EPSの報告はなく、可能性は低い

検査値(腎機能)

  • eGFR(腎機能指標)

    • 7月4日: 56 mL/min/1.73m²(ほぼ正常)

    • 8月1日: 32 mL/min/1.73m²(中等度腎機能低下)

    • 1か月で急激に低下している → 腎機能悪化の要因を検討する必要あり

    • リスペリドン、バルプロ酸は腎排泄ではなく主に肝代謝だが、代謝物の影響を考慮する必要あり

副作用

  • リスペリドンのEPS発現メカニズム

    • 黒質-線条体経路のD₂受容体遮断によりドーパミン機能が低下

    • その結果、パーキンソン様症状(無動、筋固縮、流涎、仮面様顔貌)が出現

  • 腎機能低下による影響

    • リスペリドンは肝代謝だが、活性代謝物(9-ヒドロキシリスペリドン)は腎排泄

    • 腎機能低下により活性代謝物が蓄積し、副作用が増強した可能性がある

結論

  • 患者の症状(流涎、仮面様顔貌、歩行遅延)は、リスペリドンのEPSによるものと考えられる

  • eGFR低下により活性代謝物が蓄積し、副作用が強く現れた可能性がある

  • リスペリドンの減量・中止、抗コリン薬(トリヘキシフェニジル等)の追加を検討すべき


文献リスト

  1. 日本神経学会. パーキンソン病診療ガイドライン 2018. 医学書院.

  2. 日本腎臓学会. CKD診療ガイドライン 2019. 東京: 日本腎臓学会.

  3. De Hert M, et al. "Second-generation antipsychotics and extrapyramidal side effects: a systematic review." Schizophrenia Research, 2008.

  4. Kane JM, et al. "Extrapyramidal side effects with risperidone in schizophrenia." J Clin Psychopharmacol, 1998.

  5. Sweetman SC, et al. Martindale: The Complete Drug Reference. Pharmaceutical Press, 2022.


論点およびポイント

■■GPT4o


問 109-218|実務
論点| 抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム
ポイント|

  • 患者はリスペリドン(抗精神病薬)を服用しており、副作用として錐体外路症状(EPS)が発現する可能性がある。

  • EPSにはパーキンソニズム、ジスキネジア、アカシジア、ジストニアが含まれるが、今回の症例ではパーキンソニズム(無表情・流涎・歩行障害など)が該当する。

  • パーキンソニズムは黒質-線条体経路のドーパミンD₂受容体遮断により発生する。

  • リスペリドンはD₂受容体遮断作用を持ち、特に用量依存的にEPSリスクが増加する。

  • その他の薬剤(アジルサルタン、バルプロ酸ナトリウム、ラメルテオン、レンボレキサント)はパーキンソニズム発現の可能性が低い。

  • 高齢者では抗精神病薬によるEPS発現リスクが高く、腎機能低下によりリスペリドンの代謝・排泄が遅延し、副作用が増強する可能性がある。


問 109-219|生物
論点| 大脳基底核 / ドーパミンD₂受容体 / 錐体外路症状
ポイント|

  • 錐体外路症状(EPS)は大脳基底核(特に黒質-線条体経路)のドーパミンD₂受容体遮断により発生する。

  • 大脳基底核は運動調節に関与し、パーキンソニズム症状(無表情・流涎・歩行障害など)が特徴的に現れる。

  • ドーパミンD₂受容体が遮断されると、線条体での抑制系(間接経路)が過活動し、運動抑制が強まる。

  • 大脳皮質運動野は随意運動に関与する。

  • 大脳辺縁系は情動や記憶に関与する。

  • 視床下部は自律神経調節に関与する。

  • 皮質脊髄路は随意運動を司る経路である。


薬剤師国家試験 出題基準

出典: 薬剤師国家試験のページ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

出題基準 000573951.pdf (mhlw.go.jp) 


論点を整理します。

■■GPT4o


総合的な論点


実務(問109-218)

この問題では、患者の症状(よだれ、無表情、歩行障害)の原因となる薬剤を特定することが求められています。
該当する副作用は錐体外路症状(EPS, extrapyramidal symptoms)であり、特に抗精神病薬によるパーキンソニズムを疑う必要があります。

  • 錐体外路症状(EPS)の特徴

    • パーキンソニズム(振戦、筋強剛、無動、姿勢異常)

    • アカシジア(静座不能)

    • ジスキネジア(不随意運動)

    • ジストニア(異常姿勢・筋緊張亢進)

  • リスペリドンと錐体外路症状(EPS)
    リスペリドンは第二世代抗精神病薬(SGA: Second-Generation Antipsychotics)に分類されます。
    第一世代抗精神病薬(FGA: First-Generation Antipsychotics)に近い強いドパミンD₂受容体遮断作用を持つため、錐体外路症状のリスクが比較的高いとされています。
    特に高齢者では感受性が高いため、少量でも副作用が出やすい傾向にあります。

生物(問109-219)

この問題では、リスペリドンによる錐体外路症状が、脳のどの部位の機能障害によるものかを特定することが求められています。

  • 錐体外路系の役割
    錐体外路系(extrapyramidal system)は、運動の調節に関与する神経経路であり、主に大脳基底核(basal ganglia)が中心的な役割を担っています。

  • 大脳基底核とパーキンソニズム
    大脳基底核は、以下の主要な構造から成り立っています。

    • 線条体(ストリウム)
      線条体は大脳皮質と黒質を結ぶ重要な中継点で、運動制御を行う。

    • 黒質(サブスタンシア・ニグラ)
      ドーパミンを産生し、線条体に投射することで運動の円滑な調節を行う。

    • 視床下核・淡蒼球
      運動抑制と促進のバランスを調整する。

結論

  • 実務(問109-218):
    リスペリドンが最も原因薬剤として可能性が高い(抗精神病薬によるパーキンソニズム)。

  • 生物(問109-219):
    大脳基底核の障害が最も関連性が高い(黒質-線条体経路のドーパミン遮断による運動障害)。


各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法


問109-218(実務):
副作用の原因薬物

選択肢 1. アジルサルタン

  • 論点

    • アジルサルタン:
      ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)であり、高血圧治療薬。

    • 主な副作用:
      低血圧、電解質異常(高カリウム血症)、腎機能低下など。

    • 錐体外路症状(EPS)を引き起こす作用はない。

  • アプローチ方法

    • 主要な副作用と患者の症状を比較し、一致しないため除外。


選択肢 2. バルプロ酸ナトリウム

  • 論点

    • バルプロ酸:
      抗てんかん薬・気分安定薬
      GABA作動性を強化する作用を持つ。

    • 振戦、傾眠、運動失調などを引き起こす可能性があるが、錐体外路症状(EPS)は少ない。

    • 高アンモニア血症により無気力・意識障害を引き起こすことがあるが、今回の症状とは異なる。

  • アプローチ方法

    • 主要な副作用と患者の症状を比較し、可能性はあるがリスペリドンよりも低いため除外。


選択肢 3. リスペリドン

  • 論点

    • 抗精神病薬による錐体外路症状(EPS)を引き起こすリスクが高い。

    • 高齢者では特にパーキンソニズムが発生しやすい。

    • 黒質-線条体経路のドーパミンD₂受容体を遮断し、運動障害を引き起こす。

  • アプローチ方法

    • 患者の症状(無表情、歩行障害、流涎)とEPSの症状が一致。

    • 高齢者であることから、感受性が高く副作用が発生しやすいと考えられるため、最も可能性が高いと判断。


選択肢 4. ラメルテオン

  • 論点

    • ラメルテオンはメラトニン受容体作動薬で、概日リズム調整による睡眠改善を目的とする。

    • 主な副作用は眠気、めまい、倦怠感などであり、運動障害や錐体外路症状(EPS)を引き起こす作用はない。

  • アプローチ方法

    • 主要な副作用と患者の症状を比較し、一致しないため除外。


選択肢 5. レンボレキサント

  • 論点

    • レンボレキサントはオレキシン受容体拮抗薬であり、不眠症治療薬。

    • 主な副作用は傾眠、ふらつき、転倒リスクの増加。

    • オレキシン系は覚醒に関与する。

    • 錐体外路症状(EPS)とは無関係。

  • アプローチ方法

    • 主要な副作用と患者の症状を比較し、一致しないため除外。


各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法


問109-219(生物):
大脳のどの部位が関与するか

選択肢 1. 大脳皮質運動野の障害

  • 論点

    • 運動野は随意運動の開始を担う領域。

    • 錐体外路系ではなく、直接的な関与はない。

  • アプローチ方法

    • 患者の症状は運動野の障害による「随意運動の麻痺」ではなく、運動調節障害であるため除外。


選択肢 2. 大脳辺縁系の障害

  • 論点

    • 大脳辺縁系は情動や記憶に関与し、運動調節には直接関与しない。

  • アプローチ方法

    • 患者の症状(錐体外路症状)は大脳辺縁系の障害とは関連が薄いため除外。


選択肢 3. 大脳基底核の障害

  • 論点

    • 大脳基底核は運動調節に関与し、黒質-線条体経路のドーパミン伝達が錐体外路症状(EPS)の発症に関係する。

    • リスペリドンによるドーパミンD₂受容体遮断作用がこの経路に影響を及ぼし、パーキンソニズムを発症。

  • アプローチ方法

    • 錐体外路症状が大脳基底核の障害によるものであることを考慮し、最も妥当な選択肢と判断。


選択肢 4. 視床下部の障害

  • 論点

    • 視床下部は自律神経やホルモン分泌の調節を担うが、運動制御には直接関与しない。

  • アプローチ方法

    • 錐体外路症状とは関連が薄いため除外。


選択肢 5. 皮質脊髄路の障害

  • 論点

    • 皮質脊髄路(錐体路)は随意運動の伝達を担い、障害されると麻痺や筋萎縮が発生。

    • 錐体外路症状(無動、筋強剛)とは機序が異なる。

  • アプローチ方法

    • 運動調節の異常ではなく、随意運動の異常が生じるため除外。


結論

  • 問109-218(実務):リスペリドンが原因薬剤(選択肢3)

  • 問109-219(生物):大脳基底核の障害が最も関連(選択肢3)


引用文献

  1. Dorph-Petersen KA, Pierri JN, Perel JM, Sun Z, Sampson AR, Lewis DA. (2005). "The Influence of Chronic Exposure to Antipsychotic Medications on Brain Size Before and After Tissue Fixation: A Controlled Study of Macaque Monkeys." Neuropsychopharmacology, 30(9), 1649–1661.

    • リスペリドンを含む抗精神病薬が大脳基底核に与える影響を検討した研究。

  2. Miyamoto S, Duncan GE, Marx CE, Lieberman JA. (2005). "Treatments for schizophrenia: A critical review of pharmacology and mechanisms of action of antipsychotic drugs." Mol Psychiatry, 10(1), 79–104.

    • 抗精神病薬の作用機序と錐体外路症状(EPS)の発生機序を詳細に論じたレビュー論文。

  3. Simpson GM, Angus JW. (1970). "A rating scale for extrapyramidal side effects." Acta Psychiatr Scand Suppl, 212, 11-19.

    • 抗精神病薬による錐体外路症状(EPS)の評価スケールを開発した論文。

  4. Jankovic J. (2008). "Parkinson’s disease: clinical features and diagnosis." J Neurol Neurosurg Psychiatry, 79(4), 368-376.

    • パーキンソニズムの診断と症状についての総説。抗精神病薬による二次性パーキンソニズムの特徴についても記載。

  5. Blin O, Azulay JP, Masson G, Rascol O, Serratrice G, Nieoullon A. (1991). "Apomorphine-induced motor effects in healthy subjects: evidence for dopamine D1 receptor stimulation and antagonism by haloperidol." Neurology, 41(10), 1573-1576.

    • 黒質-線条体経路のドーパミンD₂受容体遮断による運動障害の発生機序を示唆した研究。

  6. Katzung BG, Trevor AJ. (2021). Basic and Clinical Pharmacology. 15th Edition. McGraw-Hill Education.

    • 抗精神病薬の薬理学的作用と錐体外路症状(EPS)の発生メカニズムについて詳細に説明。

  7. 日本神経学会 編. (2021). パーキンソン病診療ガイドライン2021.

    • パーキンソニズムの診断基準および薬剤性パーキンソニズムの記述あり。


以上で、論点整理を終わります。
理解できたでしょうか?


大丈夫です。
完全攻略を目指せ!


はじめましょう。

薬剤師国家試験の薬学実践問題【複合問題】から抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパミンD₂受容体を論点とした問題です。


なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形で GPT4o & Copilot 、Gemini 2、または Grok 2 が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。

生成AIの製造元がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。

Here we go.


第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問218-219

一般問題(薬学実践問題)


【物理・化学・生物、衛生/実務】

■複合問題|問 109-218-219

Q. 76歳女性。夫と息子との3人暮らし。高血圧症、てんかん、統合失調症及び不眠症の治療を行っている。処方1~3は、以下の時系列記録の1年前から継続している。
(処方1)
アジルサルタン錠40mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|朝食後|28日分|
(処方2)
バルプロ酸Na徐放錠100mg 1回1錠(1日2錠)|
リスペリドン口腔内崩壊錠1mg 1回1錠(1日2錠)|
1日2回|朝夕食後|28日分|
(処方3)
ラメルテオン錠8mg|1回1錠(1日1錠)|
レンボレキサント錠2.5mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|就寝前|28日分|
7月4日(かかりつけ医受診後来局):
処方1~3継続、eGFR56mL/min/1.73m2
8月1日(かかりつけ医受診後来局):
処方1~3継続、eGFR32mL/min/1.73m2
家族「腎臓の精密検査のために、かかりつけの先生が、大学病院の腎臓内科の外来受診を予約してくれました。8月8日に本人を連れていきます。」
8月4日(家族から薬局へ電話相談、及び薬剤師から医師への確認):
家族「前回受診時にかかりつけの先生に伝え忘れましたが、よだれが出るようになったり、顔の表情が無くなったり、歩行が遅くなったりすることが7月中旬ぐらいから目立ってきました。」
かかりつけ医師「随意運動は問題ありませんでした。薬の副作用ですね。」


実務

問 109-218|実務
Q. 8月4日に医師から指摘のあった副作用の原因薬物として、可能性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. アジルサルタン
2. バルプロ酸ナトリウム
3. リスペリドン
4. ラメルテオン
5. レンボレキサント


Here:

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパ|matsunoya


物理・化学・生物

問 109-219|生物
Q. この副作用と同じ症状が現れる可能性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 大脳皮質運動野の障害
2. 大脳辺縁系の障害
3. 大脳基底核の障害
4. 視床下部の障害
5. 皮質脊髄路の障害


Here:

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:抗精神病薬 / リスペリドン / 錐体外路症状 / パーキンソニズム / 大脳基底核 / ドーパ|matsunoya


■■GPT4o


■問 109-218|実務

■論点|

この問題の論点は、抗精神病薬の副作用としての錐体外路症状(EPS)を特定することです。

■解説1|

リスペリドン(選択肢3)[正しい]

  • リスペリドンは抗精神病薬(第二世代、非定型)であり、ドーパミンD₂受容体遮断作用を持つ。

    • 抗精神病薬の中でも比較的D₂受容体遮断作用が強く、錐体外路症状(EPS)が発現しやすい。

  • 本症例の患者は、以下の錐体外路症状を示している。

    • 流涎(唾液分泌の増加)

    • 無表情(仮面様顔貌)

    • 歩行速度の低下(小刻み歩行)

    • これらの症状はパーキンソニズム(薬剤性パーキンソニズム)の典型的な症状である。

  • 高齢者では、抗精神病薬によるEPS発現リスクが特に高い。

    • 加齢によりドーパミン神経の脆弱性が増し、副作用が顕著に表れる。

    • 腎機能低下(eGFRの低下)により、リスペリドンの代謝産物である9-ヒドロキシリスペリドンが蓄積し、副作用が増強する可能性がある。

■解説2|

  • 錐体外路症状(EPS)とは?

    • 抗精神病薬が黒質-線条体経路のD₂受容体を遮断することで生じる運動障害。

    • 主な症状として、アカシジア(静座不能)、ジストニア(異常姿勢)、パーキンソニズム(無動・筋強剛・振戦)、遅発性ジスキネジア(口や手足の不随意運動)などがある。

  • パーキンソニズムとドーパミン遮断の関係

    • リスペリドンがD₂受容体を遮断すると、ドーパミンの抑制作用が弱まり、アセチルコリンの相対的優位が生じる。

    • これにより、パーキンソン病様の症状(無動、筋固縮、振戦など)が発生する。

    • 典型的なパーキンソン病との違いは、薬剤を中止すると症状が改善する点である。

  • リスペリドンの代謝と腎機能

    • リスペリドンは肝代謝(CYP2D6)を受けるが、代謝産物(9-ヒドロキシリスペリドン)は腎排泄される。

    • eGFRが低下すると、代謝産物の蓄積により作用が増強し、副作用リスクが高まる。

    • 本症例では、eGFRが56→32 mL/min/1.73m²に低下しており、副作用が顕著に現れるリスクがあったと考えられる。

■結論|

  • 医師が「薬の副作用」と判断したことから、リスペリドンの錐体外路症状(パーキンソニズム)が原因である可能性が最も高い。

  • 特に高齢者ではEPSリスクが高いため、減量または他の非定型抗精神病薬(クエチアピンやクロザピンなど)への変更が検討されるべきである。

■補足|

アジルサルタン(選択肢1)[誤り]

  • アジルサルタン(ARB)は降圧薬であり、錐体外路症状との関連はない。

バルプロ酸ナトリウム(選択肢2)[誤り]

  • バルプロ酸は抗てんかん薬・気分安定薬であり、主な副作用は眠気、肝機能障害、高アンモニア血症など。

  • 稀に振戦(手の震え)を引き起こすことはあるが、本症例の症状とは一致しない。

ラメルテオン(選択肢4)[誤り]

  • メラトニン受容体作動薬であり、主な副作用は傾眠やめまいであり、EPSを引き起こすことはない。

レンボレキサント(選択肢5)[誤り]

  • オレキシン受容体拮抗薬であり、主な副作用は傾眠、異常行動、夢遊病など。

  • EPSとの関連性は低い。


■問 109-219|生物

■論点|

この問題の論点は、錐体外路症状(EPS)の発現機序と関与する脳部位を特定することです。

■解説1|

大脳基底核の障害(選択肢3)[正しい]

  • 大脳基底核は運動の調節を担う中枢であり、特に黒質-線条体経路はドーパミン神経の影響を強く受ける。

  • リスペリドンなどの抗精神病薬は、大脳基底核の線条体においてドーパミンD₂受容体を遮断することで、パーキンソニズム様の錐体外路症状(EPS)を引き起こす。

  • 主な症状

    • 振戦(手足のふるえ)

    • 筋固縮(筋肉のこわばり)

    • 無動(動作の遅延・減少)

    • 姿勢反射障害(バランスの崩れ)

    • 流涎(唾液分泌過多)、仮面様顔貌(表情の乏しさ)

■解説2|

  • 大脳基底核の主な構造と機能

    • 線条体(被殻+尾状核):運動の開始・調節

    • 淡蒼球:運動の抑制・調節

    • 視床下部、視床、黒質:大脳皮質との情報伝達

  • 黒質-線条体経路(錐体外路系)とドーパミン

    • 黒質(中脳)から線条体へドーパミンを分泌し、運動を円滑に調整する。

    • ドーパミンD₂受容体を遮断すると、線条体の神経活動が過剰に抑制され、パーキンソニズム様症状が発現する。

■結論|

  • 抗精神病薬による錐体外路症状(EPS)は、大脳基底核の障害によるものであり、最も関与するのは黒質-線条体経路である。

  • このため、EPSと関連が深い部位として「大脳基底核」を選択するのが適切である。

■補足|

大脳皮質運動野の障害(選択肢1)[誤り]

  • 大脳皮質運動野は随意運動の指令を出すが、運動調節は大脳基底核と小脳が担う。

  • 障害されると運動麻痺や失行が生じるが、錐体外路症状(EPS)とは異なる。

大脳辺縁系の障害(選択肢2)[誤り]

  • 大脳辺縁系は情動や記憶に関与し、運動調節とは関係が薄い。

視床下部の障害(選択肢4)[誤り]

  • 視床下部は自律神経やホルモン調節に関与するが、運動障害は主な症状ではない。

皮質脊髄路の障害(選択肢5)[誤り]

  • 皮質脊髄路(錐体路)は随意運動の伝導路であり、障害されると痙性麻痺などが生じるが、錐体外路症状とは異なる。


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第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問218-219

一般問題(薬学実践問題)


【物理・化学・生物、衛生/実務】

■複合問題|問 109-218-219

Q. 76歳女性。夫と息子との3人暮らし。高血圧症、てんかん、統合失調症及び不眠症の治療を行っている。処方1~3は、以下の時系列記録の1年前から継続している。
(処方1)
アジルサルタン錠40mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|朝食後|28日分|
(処方2)
バルプロ酸Na徐放錠100mg 1回1錠(1日2錠)|
リスペリドン口腔内崩壊錠1mg 1回1錠(1日2錠)|
1日2回|朝夕食後|28日分|
(処方3)
ラメルテオン錠8mg|1回1錠(1日1錠)|
レンボレキサント錠2.5mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|就寝前|28日分|
7月4日(かかりつけ医受診後来局):
処方1~3継続、eGFR56mL/min/1.73m2
8月1日(かかりつけ医受診後来局):
処方1~3継続、eGFR32mL/min/1.73m2
家族「腎臓の精密検査のために、かかりつけの先生が、大学病院の腎臓内科の外来受診を予約してくれました。8月8日に本人を連れていきます。」
8月4日(家族から薬局へ電話相談、及び薬剤師から医師への確認):
家族「前回受診時にかかりつけの先生に伝え忘れましたが、よだれが出るようになったり、顔の表情が無くなったり、歩行が遅くなったりすることが7月中旬ぐらいから目立ってきました。」
かかりつけ医師「随意運動は問題ありませんでした。薬の副作用ですね。」


実務

問 109-218|実務
Q. 8月4日に医師から指摘のあった副作用の原因薬物として、可能性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. アジルサルタン
2. バルプロ酸ナトリウム
3. リスペリドン
4. ラメルテオン
5. レンボレキサント


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物理・化学・生物

問 109-219|生物
Q. この副作用と同じ症状が現れる可能性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 大脳皮質運動野の障害
2. 大脳辺縁系の障害
3. 大脳基底核の障害
4. 視床下部の障害
5. 皮質脊髄路の障害


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