松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-123【衛生】論点:食品の安全 / 化学物質汚染
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第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
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滝沢 幸穂
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問100-123【衛生】論点:食品の安全 / 化学物質汚染
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。
薬剤師国家試験の衛生から食品の安全 / 化学物質汚染を論点とした問題です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
第100回薬剤師国家試験の問123(問100-123)は、食品の安全の中でも化学物質による汚染が設問のテーマでした。この問題へのアプローチ方法を一緒に考えてみましょう。
問101-123を解説します。
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苦手意識がある人も、この機会に、食品の安全の中の化学物質による汚染を一緒に完全攻略しよう!
6つのテーマに分けて解説します。
はじめましょう。
設問へのアプローチ|
設問の全文をもう一度読んでみましょう。
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
設問の冒頭に「平成20年」「事故米」「転売」「事件」など具体的な描写が詳細に記載されていますが、ここで焦ってはいけません。
具体的な描写付きの設問の場合、「結語から読む」アプローチが原則です。落ち着いて結語を読みましょう。
結語は以下の通りです。
米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢を選ぶための情報はこれだけで必要十分です。
問100-123は、有害化学物質(選択肢にある5種類)から、米を汚染する可能性が高い化学物質を選択する選択問題です。
汚染の可能性の高さ、つまり、その有害化学物質によって(コメが)汚染される確率、すなわち検査で当該化学物質が(コメから)検出された回数、汚染頻度を推定する統計的アプローチが妥当と考えられる問題です。
平成20年の「事件」をはじめ、食品の化学物質汚染に関する違反事例を、少なくとも米に関して経年的に把握している必要があります。
米以外にも、検査すべき食品は多種類に渡ります。また同時に、検査対象である有害化学物質や農薬等は数百種類存在します。
これらすべての検出事例を数年に渡って統計的な確率を推定可能なまでに把握していることは、検疫所の検査担当官でなければ無理です。
では、どうアプローチすればベストなのか。
6つのテーマから解法を考えてみます。
論点解説|
テーマ1. 事故米穀の不正規流通事案(平成20年)|
設問にあるキーワードに着目してみます。
「平成20年」、「事故米」、「食用と偽って」、「転売」、「事件」、「米」、「汚染する可能性が高い有害化学物質」。
平成20年に発生した「数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売した事件」は、平成30年現在から10年さかのぼる事案です。
当時のニュース報道を薬剤師国家試験を受験する予定の薬学生の皆さん(当時10代前半)が記憶していることを要求されても、というところはあります。皆さんは覚えていらっしゃいますか?
もしかしたら、当該の事案は、食品の安全性に対して大きな社会的インパクトを与え、その後の米の輸入と備蓄等の管理に対する政府の政策に影響した事件であったことから、薬剤師の職能として知識を持っているべきと考えられているのかもしれません。
問われている事件の経緯が正解へと近づくポイントのひとつとなります。
ですから、まず、事件の具体的な経緯から「米を汚染する可能性が高い有害化学物質は」にアプローチしてみたいと思います。
農林水産省HP(農林水産省|報道発表資料>「事故米穀の不正規流通事案に関する対応策緊急とりまとめ」について(平成20年9月22日) https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/syoryu/pdf/080922-03.pdf )を参考資料として解説します。
上記参考資料によれば、事故米穀とは、保管中にカビの発生、水漏れ等の被害を受けたもの、または、基準値を超える残留農薬等が検出されたものであり、政府が用途を限定して売却するものです。
事故米穀は、政府米と政府米以外に分類されます。
政府米としては、平成20年9月22日時点で、平成15年から平成20年の5年間に7,400tの事故米穀があり、事故米穀となった主な要因は、有機リン系農薬であるメタミドホスの基準値超過(3,469t)およびカビ毒であるアフラトキシンの汚染(9.5t)でした。
また、その他の原因(3,921.5t)として一般カビ、汚損、虫害、水漏れ、破袋がありました。
政府米以外にも事故米穀としての取り扱いがありましたが、輸入時に農薬(ネオニコチノイド系殺虫剤)のアセタミプリドの基準値超過が明らかとなり、食用以外の用途で輸入が認められた米穀(598t)、およびその他のかび(217t)でした。
参考資料:食品安全委員会|評価書一覧>農薬 アセタミプリド
http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/list?itemCategory=001
YouTube|
走る!「衛生」Twitter Ver. 食品の安全/化学物質による汚染/
第100回-問123(1)|薬剤師国家試験対策ノート
https://youtu.be/L6SGPTAti-M
図1 事故米穀の要因別内訳抜粋 / 事故米穀の不正規流通状況(H20.9.22時点)
※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より
出典:農林水産省|事故米穀の不正規流通状況(H20.9.22時点)
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/syoryu/pdf/080922-03.pdf
これらの事故米穀の不正規流通問題は、三笠フーズ㈱が、食用への使用を禁止されていた事故米穀の食用転売を行ったことに端を発し、その後の緊急一斉点検の結果、新たに数社についても、事故米穀の扱いに関する「国との契約で定められた買受目的」以外に使用していたことが確認されたという経緯でした。
なお、メタミドホスが基準値超過した米穀は平成15年に輸入したもので、その時点の食品衛生法にはメタミドホスに関する基準がなく適法に輸入したものの、ポジティブリスト制度の導入によって平成18年に基準が新設され、その後の検査により残留が確認されて事故米穀とされたものです。
なお、米(玄米)におけるメタミドホスの基準値は存在しないので一律基準(0.01ppm)が適用されます。
参考資料:日本食品化学研究振興財団 残留農薬基準値検索システム
http://db.ffcr.or.jp/front/
|農薬等の基準値>メタミドホス
http://db.ffcr.or.jp/front/pesticide_detail?id=74900
ポジティブ制度が導入された平成18年以降の輸入米においては、メタミドホスは輸入時管理項目とされているため、ポジティブ制度が導入された後の輸入においては、上記のような規模で国内のコメが検査で基準値超過することはなくなったと推察されます。
テーマ6で後述するように、有機リン系化合物のひとつであるメタミドホスは日本では農薬登録されていません。つまり、国内では使用される可能性がない農薬(禁止農薬)です。
使用されないということは、つまり、農薬がコメに残留することはないと考えられます。このことから、国内米へのメタミドホスの残留は基本的に想定されません。
ですから、上記事案をのぞけば、設問において「米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。」ということのみ問われている場合、平成30年現在では、メタミドホスは米を汚染する可能性が高い農薬として、現実的に高頻度で検出される農薬ではありません。
また、前述のように輸入時に管理項目とされている農薬が輸入米で基準値を超過したまま国内で流通する可能性は低いです。
流通したとしたら、まさに事件です。
上記の平成20年の事件を受け、政府は事故米穀を新規に流通させないための措置として、事故米穀については、単なる水濡れ等を除き、食用への横流しの可能性を根本から断つため、国内市場に流通させないこととする取り決めを行いました。
平成20年9月22日の下記参考資料に記載された取り決めです。
参考資料:農林水産省|事故米穀の不正規流通事案に関する対応策緊急取りまとめ(平成20年9月22日)
http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/syoryu/pdf/080922-03.pdf
取り決めは具体的には以下の通りです。
1) WTO協定に基づき国家貿易で輸入する米については、国と輸入業者との契約により、
・輸入時に、厚生労働省の輸入検疫で食品衛生法上問題があることが判明した場合、輸出国等への返送又は廃棄処分。
・輸入時点において既に食品衛生法上問題があったことが輸入後に判明した場合、輸出国等への返送又は廃棄処分。
・輸入後に保管上の問題等によりカビ等が発生した場合、国が廃棄処分。
2) 食糧法に基づき備蓄している国産米については、保管上の問題等によりカビ等が発生した場合には、国が廃棄処分。
まとめます。
「テーマ1. 事故米穀の不正規流通事案(平成20年)」からのアプローチによって明らかとなったことは、何でしたか?
それは、2020年現在、メタミドホスは輸入時管理項目とされていること、国内では使用禁止とされていること、以上から、日本国内では、米を汚染する可能性が低い有害化学物質と考えられるという事です。
テーマ6でもメタミドホスを取り上げます。
テーマ2.につづく。。。
ポイント|
平成20年の【A】の【B】問題では、【C】転売された【A】のうち、政府米では、【D】が基準値超過したもの、または【E】が検出されたもの、ならびにその他理由のもの、また、非政府米では、【F】が基準値超過したもの、ならびにその他の理由のものが、それぞれ、一部、【G】米として不正規流通したことが判明した。この事案を受けて、政府は、【G】への横流しの可能性を根本から断つため、【A】を【H】して国内市場に【I】こととした。
A. 事故米穀
B. 不正規流通
C. 非食用
D. メタミドホス
E. アフラトキシン
F. アセタミプリド
G. 食用
H. 返送または廃棄処分
I. 流通させない
_____
では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
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(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問104-1【物理】論点:放射線 / 壊変・核分裂
https://note.com/matsunoya_note/n/nf8835472e646
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テーマ2. 多環芳香族炭化水素 / ベンゾ〔a〕ピレン|
解説します。
多環芳香族炭化水素 / ベンゾ〔a〕ピレンを論点とした設問は、第100回薬剤師国家試験の問123の選択肢2(問100-123-2)以外にも、例えば、下記のような過去問題があります。
併せてチャレンジしてみるとよいでしょう。
■類題|
第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 食品に由来する発がん物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢|
1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。
2. サイカシンは、体内でβ-グルコシダーゼによって代謝されたのちメチルカチオンを生じる。
3. ベンゾ〔a〕ピレンは、食品の焦げた部分などに含まれる多環芳香族炭化水素の一種である。
4. タンパク質を加熱したときに生成するGlu-P-1は、エポキシ体に代謝されて変異原性を示す。
5. ジャガイモを揚げたときなどに生成するアクリルアミドは、ヘテロサイクリックアミンの一種である。
(論点:食品に由来する有害物質)
上記の設問に関するeラーニングの論点解説はこちらです。
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質
https://note.com/matsunoya_note/n/n5bc4900d4ccd
大気汚染の視点から|
環境省|化学物質の環境リスク評価 第5巻[22]ベンゾ〔a〕ピレン https://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/ によれば、ベンゾ〔a〕ピレン (benzo[a]pyrene; BaP) を含む多環芳香族炭化水素(PAHs)は非意図的に生成され、環境中へ排出されます。
PAHs の環境中への排出源は燃焼由来と非燃焼由来に分けられます。
燃焼由来が90%以上を占め、一般に、都市やその近郊では自動車排ガスが主な排出源と考えられます。
全体としては90%近くが固定発生源から排出されます。
大気汚染防止法では、BaPは有害大気汚染物質の中の優先取組物質に指定されています。
食品の安全の視点から|
食品安全委員会|ファクトシート https://www.fsc.go.jp/factsheets/ >食品に含まれる多環芳香族炭化水素(PAHs)PDF(平成24年6月)https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheet_pahs_2.pdf および農林水産省|農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象に位置付けている危害要因についての情報 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard-info.html 多環芳香族炭化水素類(PAH)PDF https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/attach/pdf/hazard-info-16.pdf を参考資料として解説します。
上記、食品安全委員会のファクトシートによれば、食品に多く含まれる PAHs としては、ベンゾ〔a〕ピレンなど 30 種類程度の化合物が食品分析結果から明らかとなっています。
PAHsは食品を焼く調理過程や乾燥・加熱の製造過程で生成されるので、肉・魚介類の燻製、直火調理の肉、植物油、穀物製品に多く含まれます。
国際がん研究機関(IARC)はPAHsの多くに発がん性や遺伝毒性があること、あるいは、ヒトに対する発がん性が疑われることを報告しています。
BaPは、国際がん研究機関(IARC)の評価でグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類されました(2012年)。
食品に含まれるPAHsについては、国際連合食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)がBaPを指標として暴露マージン(MOE)を検討しています。
その結果、PAHsによる健康への懸念は低いとの結論が出されました。
日本ではPAHsに関する食品衛生法に基づく基準値は設定されていません。
一方で、上記、農林水産省の食品安全に関するリスクプロファイルシートによれば、海外において、いくつかの食品でBaPの基準値が規定されており、日本ではPAHsによる汚染実態調査結果が報告されています。
参考資料から、汚染実態調査の対象となった食品の種類と実測値等を確認しておきましょう。
PAHsの低減に関してはCodex委員会による「燻製及び直接乾燥による食品の PAH 汚染を低減するための実施規範」(CAC/RCP68-2009)があり、日本では、農林水産省が、かつお節・削り節業界による「かつお節・削り節の製造におけるPAH類の低減ガイドライン(2013年)」を策定して製造法の改善による低減対策の取組を支援しています。
以上の記載から、BaP等のPAHsの汚染を憂慮すべき食品の種類は、肉・魚介類の燻製、直火調理の肉、植物油、穀物製品と考えてよいでしょう。
海外の基準に着目すると、EUにおいてBaP等PAHsの基準値が設定されている食品は、例えば、油脂、カカオ豆、カカオ豆由来製品、ココナツ油、燻製肉、燻製魚類、燻製甲殻類、かつお節、二枚貝、穀類加工品、ココアファイバー、バナナチップ、乾燥ハーブ、乾燥スパイスがあります。
中国においては、穀類及び穀類製品 (コメ、小麦、小麦粉、トウモロコシ、 コーンミール)5.0 BaP(μg/kg)の基準があります。
日本国内で、BaP等PAHsの汚染低減対策が注目されている食品は、かつお節・削り節です。
国内基準は規定されていませんが、EUでは基準値が規定されており、日本国内でもPAHsおよびBaP汚染の実態調査から低減が求められています。
EUでのかつお節の基準は、BaP 5.0 μg/kg、PAH4(BaP、BaA、BbFA、及びCHRの合計) 30.0μg/kgです。
一方で、農林水産省の上記リスクプロファイルシートの別紙2 国内で製造・販売されたかつお削りぶし、荒節表面の削り粉とそれらの浸出液に含まれるPAH の分析結果(2012 年度)表2-1 かつお削りぶしに含まれる PAH の分析結果 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/attach/pdf/hazard-info-16.pdf によれば、かつお削りぶし中のBaP実測値は、最小値 4.4、最大値 39、平均値 19、中央値 20μg/kgでした。
2012年時点での日本国内での実測値をEUの基準値と比較すると、最小値は4.4μg/kgとEUの基準値5.0μg/kg未満でしたが、他の統計的な指標(最大値、平均値、中央値)は、すべてEUの基準値を上回っていることがわかります。製造法の改善による低減対策の取組が求められる所以です。
図1 かつお削りぶしに含まれる PAH の分析結果抜粋
出典:農林水産省|食品安全に関するリスクプロファイルシート / 多環芳香族炭化水素類(別紙2)国内で製造・販売されたかつお削りぶし、荒節表面の削り粉とそれらの浸出液に含まれる PAH の分析結果(2012 年度)表2-1 かつお削りぶしに含まれる PAH の分析結果 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/attach/pdf/hazard-info-16.pdf
まとめます。
BaP等のPAHsの汚染を憂慮すべき食品は、燻製または直火調理の魚および肉です。かつお節・削り節についてBaP等のPAHsの国内基準は規定されていませんが、EUでは基準値が規定されています。
余談|
個人として見解を言わせてもらうと、
BaP等のPAHsの食品中の基準に関しては、少なくとも日本の伝統食品に関しては、基準の策定は、主体的に戦略的に科学的に、日本がリードして決定していくことが日本の食文化を守り世界へ発信するための最も重要な手段であると思います。
一般的に言えることですが、
「なにもしない」という行動選択は、椅子を温めていることしか興味がない(ほんの少し優秀さに欠ける)「金欲しさだけ」の仕草をする今の意思決定を担うある種の無能な人たちの常とう手段です。
「なにもしない」ことと「先送りにする」ことは課題解決にはならないです。
椅子だけに執着を示す「金欲しさだけ」をどけることから始めなければ、何も解決しはじめないという状態は、今の時代の日本ではどこでも定石になりつつあることです。
_____
テーマ3.につづく。。。
ポイント|
【A】は食品を【B】する過程で生成されるので、【C】に多く含まれる。【D】は【A】の多くに【E】があることを報告している。【F】は、【D】の評価でグループ1(ヒトに対して【G】)に分類された。【H】は【F】を指標として暴露マージン(MOE)を検討した結果、【A】による健康への懸念は【I】と結論した。【A】の低減に関しては【J】による「【K】による食品の 【A】汚染を低減するための実施規範」があり、日本では、農林水産省が「【L】の製造における【A】類の低減ガイドライン(2013年)」を策定して【M】の取組を支援している。
A. 多環芳香族炭化水素(PAHs)
B. 焼く・乾燥・加熱
C. 肉・魚介類の燻製、直火調理の肉、植物油、穀物製品
D. 国際がん研究機関(IARC)
E. 発がん性/遺伝毒性
F. ベンゾ〔a〕ピレン
G. 発がん性がある
H. 国際連合食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)
I. 低い
J. Codex委員会
K. 燻製及び直接乾燥
L. かつお節・削り節
M. 製造法の改善による低減対策
_____
では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
楽しく!驚くほど効率的に。
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テーマ3. かび毒 / アフラトキシンB1|
解説します。
農林水産省|いろいろなかび毒 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kabi_iroiro.html によれば、アフラトキシン類は、穀類、落花生、ナッツ類、とうもろこし、乾燥果実などに寄生するアスペルギルス属(Aspergillus, コウジかび)の一部が産生するかび毒であり、食品から検出される主要なものは4種類(アフラトキシンB1、B2、G1、G2)です。
国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、アフラトキシン類は人の肝臓に発がん性があるとし、アフラトキシン類の中でアフラトキシンB1が最も強い発がん性を有するとしました。
アフラトキシン類による健康リスクを低減するため、 摂取量を可能な限り低減すべきとしています。
食品衛生法では、総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1、G2の総和)の場合、10 μg/kgを超過して含有する食品は第6条第2号に違反するものとして取り扱うとしています。
参考資料:e-Gov 食品衛生法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000233#24
第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
一 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
二 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
三 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
四 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
また、アフラトキシンM1、M2の2種類は、動物の体内でそれぞれ飼料中のアフラトキシンB1、B2が代謝されて生成しますが、乳に含まれるアフラトキシンM1は0.5 μg/kg(平成28年1月適用)を超過して含有する場合に規制されます。
農林水産省は、「米のかび汚染防止のための管理ガイドライン(平成24年) https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/index.html 」に基づき、米の乾燥調製、貯蔵段階において、アフラトキシン類を産生するようなかびを含めて米にかびが生育することを未然に防止する取組を推進しています。
上記、農林水産省HP(農林水産省|米のかび汚染防止のための管理ガイドライン)によれば、2011(平成23)年に、日本の国内生産米がアフラトキシン類(アフラトキシンB1)によって汚染された事例が確認されたとのことです。
一方、前述の論点解説「テーマ1」で取り上げたように、2008(平成20)年の事故米穀の不正規流通の事案において、輸入米にアフラトキシンが検出されました。
J-Stageの科学文献(J-Stage|吉成, かび毒汚染事例と規制-日本に流通する食品におけるかび毒の汚染実態-, 日本食品微生物学会雑誌, 34, 107-110 (2017) https://doi.org/10.5803/jsfm.34.107 )によれば、日本に流通する食品におけるアフラトキシンの汚染調査が2004~2006年にかけて行われ、カカオ製品、ハト麦、アーモンド、香辛料およびピスタチオにおいてアフラトキシン陽性率が高く(≧20%)、落花生とその加工品においてはアフラトキシンG1が現行の規制値を超える濃度(20.9 μg/kg)で検出されました。
この調査では、コメ、そば麺、豆菓子からはアフラトキシン類は検出されませんでした。
一方、国立医薬品食品衛生研究所|食品衛生関連情報ポータルサイト http://www.nihs.go.jp/hse/food-kkportal/index.html の検疫所関連情報から、厚生労働省が公開する輸入食品中の違反事例に基づく一覧(2008(平成20)年-2014(平成26)年)を確認すると、7年間(違反事例:合計8299レコード)で、アフラトキシンの違反事例は1110件あり、そのうち、品目としてはトウモロコシおよびその加工品が448件と最も汚染が多く、ピーナツおよびその加工品が257件と第2位、ピスタチオおよびその加工品が62件と第3位、アーモンドおよびその加工品が58件と第4位でした(※この論点解説のために独自にデータベースを作成し集計; 図1参照)。
その他、ハトムギ、唐辛子、乾燥いちじく、ナツメグに比較的多くの違反事例が認められました。
なお、コメおよびその加工品に関しては、平成20年から7年間の輸入食品中の違反事例において、アフラトキシンに関する違反は1件(FROZEN PEANUT RICE BALL / 中国産)のみでした。
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化学物質による汚染/第100回-問123(3)
|薬剤師国家試験対策ノート
https://youtu.be/__iDsQUc33g
図1 厚生労働省が公開する輸入食品中の違反事例に基づくアフラトキシン違反事例一覧(平成20-平成26)
※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より
出典:国立医薬品食品衛生研究所|食品衛生関連情報ポータルサイト http://www.nihs.go.jp/hse/food-kkportal/index.html
ただし、コメの違反事例(合計:256件)のうち、違反項目にカビを含むものは216件あり、かびが輸入時のコメの汚染の主たる要因であったことは明らかです。
まとめます。
以上から、アフラトキシンB1は、他の品目(トウモロコシ、ピーナツ、ピスタチオ、アーモンド、ハトムギ、唐辛子、乾燥いちじく、ナツメグ等)と比較してコメにおいて検出される頻度は少ないと考えられました。
一方、汚染の可能性は否定できないため、アフラトキシンは管理すべき有害化学物質ではあります。
厚生労働省の正答を見ると、問100-123では選択肢2(100-123-2)は正解の1つとされました。
私見を言わせていただけば、
この問題だけではなく、一貫して、
設問の正答に対して科学的根拠の添付を義務付けること
作問、正答ともに第三者によるQA(品質保証)の記録を義務付けること
が必要とされると思います。
また、法で定められ、保健衛生において重大な役割と責任を担う薬剤師という人材を選別する国家資格試験を作るにあたって、その大事業にふさわしい責任者の選別および責任の所在を明確にした担当者の公正な人事とを恒常的に行えるようなシステムにしておかなければいけない。
国家資格試験の問題のクオリティが残念な仕上がりでは、日本の高度先進医療うんぬんを目指すために薬学を6年制にしたといっても、実効性が伴っていない気が致します。
客観的に、実効性が伴わないことが明らかなのに薬剤師国家資格試験における課題が放置されている懸念がございます。
アナタのためだもの。
気づきがカイゼンに繋がります!
テーマ4.につづく。。。
■類題|
アフラトキシンを論点とした類題として、第101回薬剤師国家試験の問123、選択肢5(問101-123-5)があります。論点「食品に由来する有害物質」のうち、かび毒のアフラトキシンをテーマとした正誤問題でした。
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 食品に由来する有害物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢|
1. ポテトチップスを製造する際の加熱時に、ジャガイモに多く含まれるアスパラギンが糖と反応してアクリルアミドが生じる。
2. 魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、トリプタミンである。
3. マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸は発がん性を示すため、食品中含量の表示が義務づけられている。
4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。
5. 輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。
(論点:食品に由来する有害物質)
合わせてチャレンジしておくと応用力が高まります。
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問101-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質
https://note.com/matsunoya_note/n/n5ed874b2e2aa
_____
ポイント|
【A】類は、【B】などに寄生する【C】の一部が産生するかび毒であり、食品から検出される主要なものは4種類(【A】【D】)である。【E】では、総【A】(【D】の総和)が【F】を超過した食品は第6条第2号に違反するものとして取り扱うとし、また、乳に含まれる【A】【G】は【H】を超過した場合に規制される。農林水産省は「【I】のための管理ガイドライン」(2012(平成24)年)に基づき、米の【J】において、【A】類を産生するようなかびを含めて米に【K】ことを未然に防止する取組を推進している。近年の輸入食品における【A】違反事例は、【L】に多く見られ、一方、コメにおいて最も多い違反項目は【M】だが、【A】に関する違反事例は少ない。
【N】は、【A】類は人の【O】とし、中でも【A】【P】が最も強い発がん性を有するとした。【A】類による健康リスクを低減するため、 摂取量を【Q】すべきとしている。
A. アフラトキシン
B. 穀類、落花生、ナッツ類、とうもろこし、乾燥果実
C. アスペルギルス属(Aspergillus, コウジかび)
D. B1、B2、G1、G2
E. 食品衛生法
F. 10 μg/kg
G. M1
H. 0.5 μg/kg
I. 米のかび汚染防止
J. 乾燥調製、貯蔵段階
K. かびが生育する
L. トウモロコシ、ピーナツ、ピスタチオ、アーモンド、ハトムギ等
M. カビ
N. FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)
O. 肝臓に発がん性がある
P. B1
Q. 可能な限り低減
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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
楽しく!驚くほど効率的に。
https://note.com/matsunoya_note
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テーマ4. かび毒 / パツリン|
かび毒であるパツリンについて解説します。
農林水産省|いろいろなかび毒 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kabi_iroiro.html によれば、パツリンは、りんご果汁を汚染するかび毒として国際的に規制の対象とされています。
土壌中にいるペニシリウム属(Penicillium、アオかび)又はアスペルギルス属(Aspergillus、コウジかび)の一部のかびが、落果したりんごの傷ついた部分から侵入し、果実の中で増殖してパツリンを産生します。
欧米では、子供は成人に比べて体重当たりのりんごジュース摂取量が多いので、子供の健康保護の観点から重要視されているかび毒です。
Codex委員会は、りんご果汁および原料用りんご果汁のパツリン汚染防止・低減のための実施規範を採択、りんご果汁について50 μg/kgの最大基準値を設定しました(2003年)。
日本では、同年、食品衛生法に基づく清涼飲料水の成分規格として、りんごジュースおよび原料用りんご果汁について、パツリンに0.050 ppm(50 µg/kg相当)の基準値が定められました(2003(平成15)年)。
また、食品安全員会|評価書一覧>かび毒・自然毒 https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/list?itemCategory=009 パツリン によれば、「薬事・食品衛生審議会において行われたパツリンのPTDI(暫定耐容一日摂取量)を0.4μg/kg体重/日と設定する評価結果を妥当と考える。(平成15年7月24日府食第27号)」との評価書が同年提出されました。
体重を60kgとすると、1日に摂取して良いパツリンの量は、PTDIから計算すると24μgです。
パツリンの基準値は0.050 ppm(50 µg/kg相当)ですから、パツリンの検出値が基準値上限のリンゴジュースを1日に0.5㎏(リンゴジュースとすると500mL容器1本相当)摂取すると、摂取量は25μgと算定され、暫定とはいえ耐容一日摂取量を超過します。これは基準値とPTDIの間の幅の狭さを証明しており、驚くべき運用事例です。
汚染実態調査の結果、例えば、国産りんご果汁中のパツリン実態調査(2002-2005 年) では、最大値は21-37μg/kgで、基準値(50μg/kg相当)を超過した検体はなく、定量限界未満の濃度を定量限界として平均値を算出した場合、7-11μg/kgでした(図1参照)。
参考資料:農林水産省|
個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質) https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem.html
リスクプロファイルシート>パツリン https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/attach/pdf/hazard_chem-7.pdf
農林水産省は、原料りんご果実の生産/流通段階、りんご果汁の流通/加工段階におけるパツリン汚染防止・低減のための対策(傷果発生の防止、腐敗果の選別・除去など)の徹底を指導しています。
以上から、パツリンによって汚染される可能性が高い食品は、「りんご」であることがわかります。
図1 汚染実態調査|国産りんご果汁中のパツリン実態調査(2002-2005年)
出典:農林水産省|個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質)
リスクプロファイルシート>パツリン
汚染実態調査
テーマ5.につづく。。。
ポイント|
【A】は、【B】果汁を汚染するかび毒として国際的に規制対象とされている。【C】にいる【D】の一部が、落果した【B】の傷ついた部分から侵入し、果実の中で増殖して【A】を産生する。Codex委員会は、【B】果汁および原料用【B】果汁の【A】汚染防止・低減のための実施規範を採択、【B】果汁について最大基準値を【E】と設定した(2003年)。日本では、同年、【F】に基づく清涼飲料水の成分規格として、【B】ジュースおよび原料用【B】果汁について、【A】の基準値が【G】(【E】相当)と定められた。【A】のPTDI(暫定耐容一日摂取量)は【H】と設定されている。
A. パツリン
B. りんご
C. 土壌中
D. ペニシリウム属(Penicillium、アオかび)又はアスペルギルス属(Aspergillus、コウジかび)
E. 50 μg/kg
F. 食品衛生法
G. 0.050 ppm
H. 0.4μg/kg体重
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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
楽しく!驚くほど効率的に。
https://note.com/matsunoya_note
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テーマ5. パラジクロロベンゼン|
パラジクロロベンゼンについて解説します。
パラジクロロベンゼンは、一般に防虫剤として使用され、室温では固体の化合物です。
せんい製品防虫剤(パラジクロルベンゼン製剤)としてネオパラエースなどが市販されています。
ネオパラエース 衣類 引き出し・衣装ケース用 防虫剤 400g ネオパラ
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固体から室内空気に昇華するため、パラジクロロベンゼンの規制は、シックハウス対策の推進の一環としての個別の揮発性有機化合物(VOC)の室内濃度指針値があります。
参考資料:文部科学省|室内空気中化学物質の室内濃度指針値及び標準的測定方法等について
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20020410001/t20020410001.html
平成14年2月7日付医薬発第0207002号厚生労働省医薬局長通知
「室内空気中化学物質の室内濃度指針値及び標準的測定方法等について」
パラジクロロベンゼンの室内濃度指針値は、ビーグル犬経口暴露における肝臓及び腎臓等への影響を毒性指標の根拠として、240μg/m3(0.04ppm)とされています。
次に、食品を汚染する可能性について考えてみましょう。
国立医薬品食品衛生研究所|食品衛生関連情報ポータルサイト http://www.nihs.go.jp/hse/food-kkportal/index.html の検疫所関連情報から、輸入食品中の違反事例一覧H23-26を確認しましたが、パラジクロロベンゼンが輸入食品から検出された事例は存在しませんでした。
一方、日清食品HP(日清食品|お知らせ(2008(平成20)年11月20日)「移り香」事案に関する警察・保健所等の調査結果について (まとめ) https://www.nissin.com/jp/news/1473 )によれば、日清食品「カップヌードル」など即席カップ麺から防虫剤成分のパラジクロロベンゼンが検出された事案がありました。
防虫剤を入れた箪笥などの近くに、カップ麺が保管されていたことから、保管時に防虫剤のにおいが移った(移り香)とみられました。
保健所などが、当該商品を製造した各工場への立ち入り検査を行い、工場内におけるパラジクロロベンゼンの使用履歴はなく、また、各工場保管の同一ロット製品からは、パラジクロロベンゼンは検出されなかったとの報告があります。
下記のタイムラインは、2008年に発生した当該事案を上記参考資料からまとめたものです。
■タイムライン
2008(平成20)年|
9月27日|横須賀市保健所 |
当該商品 : CO・OP カップラーメン(明星食品|嵐山工場))
「即席カップ麺を食べようとしたところ薬品臭がした」と申し出 / 残品を検査:パラジクロロベンゼン検出
10月20日|藤沢市保健所|
当該商品 : カップヌードル(日清食品|関東工場)
「即席カップ麺を食べたところ、薬品臭がし、嘔吐及び舌のしびれを呈した。」との相談 / 残品を検査:パラジクロロベンゼン検出
10月24日|日本生活協同組合|
当該商品 : CO・OPヌードル(日清食品|滋賀工場)
日本生活協同組合からお詫びとお知らせ / 過去にパラジクロロベンゼンやナフタレンを検出
10月24日|佐賀中部保健福祉事務所|
当該商品 :カップヌードル(日清食品|下関工場・滋賀工場)
午前9時「即席カップ麺を食べたところ、異味・異臭を感じた。」との相談 / 残品を検査:パラジクロロベンゼン検出
午後1時「即席カップ麺を食べたところ、食後5分くらいに吐き気、嘔吐、下痢の症状を呈した。」との相談 / 残品を検査:パラジクロロベンゼン検出
以上
後述するように、2008(平成20)年1月に、中国産冷凍餃子を原因として有機リン化合物(メタミドホス)に起因すると推察された薬物中毒事案(3家族10名|千葉市2名、市川市5名、兵庫県3名)が、厚生労働省に報告され、その年の報道で世間を賑わせました。
参考資料:厚生労働省|中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kenkoukiki/china-gyoza/index.html
2006(平成18)年のポジティブリスト制度導入から2年目に入る時期で、ポジティブリスト制度導入によって新たに基準が設けられた農薬等の汚染による食品回収事案が情報公開されていました。
加工食品でのメタミドホス等の検査は、科学技術的に検査方法の確立が困難であったことがあり、中国産冷凍餃子では、検疫所、食品メーカー・製造元ではメタミドホスの検査は当時は行われていませんでした。
2008(平成20)年の秋に、即席カップ麺におけるパラジクロロベンゼンの汚染事案が同時多発的に起きた背景には、この年の食品の安全に関する注意喚起等で、化学物質による汚染に対する消費者の意識が高まっていた時代背景が影響したのかもしれません。
防虫剤(パラジクロロベンゼンなど固体から昇華する有機化学物質)の「移り香」は、論点として問われることがあります。覚えておきましょう。
テーマ5.につづく。。。
ポイント|
【A】は、一般に【B】として使用され、室温では【C】の化合物である。せんい製品【B】(【A】製剤)として市販されている。【C】から室内空気に【D】するため、【E】対策の一環として、個別の【F】の【G】がある。【A】の【G】は、ビーグル犬経口暴露における肝臓及び腎臓等への影響を毒性指標の根拠として、【H】とされている。
即席カップ麺から【A】が検出された事案(平成20年)では、【B】を入れた箪笥などの近くに、カップ麺が保管されていたことから、汚染原因は、保管時に【A】の【I】であったと結論された。
A. パラジクロロベンゼン
B. 防虫剤
C. 固体
D. 昇華
E. シックハウス
F. 揮発性有機化合物(VOC)
G. 室内濃度指針値
H. 240μg/m3(0.04ppm)
I. においが移ったこと(移り香)
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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
楽しく!驚くほど効率的に。
https://note.com/matsunoya_note
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テーマ6. メタミドホス|
メタミドホスについて解説します。
化学構造式は PubChem で確認するとよいです。薬剤師国家試験では有機リン系化合物など農薬の化学構造式を問われることがあります。IUPAC名は、[amino(methylsulfanyl)phosphoryl]oxymethane です。
出典:PubChem|Methamidophos
出典:Wikipedia メタミドホス
テーマ1で前述したように、メタミドホスは有機リン系化合物のひとつで、日本では農薬登録されていません。
他方、殺虫剤として農薬登録している国もあり、輸入品では残留農薬の検査対象となる場合があります。有機リン系殺虫剤であるアセフェートが植物・動物体内で代謝されることによっても生成します。
食品安全委員会のメタミドホス評価書(2016(平成28)年 https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20160209501 )から引用して解説します。
有機リン化合物であるメタミドホスは、コリンエステラーゼ活性阻害作用を有し、ある程度以上経口摂取すると、胃けいれん、けいれん、下痢、吐き気、嘔吐などがみられます。
急性毒性の見地からのメタミドホスのARfD(急性参照量;一日ここまで経口摂取しても健康に悪影響が出ない量)は 3μg/kg体重/日です。
一方、メタミドホスのADI(許容一日摂取量;毎日一生食べ続けても健康に悪影響がでない量)は 0.56μg/kg体重/日です。体重が60kgであれば、慢性毒性の見地から、1日に摂取してよいメタミドホスの量は33.6μgと算定されます。
上記参考資料によれば、メタミドホスの主な毒性は脳および赤血球のコリンエステラーゼ活性阻害です。発がん性・遺伝毒性は認められませんでした。
次に、食品を汚染する可能性について考えてみましょう。
国立医薬品食品衛生研究所|食品衛生関連情報ポータルサイト http://www.nihs.go.jp/hse/food-kkportal/index.html の検疫所関連情報から、輸入食品中の違反事例一覧H20-26を確認すると、メタミドホス関連の違反事例は45件認められ、その内訳は、図1に示した通り、食品としては、アボカド(23件)、人参ジュース(11件)、キノア(6件)、オクラ、小麦粉、ミックスベジタブル、そば、ゴマ(各1件)でした。
以上のように、平成20年-平成26年の輸入食品中違反事例(7年間:8299レコード)の結果から、コメのメタミドホス違反事例は認められませんでした。
したがって、ポジティブ制度導入後の輸入米では、メタミドホスは米を汚染する可能性が高い有害化学物質ではないと考えられます。
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化学物質による汚染/第100回-問123(3)
|薬剤師国家試験対策ノート
https://youtu.be/__iDsQUc33g
図1 厚生労働省が公開する輸入食品中の違反事例に基づくメタミドホス違反事例一覧(平成20-平成26)
※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より
出典:国立医薬品食品衛生研究所|食品衛生関連情報ポータルサイト http://www.nihs.go.jp/hse/food-kkportal/index.html
メタミドホスによる食品の汚染は、その毒性による被害の大きさから、化学物質による汚染に起因した食中毒事案として報道されることによる社会的なインパクトが高いのですが、上述のように、近年のコメでは違反事例が検出される可能性は低いと思われます。
なお、国内で使用が禁止されている農薬であることから、国内で農薬として散布されることはないので、国産米での検出は、アセフェート由来のもの以外は、通常は残留が想定されません。
メタミドホスは、平成20年1月に、中国産冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害事例で、その原因物質として報道されました。
参考資料:厚生労働省|中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kenkoukiki/china-gyoza/index.html
平成18年のポジティブリスト制度導入に伴って、多数の農薬に関する残留農薬の一斉分析が食品検査の要求事項となりました。その2年後の2008(平成20)年は、残留農薬基準の制度がネガティブリスト制度からポジティブリスト制度に変換され2年経過した時期です。
食品衛生法に基づく食品における残留農薬の違反事例や回収などの新たな公開情報に対する消費者の関心が高い中、残留基準に適合させるためのシステムの整備が食品業界と政府によって、はかられつつあった時代です。
この時代背景から、平成20年のメタミドホスをめぐる社会問題が発生したとも考えられます。
おまけ|
2008(平成20)年当時、実際に中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案に大阪市の職員として関わったひとの解説(科学論文)が J-Stage にありました。
より詳細な経緯が記載されています。
時間にゆとりがある人はご一読をお勧めします。
加工食品では科学的に定量が困難であったメタミドホスおよびその他の検出された農薬を定量するために前処理を工夫したときの条件なども書いてありました。
薬剤師国家試験を受験する薬学生の皆さんにとっては文献を読解する力を養うのにちょうど良い文献だと思います。
中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事案を解明するために取り組んだ担当者になったつもりでその道筋をたどってみよう。
生活衛生/52 巻 (2008) 4 号
解説|中国産冷凍ギョウザへの農薬混入事件がもたらしたもの
― 分析に携わった立場から ―
山口 之彦 大阪市立環境科学研究所
2008 年 52 巻 4 号 p. 215-220
DOI https://doi.org/10.11468/seikatsueisei.52.215
以上で、6つのテーマからの論点解説は完了です!
すでにテーマ1で解説したように、平成20年9月の輸入米における事故米穀の不正規流通事案において、事故米穀となった主な汚染原因はメタミドホスでした。
メタミドホスが基準値超過したこの米穀は平成15年に輸入したもので、その時点の食品衛生法にはメタミドホスに関する基準がなく適法に輸入したものの、ポジティブリスト制度の導入によって平成18年に基準が新設され、その後の検査により残留が確認されて事故米穀とされたものです。
問100-123では、正解の1つとされましたが、これまでの解説で述べたように、メタミドホスは、平成20年以降の近年の傾向において、コメを汚染する可能性が高い化学物質とは考えられません。
気づきがカイゼンに繋がります!
まとめます。
食品の安全を論点として化学物質による汚染をテーマとした設問は、多岐にわたり、完全攻略が難しい問題の一つです。
オススメの対策|
1. 食品安全委員会のファクトシートおよび評価書並びに農林水産省のリスクプロファイルシート等から基本的知識を得ておくこと
2. 検疫所の輸入食品の違反事例(統計データ)または、農林水産省や厚生労働省の近年の報道発表資料( https://www.maff.go.jp/j/press/index.html 、 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/index.html )から社会的影響が重大な事案または検査値統計のトレンドにアンテナを伸ばしておくこと
3. 実用的な方法としては、SNSのTwitterやFacebookで、厚生労働省、農林水産省、環境省、食品安全委員会等の公式アカウントや、新聞社の健康、医療、科学関係のアカウントのニュースフィードをチェックすることも、社会的影響を量的、質的にスケーラブルに認識するうえで有効
4. 「薬剤師国家試験対策ノート」シリーズ / 走る!「衛生」の松廼屋|論点解説で、サクッと実力アップを図る
ポイント|
【A】は日本では【B】されていない【C】化合物である。【D】として【B】している国もあり、【C】農薬である【D】の【E】が植物・動物体内で代謝されることによっても生成する。【F】作用を有し、ある程度以上経口摂取すると、【G】がみられる。
平成20年9月の輸入米における【H】の不正規流通事案において、【H】となった主な汚染原因は【A】であり、一方、【A】は、平成20年1月の【I】が原因と疑われる健康被害事例でその原因物質と断定された。
【A】に汚染されている可能性が高い輸入食品は、平成20年から7年間の違反事例から、【J】であり、輸入米に【A】による汚染は確認されなかった。
A. メタミドホス
B. 農薬登録
C. 有機リン系
D. 殺虫剤
E. アセフェート
F. コリンエステラーゼ活性阻害
G. 胃けいれんやけいれん、下痢、吐き気、嘔吐
H. 事故米穀
I. 中国産冷凍ギョウザ
J. アボカド、にんじん等
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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢|
1. ベンゾ〔a〕ピレン
2. アフラトキシンB1
3. パツリン
4. パラジクロロベンゼン
5. メタミドホス
(論点:食品の安全 / 化学物質による汚染)
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きっと、いいことあると思う。
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