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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-220-221【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:BNP / NT-proBNP / ネプリライシン / 心不全 / サクビトリルバルサルタン / 高カリウム血症 / 利尿作用
第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問220-221
一般問題(薬学実践問題)
【物理・化学・生物、衛生/実務】
■複合問題|問 109-220-221
Q. 89歳女性。体重40kg。高血圧症及び慢性心不全に対して処方1で薬物治療を行っている。独居で入院拒否があるため、医師と薬剤師、看護師が訪問している。最近、下腿浮腫が出現し、労作時の息苦しさや疲労感が強くなってきたため、血液検査を実施したところ、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)値が3ケ月前の450 pg/mLから下記の検査値になっていた。
(処方1)
エナラプリルマレイン酸塩錠5mg|1回1錠(1日1錠)|
ビソプロロールフマル酸塩錠0.625mg|1回1錠(1日1錠)|
アゾセミド錠60mg|1回1錠(1日1錠)|
スピロノラクトン錠50mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|朝食後|14日分
(検査値)
Na 141 mEq/L、K 4.8 mEq/L、eGFR 54 mL/min/1.73m2、
NT-proBNP 1,180pg/mL
※ なお、NT-proBNP値 900pg/mL以上は治療対象となる心不全の可能性が高い。
その後、訪問医は継続中だった処方1のうち、エナラプリルのみを中止して、新たに処方2を追加した。
(処方2)
サクビトリルバルサルタンNa水和物錠50mg 1回1錠(1日2錠)|
1日2回|朝夕食後|7日分|
物理・化学・生物
問 109-220|生物
Q. 下図は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の生成と代謝の過程を示している。BNPは、mRNAからBNP前駆体タンパク質として翻訳された後、切断されて血中に分泌される。サクビトリルが阻害する酵素ネプリライシンの作用部位は、切断1~3のいずれかである。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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■選択肢
1. BNPとNT-proBNPは、主に心室から分泌される。
2. NT-proBNPは、図のペプチドAである。
3. BNPは、NT-proBNPよりも血液中での安定性が高い。
4. ネプリライシンの作用部位は、切断3である。
5. NT-proBNPは、BNPと同様に腎臓に作用してNa+の尿中への排出を促進する。
Here:
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実務
問 109-221|実務
Q. 処方2の薬剤の服用によって生じる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
■選択肢
1. 血中TSH値の上昇
2. 高カリウム血症
3. 血圧上昇
4. 血中NT-proBNP値の上昇
5. 脱水症状
Here:
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こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。
matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、【物理・化学・生物、衛生/実務】 の複合問題を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 / 問220-221、論点:BNP / NT-proBNP / ネプリライシン / 心不全 / サクビトリルバルサルタン / 高カリウム血症 / 利尿作用を徹底解説します。
薬剤師国家試験対策ノート NOTE ver.
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-220-221【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:BNP / NT-proBNP / ネプリライシン / 心不全 / サクビトリルバルサルタン / 高カリウム血症 / 利尿作用|matsunoya
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このコンテンツの制作者|
滝沢 幸穂 Yukiho Takizawa, PhD
https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa
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設問へのアプローチ|
薬学実践問題は原本で解いてみることをおすすめします。
まずは、複合問題や実務の問題の構成に慣れることが必要だからです。
薬学実践問題は薬剤師国家試験2日目の①、②、③ の3部構成です。
今回の論点解説では2日目の①を取り上げています。
厚生労働省|過去の試験問題👇
第109回(令和6年2月17日、2月18日実施)
第108回(令和5年2月18日、2月19日実施)
第107回(令和4年2月19日、2月20日実施)
第106回(令和3年2月20日、2月21日実施)
第109回薬剤師国家試験 問220-221(問109-220-221)では、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)に関する知識を生物および実務のそれぞれの科目の視点から複合問題として問われました。
複合問題は、各問題に共通の冒頭文とそれぞれの科目別の連問で構成されます。
冒頭文は、問題によっては必要がない情報の場合もあるため、最初に読まずに、連問すべてと選択肢に目を通してから、必要に応じて情報を取得するために読むようにすると、時間のロスが防げます。
1問、2分30秒で解答できればよいので、いつも通り落ち着いて一問ずつ別々に解けば大丈夫です。
出題範囲は、それぞれの科目別の出題範囲に準じています。
連問と言ってもめったに連動した問題は出ないので、平常心で取り組んでください。
💡ワンポイント
複合問題ですが、問109-220-221を解くうえで必要な情報は、黄色い線で示した部分です。
それ以外の情報取得は必要がないです。読んでいると時間のロスに繋がります。
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問109-220および問109-221は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)に関する記述の正誤を問う問題です。
心不全の病態におけるBNPの生成過程の理解が必要です。
問109-221は、サクビトリルバルサルタンに関する記述の正誤を問う問題です。
医療用医薬品添付文書の理解が必要です。
冒頭文で必要な情報は、
検査結果(NT-proBNP値 900pg/mL以上)
疾患(心不全)
治療薬(サクビトリルバルサルタン)
です。
それにしても、ひどい品質の問題設計です。😱
今回の問題の文字数を数えてみましたが選択肢も含め796文字ありました。
冒頭文だけで410文字あります。
しかも、問題を解くうえで必要な情報はサクビトリルバルサルタン(12文字)だけです。
文字数制限をガイドラインとして明記しなければ、この「嫌がらせ」👽のような不要な文字の増量傾向は止まらない可能性が高いと推察されます。
今回の問題で論点とされた慢性心不全の治療薬(サクビトリルバルサルタン)は、日本では2020 年 6 月に「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」を効能又は効果として製造販売承認を取得した比較的新しい薬です。さらに2021年9月に「高血圧症」として効能追加が承認されました。
2024年2月に実施された第109回薬剤師国家試験で、2021年9月に最終承認された新薬が出題されることの妥当性は、厳に審査される必要があります。
もしくは、それ以前に問題設計に際してのガイドラインで、原則として「例:再審査が終了していない医薬品」「例:日本薬局方に収載されていない医薬品」の出題を禁止することを明記する必要があります。
少なくとも、出題される医薬品の条件について、薬剤師としての資質を検出しうるような方向性を持った優先順位を明記しておくことで、ガバナンスの実効性は向上します。
また、冒頭文に処方1として、問題の論点と関連性の低い医薬品を4つ並べて無駄に紙面の文字数を増量していますが、この「目くらまし」のような検出力の落とし方に対しては、レビュワーが責任者に差し戻して、指導と修正の指示を出すプロセスが必要です。
もしくは、問題の論点と関連性の低い医薬品の記述をガイドラインで原則禁止する必要があります。
利益相反関係から、かぎりなくゼロ点合格を目指すベクトル👽をもつ問題設計がなされる国家試験の作成の体制が排除できないのであれば、性悪説にのっとった品質マネージメントの導入は必須です。
国家資格の意味が薄れることが、社会の安定にどれほど負荷をかけるか、アナーキズムへの傾倒を憂慮するべきではないでしょうか。
時間にゆとりがない人は、論点およびポイントから読んでくださいね。
上記の太字を選択して Ctrl + F でジャンプできます。
🫛豆知識 医療用医薬品添付文書等
医療用医薬品添付文書等を一読しておくと応用力がつきます。
PMDA 医療用医薬品添付文書等 サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
製造販売(輸入)/ノバルティスファーマ株式会社
提携/大塚製薬株式会社 エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg/エンレスト粒状錠小児用12.5mg/エンレスト粒状錠小児用31.25mg
インタビューフォーム F1_エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg/エンレスト粒状錠小児用12.5mg/エンレスト粒状錠小児用31.25mg
患者向医薬品ガイド G_エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg/エンレスト粒状錠小児用12.5mg/エンレスト粒状錠小児用31.25mg
以下、インタビューフォームから抜粋します。
Ⅰ-1. 開発の経緯
エンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)は、 Novartis 社(スイス)が創製した「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)」に分類される薬剤であり、1 剤でネプリライシン (NEP)阻害作用とアンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体拮抗作用の 2つの薬理作用を発揮する。
サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及 びバルサルタンに解離して、それぞれ NEP 及び AT1受容体を阻害する。
NEP はナトリウム利尿ペプチドを分解する酵素として知られているが、サクビトリルの代謝物であるsacubitrilat が NEPを阻害することにより、生理活性を有するナトリウム利尿ペプチドの循環血中濃度が上昇し、ナトリウム排泄作用、利尿作用、抗肥大作用、抗線維化作用、及び血管拡張作用 などの多面的な作用を示す。
また、バルサルタンは AT1受容体を阻害し、 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす。
心不全はすべての心疾患の終末的な病態で、慢性・進行性に経過して死に至る、難治性・致死性の疾患である。
心不全患者の生命予後は不良で、致死的不整脈、突然死の頻度も高いとされている。また、呼吸困難・倦怠感 や浮腫等の症状の出現により、生活の質(QOL)の低下が生じ、生活が著 しく障害される疾患でもある。
心不全の患者数は生活習慣病の増加を背景とした虚血性心疾患の増加とその急性期治療成績の向上、及び高齢化を主な理由として近年急速に増加しており、今後も増加が続くことが懸念され、医療資源及び医療財政上の大 きな負担となっている。
心不全患者の死亡率、入院率は依然として高く、 生命予後改善、入院の負担が軽減でき、かつ忍容性に優れた新規作用機序 を有する心不全治療薬が望まれてきた。
エンレストは前述の多面的な作用が期待されることから、「慢性心不全」 を目標適応症として臨床開発に着手した。
海外では左室駆出率の低下した 心不全(HFrEF)患者を対象とし、標準治療のひとつであるエナラプリル を対照薬とした海外第Ⅲ相臨床試験(PARADIGM-HF、B2314試験)にお いて有効性・安全性が示され、2015年7月に最初に米国で承認された。国内においても、本剤の臨床試験(PARALLEL-HF、B1301 試験)を実施 し、有効性・安全性を検討したうえで、2019 年 7 月に承認申請を行い、 2020 年 6 月に「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」を効能又は効果として製造販売承認を取得した。
エンレストはその作用機序から、小児慢性心不全にも有効性が期待できる と考え、開発に着手した。左室収縮機能障害(LVSD)による小児慢性心不 全患者を対象に臨床試験(PANORAMA-HF、B2319 試験)を実施し、有 効性・安全性を確認したうえで小児の用法及び用量を追加する承認事項一 部変更承認申請を行い、2024年2月に承認された。
成人の患者には錠剤を使用する一方で、小児用の製剤として粒状錠を開発 し、欧州で2023年5月に承認され、国内においては2024年3月に製造販売承認を取得した。
一方、高血圧治療ではいまだ降圧目標達成率が十分ではないという問題があり、NEPとRAASを同時に阻害することによる降圧効果、さらには前述の多面的な作用から、「高血圧症」の臨床開発を行い、海外では2021年3 月にロシアで初めて承認された。
国内においては、本剤の臨床試験 A1306 試験を実施し、有効性・安全性を確認したうえで、2020 年 11 月に承認申請を行い、2021年9月に「高血圧症」として効能追加が承認された。
Ⅱ-2. 一般名
(1)和名(命名法) サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(JAN)
(2)洋名(命名法)
Sacubitril Valsartan Sodium Hydrate(JAN)
(3)ステム
endopeptidase inhibitors:-tril
angiotensin II receptor antagonists:-sartan
Ⅱ-3. 構造式又は 示性式
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F1_エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg/エンレスト粒状錠小児用12.5mg/エンレスト粒状錠小児用31.25mg
Ⅶ-6. 代謝
(1)代謝部位及び代謝経路
健康成人男子4例にサクビトリル部位に14C標識したサクビトリルバルサルタ ン 200mg を空腹時単回経口投与したとき、エステラーゼにより加水分解を受 け、活性代謝物であるsacubitrilatが主に生成した(外国人データ)43, 46)。
なお、健康成人男子6例に14C標識したバルサルタン80mgを空腹時単回経口 投与したとき、投与8時間後の血漿中には、主として未変化体が存在し、その 他に代謝物として 4-ヒドロキシ体が認められた(外国人データ)43, 55)。In vitro の試験において主にヒトチトクローム P450(CYP)2C9 の関与が示唆 されている(in vitro、外国人データ)43, 56)。
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(4)代謝物の活性の有無及び活性比、存在比率
サクビトリルバルサルタンは、投与後速やかに溶解し、サクビトリル及びバル サルタンに解離する。サクビトリルはプロドラッグであり、エステラーゼによ り加水分解され、NEP に対して強力かつ選択的な阻害作用を有する sacubitrilat に変換される。また、バルサルタンは AT1受容体拮抗作用を有す る。したがって、サクビトリルバルサルタンはNEP阻害作用によりNPの濃 度を上昇させる(NP系亢進)とともに、AT1受容体拮抗作用によりRAASを 抑制する。サクビトリルバルサルタンはアンジオテンシン受容体 NEP 阻害薬 として、NP の作用を亢進させるだけでなく、RAAS を抑制することにより、 これらの単一の作用に比べてより優れた心血管系及び腎臓に対する保護作用を 持つことが示された(「Ⅵ-2. 薬理作用」の項参照)。
Ⅶ-10. 特定の背景を有する患者
1)腎機能障害の影響
①軽度又は中等度の腎機能障害患者での薬物動態(外国人データ)43, 62)
軽度又は中等度の腎機能障害患者(Ccrにより、軽度:≧50mL/min~≦ 80mL/min、中等度:≧30mL/min~<50mL/minに分類)16例にサクビトリ ルバルサルタン400mg注)を反復経口投与したとき、定常状態において sacubitrilatのCmax及びAUCは健康成人のそれぞれ約1.5~1.6倍及び約2.1 ~2.2倍であった。バルサルタンのCmaxは健康成人とほぼ同程度であったが、 AUCは健康成人の約1.0~1.4倍であった。
VII-2. 薬理作用
(1)作用部位・作用機序
サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及びバルサルタンに解離して、そ れぞれネプリライシン(NEP)及びアンジオテンシンⅡタイプ 1(AT1)受容体 を阻害する。
サクビトリルは、エステラーゼにより NEP 阻害の活性体である sacubitrilatに速やかに変換される。
NEP阻害は、血管拡張作用、利尿作用、レ ニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)抑制作用、交感神経抑制作用、心肥大抑制作用、抗線維化作用、及びアルドステロン分泌抑制作用を有するナトリウム利尿ペプチド(NP)の作用亢進に寄与する。
バルサルタンの AT1受容体拮抗作用は、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心 血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす。
まず基本的な知識について復習しておきましょう。
■■GPT4o
慢性心不全の病態と薬物治療
1. 慢性心不全の病態
慢性心不全(CHF: Chronic Heart Failure)は、心臓のポンプ機能が低下し、全身の組織・臓器への血液供給が不十分となる進行性の疾患である。心不全は収縮不全(HFrEF: Heart Failure with Reduced Ejection Fraction)と拡張不全(HFpEF: Heart Failure with Preserved Ejection Fraction)に大別される。
主要な病態生理
心拍出量(CO)の低下:左心室の収縮機能または拡張機能の障害により、適切な血液循環が維持できない。
交感神経系の過剰活性化:心拍数や心筋収縮力の増大を引き起こし、長期的には心筋リモデリングを悪化させる。
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の活性化:血管収縮やナトリウム貯留を引き起こし、後負荷を増大させる。
ナトリウム利尿ペプチド(BNP、ANP)系の活性化:利尿作用や血管拡張作用により、体液量の調節を試みるが、慢性期では不十分となる。
炎症・酸化ストレス:慢性的な心筋ストレスにより炎症性サイトカインが増加し、心筋の線維化やリモデリングが進行する。
2. 慢性心不全の薬物治療
慢性心不全の治療目標は、症状の改善、疾患の進行抑制、生命予後の改善である。主要な薬剤とその作用機序を以下に示す。
(1) 収縮不全型心不全(HFrEF)の標準治療
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 / アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) / アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)
例:エナラプリル(ACE阻害薬)、バルサルタン(ARB)、サクビトリルバルサルタン(ARNI)
作用:RAASを抑制し、血圧低下・心負荷軽減・心筋リモデリング抑制を促す。ARNIはネプリライシンを阻害し、BNPの作用を増強する。
β遮断薬(β-blockers)
例:カルベジロール、ビソプロロール、メトプロロール
作用:交感神経の過剰活性化を抑制し、心筋のエネルギー消費を抑える。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
例:スピロノラクトン、エプレレノン
作用:アルドステロンの作用を抑制し、ナトリウム貯留を防ぐとともに、心筋線維化を抑制する。
SGLT2阻害薬
例:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン
作用:ナトリウム・グルコース共輸送体を阻害し、利尿作用を発揮するほか、心筋エネルギー代謝の改善が期待される。
利尿薬(症状管理)
例:フロセミド(ループ利尿薬)、アゾセミド
作用:過剰な体液貯留を軽減し、肺うっ血や浮腫を改善する(生命予後の改善効果は乏しい)。
(2) 拡張不全型心不全(HFpEF)の治療
現在、HFpEFに特化した予後改善効果のある治療薬は確立されていないが、以下の治療が行われる。
降圧療法(ARB、β遮断薬):後負荷を軽減し、心筋リモデリングを抑制する。
利尿薬:肺うっ血・浮腫の改善を目的に使用される。
SGLT2阻害薬:HFpEFに対する有効性が報告されている。
3. まとめ
慢性心不全は、心機能低下に伴う血行動態の変化、神経・内分泌系の過剰活性化、心筋リモデリングが病態の中心である。
HFrEFの治療はACE阻害薬/ARB/ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬が中心となり、症状に応じて利尿薬を併用する。HFpEFの治療は確立されていないが、降圧療法やSGLT2阻害薬が有効とされる。
引用文献
Yancy CW, Jessup M, Bozkurt B, et al. 2017 ACC/AHA/HFSA Focused Update of the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure. J Am Coll Cardiol. 2017;70(6):776-803.
McDonagh TA, Metra M, Adamo M, et al. 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021;42(36):3599-3726.
Tsutsui H, Isobe M, Ito H, et al. JCS 2017/JHFS 2017 Guideline on Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure. Circ J. 2019;83(10):2084-2184.
Packer M, Anker SD, Butler J, et al. Empagliflozin in Patients with Heart Failure and a Preserved Ejection Fraction. N Engl J Med. 2021;385(16):1451-1461.
Felker GM, Anstrom KJ, Adams KF, et al. Diuretic Strategies in Patients with Acute Decompensated Heart Failure. N Engl J Med. 2011;364(9):797-805.
論点およびポイント
■■GPT4o
問 109-220|生物
論点| BNP / NT-proBNP / ネプリライシン / 心不全
ポイント|

BNPとNT-proBNP は、主に心室から分泌 される。BNPは心不全の進行に応じて増加し、利尿・血管拡張作用を持つ。
NT-proBNPは生理活性を持たず、BNPと比べて血中半減期が長い。そのため、心不全の診断に利用される。
BNPは、前駆体(proBNP)から切断されて活性型BNPとNT-proBNPに分かれる。
ネプリライシンはBNPを分解するため、ネプリライシンの作用を抑制することでBNPの生理活性を延長させることができる。
ネプリライシンの作用部位は「切断3」 であり、BNPを短鎖ペプチドに分解する。
問 109-221|実務
論点| サクビトリルバルサルタン / 高カリウム血症 / 利尿作用
ポイント|
サクビトリルバルサルタンは、ネプリライシン阻害薬(サクビトリル)とARB(バルサルタン)の合剤 であり、BNPの分解抑制とRAA系の抑制 により、心不全治療に有効。
RAA系の抑制 によりアルドステロン分泌が低下し、高カリウム血症のリスクが上昇する。
ネプリライシン阻害により、BNPが維持され、ナトリウム利尿作用が持続するため、脱水症状が起こる可能性がある。
血圧は低下する方向に作用し、血圧上昇は起こりにくい。
TSHやNT-proBNPへの影響は少なく、臨床的に大きな変動は認められない。
薬剤師国家試験 出題基準
出典: 薬剤師国家試験のページ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
出題基準 000573951.pdf (mhlw.go.jp)
論点を整理します。
■■GPT4o
総合的な論点
問 109-220(生物)
本問では、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の生成と代謝に関する知識、およびサクビトリルの作用機序を理解することが求められる。
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1. BNPの生成と分泌
BNP(Brain Natriuretic Peptide)は、心室の心筋細胞から主に分泌されるホルモンであり、心負荷の増加に応答して合成が亢進する。
BNPは、前駆体(proBNP)から切断され、活性型のBNPと非活性型のNT-proBNPに分かれる。
pre-proBNP ⇒ proBNP ⇒ NT-proBNP + BNP
心室に負荷がかかると、134アミノ酸からなるpre-proBNPが合成される。pre-proBNPは、プロセッシングを受け、proBNP(108アミノ酸)となる。
proBNPはさらに生物学的活性を持つBNP(77 - 108アミノ酸)と活性を持たないNT-proBNP(1 - 76アミノ酸)に切断される。
2. NT-proBNPとBNPの違い
NT-proBNP(N-terminal proBNP)は、BNPと同時に生成されるが、生理活性を持たず、BNPの分泌量を反映する指標として利用される。
血中半減期はBNPよりも長いため、心不全の診断指標として用いられる。
3. ネプリライシン(NEP)の作用とサクビトリル
ネプリライシン(NEP)はBNPを分解する酵素であり、BNPをさらに小さなペプチドに分解する。
サクビトリル(Sacubitril)はネプリライシン阻害薬であり、BNPの分解を阻害することで、BNPの生理活性を増強し、ナトリウム利尿作用・血管拡張作用を促進する。
4. 問題の主な論点
BNPおよびNT-proBNPの由来と特性
ネプリライシンの作用部位(BNPの分解部位)
BNPの生理作用とNT-proBNPの役割の違い
本問では、以上の知識を活用して適切な選択肢を判断する必要がある。
各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法
問 109-220(生物)
選択肢1:BNPとNT-proBNPは、主に心室から分泌される。
論点:
BNPとNT-proBNPは、心室の心筋細胞から分泌されるペプチドホルモンである。
心負荷が増大すると、BNP遺伝子の転写・翻訳が促進され、proBNPが生成される。
proBNPが酵素によって切断され、生理活性のあるBNPと、非活性のNT-proBNPが生じる。
アプローチ方法:
生理学的にBNPとNT-proBNPは心臓(特に心室)由来であることが広く知られている。
選択肢1は正しい。
選択肢2:NT-proBNPは、図のペプチドAである。
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論点:
図のペプチドA(1-26)はproBNPのN末端とは異なる。
NT-proBNPはproBNP(1-134)の一部であり、BNP(103-134)を除いた部分(1-102)を指す。
よって、図のペプチドA(1-26)はNT-proBNPとは無関係。
アプローチ方法:
NT-proBNPは、BNPと同時に切断される前駆体の一部であり、proBNPから直接生じる。
ペプチドA(1-26)はproBNPの一部分であり、NT-proBNPの構成要素ではない。
選択肢2は誤り。
選択肢3:BNPは、NT-proBNPよりも血液中での安定性が高い。
論点:
NT-proBNPの血中半減期はBNPより長い(NT-proBNP:約60-120分、BNP:約20分)。
これは、BNPがネプリライシンによって速やかに分解されるのに対し、NT-proBNPは主に腎臓で除去されるためである。
アプローチ方法:
NT-proBNPはBNPよりも血中安定性が高いことが研究で示されている。
選択肢3は誤り。
選択肢4:ネプリライシンの作用部位は、切断3である。

論点:
ネプリライシンはBNPを不活性化する酵素であり、BNPのペプチド鎖を切断することでその作用を消失させる。
図の切断3(103-134 → 103-106 + 107-134)がネプリライシンの作用部位である。
アプローチ方法:
ネプリライシン阻害薬(サクビトリル)はBNPの分解を防ぐ。
この作用機序から考えて、ネプリライシンの作用部位は切断3である。
選択肢4は正しい。
選択肢5:NT-proBNPは、BNPと同様に腎臓に作用してNa+の尿中への排出を促進する。
論点:
BNPは、腎臓の糸球体濾過促進・ナトリウム排泄を増加させることで利尿作用を示す。
NT-proBNPは生理活性を持たず、腎臓に作用しない。
NT-proBNPは、BNPと同時に生成されるため診断マーカーとして用いられるが、ホルモンとしての機能はない。
アプローチ方法:
NT-proBNPはBNPの生理作用を共有しない。
選択肢5は誤り。
正答
✅ 選択肢1(BNPとNT-proBNPは、主に心室から分泌される)
✅ 選択肢4(ネプリライシンの作用部位は、切断3である)
引用文献
以下の文献は、BNPおよびNT-proBNPの生理学的特性、ネプリライシンの作用機序、およびサクビトリルの薬理学的効果に関するエビデンスを提供する。
Clerico A, Giannoni A, Vittorini S, Emdin M. (2011)
The Natriuretic Peptide System in the Pathophysiology of Heart Failure: From Molecular Basis to Treatment.
Clin Chem Lab Med. 49(7): 1017-1031.Daniels LB, Maisel AS. (2007)
Natriuretic Peptides.
J Am Coll Cardiol. 50(25): 2357-2368.Volpe M, Carnovali M, Mastromarino V. (2016)
The Natriuretic Peptides System in the Pathophysiology of Heart Failure: From Molecular Basis to Treatment.
G Ital Cardiol (Rome). 17(1 Suppl 1): 25S-41S.McMurray JJ, Packer M, Desai AS, et al. (2014)
Angiotensin–Neprilysin Inhibition versus Enalapril in Heart Failure.
N Engl J Med. 371(11): 993-1004.O'Neill J, Valsangiacomo Buechel E, Kretschmar O. (2018)
NT-proBNP as a Biomarker for Diagnosis and Risk Stratification in Pediatric Heart Failure and Cardiomyopathies.
Front Pediatr. 6: 390.
問 109-221(実務)
本問では、サクビトリルバルサルタン(Entresto®)の薬理作用と、その服用による副作用のリスクについて理解することが求められる。
特に、高カリウム血症および脱水症状に着目する必要がある。
1. サクビトリルバルサルタンの薬理作用
サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル(ネプリライシン阻害薬)とバルサルタン(アンジオテンシンII受容体拮抗薬:ARB)の合剤であり、以下の作用を示す。
サクビトリルの作用
ネプリライシン阻害により、BNPや他のナトリウム利尿ペプチド(ANPなど)の分解を抑制する。
これにより、利尿作用、血管拡張作用、心負荷軽減作用が増強される。
バルサルタンの作用
アンジオテンシンIIのAT1受容体を阻害し、血管収縮作用やアルドステロン分泌を抑制する。
これにより、血圧低下作用やナトリウム排泄促進が得られる。
2. 副作用として生じやすい症状
サクビトリルバルサルタンの作用機序から、以下の副作用が予測される。
高カリウム血症
バルサルタンのARB作用によりアルドステロン分泌が抑制される
→ カリウム排泄が低下 → 血清カリウム濃度が上昇特に、腎機能が低下している患者ではリスクが高い。
脱水症状
サクビトリルのネプリライシン阻害作用により、ナトリウム利尿ペプチド(BNPやANP)の作用が増強される
→ ナトリウム排泄と利尿が促進されるこれにより、過剰な利尿が起こると脱水リスクが上昇。
3. 本問の主な論点
サクビトリルバルサルタンの薬理作用と、それに基づく副作用の理解
高カリウム血症や脱水症状の発生機序の説明
その他の選択肢(TSH上昇、血圧上昇、NT-proBNP上昇)の妥当性の検討
各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法
問 109-221(実務)
選択肢1:血中TSH値の上昇
論点:
サクビトリルバルサルタンは甲状腺機能に直接影響を及ぼさない。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、主に視床下部-下垂体-甲状腺軸によって調節されるため、本剤の作用機序とは無関係。
アプローチ方法:
既存の文献や副作用報告にも、TSH上昇との関連は確認されていない。
選択肢1は誤り。
選択肢2:高カリウム血症
論点:
バルサルタン(ARB)は、アンジオテンシンIIのAT1受容体を阻害する。
これにより、アルドステロン分泌が低下し、腎臓でのカリウム排泄が抑制される → 血清カリウム濃度が上昇する。
特に腎機能が低下している患者(eGFR 54 mL/min/1.73m²)では、カリウム排泄能力が低下し、高カリウム血症のリスクが増大。
アプローチ方法:
本症例は慢性心不全の患者であり、腎機能が完全ではない
→ 高カリウム血症のリスクが高い選択肢2は正しい。
選択肢3:血圧上昇
論点:
サクビトリルバルサルタンは、血圧を低下させる作用を持つ。
サクビトリル(ネプリライシン阻害):
BNPおよびANPの血管拡張作用を増強バルサルタン(ARB):
アンジオテンシンIIによる血管収縮を抑制これらの作用により、血圧は低下する方向に働く。
アプローチ方法:
服用によって血圧が上昇する可能性は低い。
選択肢3は誤り。
選択肢4:血中NT-proBNP値の上昇
論点:
サクビトリルバルサルタンは心負荷を軽減し、NT-proBNPを低下させることが期待される。
NT-proBNPは、心不全の重症度に比例して増加する。
本剤の作用により心機能が改善すれば、NT-proBNP値は低下する。
アプローチ方法:
心不全治療の指標としてNT-proBNPの変化を評価する。
通常は低下する方向に作用する。
選択肢4は誤り。
選択肢5:脱水症状
論点:
サクビトリルのネプリライシン阻害作用によりBNPおよびANPの利尿作用が増強される。
これにより、ナトリウム排泄と尿量増加が起こり、過度に進行すると脱水症状につながる。
アプローチ方法:
本患者は高齢であり、慢性心不全を有するため、利尿による脱水リスクが高い。
選択肢5は正しい。
正答
✅ 選択肢2(高カリウム血症)
✅ 選択肢5(脱水症状)
引用文献
以下の文献は、サクビトリルバルサルタンの薬理作用、副作用(高カリウム血症・脱水症状)、および臨床試験における有害事象の発生率についてのエビデンスを提供する。
McMurray JJ, Packer M, Desai AS, et al. (2014)
Angiotensin–Neprilysin Inhibition versus Enalapril in Heart Failure.
N Engl J Med. 371(11): 993-1004.
(PARADIGM-HF試験において、サクビトリルバルサルタンが高カリウム血症や低血圧、腎機能障害を引き起こす可能性について検討)Solomon SD, McMurray JJV, Anand IS, et al. (2019)
Angiotensin–Neprilysin Inhibition in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction.
N Engl J Med. 381(17): 1609-1620.
(PARAGON-HF試験より、サクビトリルバルサルタンの利尿作用に伴う脱水リスクの評価)Packer M, Claggett B, Lefkowitz MP, et al. (2018)
Effect of Sacubitril/Valsartan on the Risk of Hyperkalemia in Patients With Heart Failure.
JAMA Cardiol. 3(4): 306-312.
(本剤による高カリウム血症のメカニズムと臨床リスクの分析)Yancy CW, Jessup M, Bozkurt B, et al. (2017)
2017 ACC/AHA/HFSA Focused Update of the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure.
J Am Coll Cardiol. 70(6): 776-803.
(心不全ガイドラインにおけるサクビトリルバルサルタンの推奨と副作用管理)
以上で、論点整理を終わります。
理解できたでしょうか?
大丈夫です。
完全攻略を目指せ!
はじめましょう。
薬剤師国家試験の薬学実践問題【複合問題】からBNP / NT-proBNP / ネプリライシン / 心不全 / サクビトリルバルサルタン / 高カリウム血症 / 利尿作用を論点とした問題です。
なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形で GPT4o & Copilot 、Gemini 2、または Grok 2 が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。
生成AIの製造元がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。
Here we go.
第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問220-221
一般問題(薬学実践問題)
【物理・化学・生物、衛生/実務】
■複合問題|問 109-220-221
Q. 89歳女性。体重40kg。高血圧症及び慢性心不全に対して処方1で薬物治療を行っている。独居で入院拒否があるため、医師と薬剤師、看護師が訪問している。最近、下腿浮腫が出現し、労作時の息苦しさや疲労感が強くなってきたため、血液検査を実施したところ、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)値が3ケ月前の450 pg/mLから下記の検査値になっていた。
(処方1)
エナラプリルマレイン酸塩錠5mg|1回1錠(1日1錠)|
ビソプロロールフマル酸塩錠0.625mg|1回1錠(1日1錠)|
アゾセミド錠60mg|1回1錠(1日1錠)|
スピロノラクトン錠50mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|朝食後|14日分
(検査値)
Na 141 mEq/L、K 4.8 mEq/L、eGFR 54 mL/min/1.73m2、
NT-proBNP 1,180pg/mL
※ なお、NT-proBNP値 900pg/mL以上は治療対象となる心不全の可能性が高い。
その後、訪問医は継続中だった処方1のうち、エナラプリルのみを中止して、新たに処方2を追加した。
(処方2)
サクビトリルバルサルタンNa水和物錠50mg 1回1錠(1日2錠)|
1日2回|朝夕食後|7日分|
物理・化学・生物
問 109-220|生物
Q. 下図は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の生成と代謝の過程を示している。BNPは、mRNAからBNP前駆体タンパク質として翻訳された後、切断されて血中に分泌される。サクビトリルが阻害する酵素ネプリライシンの作用部位は、切断1~3のいずれかである。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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■選択肢
1. BNPとNT-proBNPは、主に心室から分泌される。
2. NT-proBNPは、図のペプチドAである。
3. BNPは、NT-proBNPよりも血液中での安定性が高い。
4. ネプリライシンの作用部位は、切断3である。
5. NT-proBNPは、BNPと同様に腎臓に作用してNa+の尿中への排出を促進する。
Here:
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 109-220-221【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:BNP / NT-proBNP / ネプリライシン / 心不全 / サクビトリルバルサルタン / 高カリウム血症 / 利尿作用|matsunoya
実務
問 109-221|実務
Q. 処方2の薬剤の服用によって生じる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
■選択肢
1. 血中TSH値の上昇
2. 高カリウム血症
3. 血圧上昇
4. 血中NT-proBNP値の上昇
5. 脱水症状
Here:
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■■GPT4o
■問 109-220|生物
■論点|
この問題の論点は、BNPおよびNT-proBNPの生理学的特性とネプリライシンの作用部位を特定すること です。
■解説1|
BNPとNT-proBNPは、主に心室から分泌される。(選択肢1)[正しい]
BNP(B型ナトリウム利尿ペプチド)およびNT-proBNP(BNPのN末端フラグメント)は、主に心室の心筋細胞から分泌される。
心筋の負荷(例えば、心不全の進行)に応じて、BNP前駆体(proBNP)が放出され、BNPとNT-proBNPに分解 される。
BNPは血管拡張、利尿、ナトリウム排泄促進作用 を持つのに対し、NT-proBNPは生理活性を持たない。
ネプリライシンの作用部位は、切断3である。(選択肢4)[正しい]
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ネプリライシンは膜結合型の中性エンドペプチダーゼで、BNPなどのナトリウム利尿ペプチドを分解する酵素 である。
図の切断3(BNPの103–134番アミノ酸領域をさらに分解する)において、BNPが短鎖ペプチドに分解される。
サクビトリルはネプリライシンを阻害するため、BNPの分解を抑制し、血中BNP濃度を上昇させる。
■解説2|
BNPとNT-proBNPの違い
BNPは生理活性があり、血管拡張や利尿作用を持つ。
NT-proBNPは生理活性がなく、BNPよりも血中半減期が長いため、心不全の診断マーカーとして利用される。
ネプリライシン阻害によるBNPの増加は、心不全治療の有効性に寄与する。
pre-proBNP ⇒ proBNP ⇒ NT-proBNP + BNP
心室に負荷がかかると、134アミノ酸からなるpre-proBNPが合成される。pre-proBNPは、プロセッシングを受け、proBNP(108アミノ酸)となる。
proBNPはさらに生物学的活性を持つBNP(77 - 108アミノ酸)と活性を持たないNT-proBNP(1 - 76アミノ酸)に切断される。
■結論|
選択肢1と選択肢4は正しい。
BNPとNT-proBNPは主に心室から分泌される(選択肢1)。
ネプリライシンはBNPを切断3の位置で分解する(選択肢4)。
■補足|
NT-proBNPは、図のペプチドAである。(選択肢2)[誤り]

NT-proBNPは、BNP前駆体からBNPとともに生じるが、ペプチドAとは異なる。
図では、ペプチドAは前駆体の1-26番アミノ酸領域であり、NT-proBNPではない。
図では、ペプチドBが、NT-proBNPに相当する。
BNPは、NT-proBNPよりも血液中での安定性が高い。(選択肢3)[誤り]
NT-proBNPはBNPよりも半減期が長く、血中での安定性が高い。
BNPの半減期は20分程度に対し、NT-proBNPの半減期は約120分である。
NT-proBNPは、BNPと同様に腎臓に作用してNa+の尿中への排出を促進する。(選択肢5)[誤り]
BNPは腎臓に作用し、ナトリウム排泄と利尿作用を促進する が、NT-proBNPには生理活性がなく、同様の作用はない。
■問 109-221|実務
■論点|
この問題の論点は、サクビトリルバルサルタンの薬理作用と副作用を理解すること です。
■解説1|
高カリウム血症(選択肢2)[正しい]
サクビトリルバルサルタンはネプリライシン阻害薬(サクビトリル)とARB(バルサルタン)の合剤 である。
バルサルタンはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)であり、アルドステロン分泌を抑制する。
アルドステロンの低下により、腎臓でのK⁺排泄が抑制され、高カリウム血症が発生する可能性がある。
特に、スピロノラクトン(抗アルドステロン薬)との併用ではリスクが高まる。
脱水症状(選択肢5)[正しい]
ネプリライシン阻害によるBNP増加は、利尿作用を強める。
その結果、尿量増加に伴う体液量減少が生じ、脱水症状を引き起こす可能性がある。
特に高齢者では、体液量が減少しやすく、脱水リスクが増加する。
■解説2|
サクビトリルバルサルタンの主な作用
サクビトリルのネプリライシン阻害作用
→ BNP分解抑制 → 血管拡張・利尿バルサルタンのARB作用
→ アンジオテンシンⅡ受容体拮抗 → 血圧低下
副作用の発生機序
高カリウム血症:
アルドステロン低下に伴うカリウム排泄低下脱水症状:
過剰な利尿作用による水分喪失
■結論|
選択肢2(高カリウム血症)と選択肢5(脱水症状)は正しい。
特にスピロノラクトンとの併用では、高カリウム血症のリスクがより高くなるため注意が必要。
■補足|
血中TSH値の上昇(選択肢1)[誤り]
サクビトリルバルサルタンは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)に直接影響を与えない。
ARBやネプリライシン阻害薬とTSHの関連性は報告されていない。
血圧上昇(選択肢3)[誤り]
バルサルタン(ARB)は血圧を下げる作用を持つため、血圧上昇は考えにくい。
むしろ、血圧低下が副作用として現れる可能性がある。
血中NT-proBNP値の上昇(選択肢4)[誤り]
ネプリライシンはBNPを分解するが、NT-proBNPは分解しない。
サクビトリルの作用によりBNPは上昇するが、NT-proBNPは影響を受けない。
実際の臨床試験でも、NT-proBNP値は低下することが報告されている。
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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第109回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問220-221
一般問題(薬学実践問題)
【物理・化学・生物、衛生/実務】
■複合問題|問 109-220-221
Q. 89歳女性。体重40kg。高血圧症及び慢性心不全に対して処方1で薬物治療を行っている。独居で入院拒否があるため、医師と薬剤師、看護師が訪問している。最近、下腿浮腫が出現し、労作時の息苦しさや疲労感が強くなってきたため、血液検査を実施したところ、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)値が3ケ月前の450 pg/mLから下記の検査値になっていた。
(処方1)
エナラプリルマレイン酸塩錠5mg|1回1錠(1日1錠)|
ビソプロロールフマル酸塩錠0.625mg|1回1錠(1日1錠)|
アゾセミド錠60mg|1回1錠(1日1錠)|
スピロノラクトン錠50mg|1回1錠(1日1錠)|
1日1回|朝食後|14日分
(検査値)
Na 141 mEq/L、K 4.8 mEq/L、eGFR 54 mL/min/1.73m2、
NT-proBNP 1,180pg/mL
※ なお、NT-proBNP値 900pg/mL以上は治療対象となる心不全の可能性が高い。
その後、訪問医は継続中だった処方1のうち、エナラプリルのみを中止して、新たに処方2を追加した。
(処方2)
サクビトリルバルサルタンNa水和物錠50mg 1回1錠(1日2錠)|
1日2回|朝夕食後|7日分|
物理・化学・生物
問 109-220|生物
Q. 下図は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の生成と代謝の過程を示している。BNPは、mRNAからBNP前駆体タンパク質として翻訳された後、切断されて血中に分泌される。サクビトリルが阻害する酵素ネプリライシンの作用部位は、切断1~3のいずれかである。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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■選択肢
1. BNPとNT-proBNPは、主に心室から分泌される。
2. NT-proBNPは、図のペプチドAである。
3. BNPは、NT-proBNPよりも血液中での安定性が高い。
4. ネプリライシンの作用部位は、切断3である。
5. NT-proBNPは、BNPと同様に腎臓に作用してNa+の尿中への排出を促進する。
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実務
問 109-221|実務
Q. 処方2の薬剤の服用によって生じる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
■選択肢
1. 血中TSH値の上昇
2. 高カリウム血症
3. 血圧上昇
4. 血中NT-proBNP値の上昇
5. 脱水症状
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薬学実践問題 第106回薬剤師国家試験 全50問
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薬学実践問題 第107回薬剤師国家試験 全50問
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薬学実践問題 第108回薬剤師国家試験 全50問
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