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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 107-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:原発性肺腺がん / ALK融合遺伝子 / クリゾチニブ / アレクチニブ

第107回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問218-219

一般問題(薬学実践問題)


【物理・化学・生物、衛生/実務】

■複合問題|問 107-218-219

Q. 60歳女性。右上葉原発性肺腺がんと診断され、右上葉切除術が施行された。その後、術後補助化学療法が施行され経過観察となった。術後4年経過時、胸部CT写真で右鎖骨上窩リンパ節に転移が認められ、再発と診断された。ALK融合遺伝子陽性が確認されたため、クリゾチニブ250mg、1日2回の投与による治療が開始された。投与13日目時点でリンパ節の腫瘍は縮小傾向を認めた。各時点における主な検査値は以下のとおりである。


肝機能検査値 | 投与前 | 8日目 | 13日目|
AST(IU/L) | 30 | 100 | 350|
ALT(IU/L) | 30 | 120 | 400|
ALP(IU/L) | 200 | 600 | 2000|
総ビリルビン(mg/dL) | 1.0 | 1.1 | 1.3|


実務

問 107-218|実務
Q. 医師との合同カンファレンスにおいて、医師から薬剤師へ投与13日目以降の薬物治療について意見を求められた。薬剤師の提案として、適切なのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 本剤の投与を同一用量のまま継続し、他剤の追加は行わない。
2. 本剤の投与を同一用量のまま継続し、グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物を追加する。
3. 本剤の投与を中止し、緩和ケアのみの治療へ変更する。
4. 本剤の投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩へ変更する。
5. 本剤の投与を休止し、ソラフェニブトシル酸塩へ変更する。


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物理・化学・生物

問 107-219|生物
Q. 本症例では、遺伝子変異により生じたALK融合遺伝子及びALK融合タンパク質が検出されている。がんとこの遺伝子変異に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
■選択肢
1. この患者のがん細胞では、染色体上、ALK遺伝子の一部分に逆位が生じている。
2. この患者のALK融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が亢進している。
3. この患者では、ALK融合遺伝子が親から遺伝したと考えられる。
4. この患者のALK融合遺伝子は、フィラデルフィア染色体の形成により生じる。
5. ALK融合遺伝子の検出にはELISA法が用いられる。


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こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。

matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、【物理・化学・生物、衛生/実務】 の複合問題を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第107回薬剤師国家試験|薬学実践問題 / 問218-219、論点:肺炎球菌ワクチン / 不活化ワクチン / 莢膜多糖 / 予防接種法 / 救済制度 / 基礎疾患 / 保存方法 / 投与経路 / 混合投与を徹底解説します。

薬剤師国家試験対策ノート NOTE ver.
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 107-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:原発性肺腺がん / ALK融合遺伝子 / クリゾチニブ / アレクチニブ|matsunoya

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このコンテンツの制作者|

滝沢 幸穂  Yukiho Takizawa, PhD

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設問へのアプローチ|

薬学実践問題は原本で解いてみることをおすすめします。
まずは、複合問題や実務の問題の構成に慣れることが必要だからです。
薬学実践問題は薬剤師国家試験2日目の①、②、③ の3部構成です。
今回の論点解説では2日目を取り上げています。


厚生労働省|過去の試験問題👇

第109回(令和6年2月17日、2月18日実施)
第108回(令和5年2月18日、2月19日実施)
第107回(令和4年2月19日、2月20日実施)
第106回(令和3年2月20日、2月21日実施)


第107回薬剤師国家試験 問218-219(問107-218-219)では、ALK融合遺伝子陽性肺がんに関する知識を生物および実務のそれぞれの科目の視点から複合問題として問われました。


複合問題は、各問題に共通の冒頭文とそれぞれの科目別の連問で構成されます。
冒頭文は、問題によっては必要がない情報の場合もあるため、最初に読まずに、連問すべてと選択肢に目を通してから、必要に応じて情報を取得するために読むようにすると、時間のロスが防げます。
1問、2分30秒で解答できればよいので、いつも通り落ち着いて一問ずつ別々に解けば大丈夫です。
出題範囲は、それぞれの科目別の出題範囲に準じています。
連問と言ってもめったに連動した問題は出ないので、平常心で取り組んでください。


💡ワンポイント

複合問題ですが、問107-218-219を解くうえで必要な情報は、黄色い線で示した部分です。
それ以外の情報取得は必要がないです。読んでいると時間のロスに繋がります。

問107-218-219 論点解説|matsunoya_note

問107-218および問107-219は、ALK融合遺伝子陽性肺がんに関する記述の正誤を問う問題です。
病態と薬物治療の理解が必要です。

冒頭文で必要な情報は、
診断(ALK融合遺伝子陽性肺がん)と
処方(クリゾチニブ)
投与13日後の検査結果(肝機能)
です。


問 107-218|実務
本剤の投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩へ変更する。(選択肢4)[正しい]👽

…❓👉❌😱


薬剤師国家試験の出題基準において、がん診療ガイドラインをどこまで理解していることを求めることが適切かについては、厳にコントロールが必要なテーマですし、議論が十分になされて、標準化された形で出題されるべきです。

クリゾチニブの代替として、アレクチニブへの変更を提案するという正答を選択させることは、基礎的な知識やオーソライズされ標準化された薬物治療の知識を問う出題基準から逸脱していると考えられます。

こうした問題設計に関しては、制御が必要です。
また、レビュワーが責任者に差し戻して、指導と修正の指示をするプロセスが必要です。
誰にも解けない問題を出して、ゼロ点合格のベクトルを強力に推進していると推察されても仕方がない出題内容です。


薬物治療の科学的な根拠としては、がんの領域では下記のガイドラインがあります。エビデンスベースで書かれており、方針が明確です。

がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会

クリゾチニブおよびアレクチニブのシステマティックレビューに基づく治療方針が記載されています。
作問にあたっては、少なくとも、こうしたこうしたガイドラインを参照し、そのニュアンスに忠実な記述の問題とする必要があります。

以下部分的に抜粋します。
単純ではないですし、長いロジックとエビデンスに対する考察と判断が記載されています。

第1部 肺癌診療ガイドライン 2021 年版 ガイドライン本文 ・非小細胞肺癌(NSCLC)

また、クリゾチニブおよびアレクチニブの医療用医薬品添付文書の記載に忠実な記述の問題とする必要もあると思います。

PMDA 医療用医薬品添付文書 クリゾチニブ
製造販売元/ファイザー株式会社 ザーコリカプセル200mg/ザーコリカプセル250mg

PMDA 医療用医薬品添付文書 アレクチニブ塩酸塩
製造販売元/中外製薬株式会社 アレセンサカプセル150mg

どちらにしても、今回の問218は、エビデンスベースでのアプローチにおける標準操作手順のニュアンスからは逸脱しているように見受けられます。

また、一般に、肝機能障害のある患者への薬物投与は、肝臓で代謝される薬物の場合は特に、血中濃度の上昇が推察されるため、慎重に検討する必要があります。
アレクチニブは、CYP3A4/5が主な薬物代謝酵素です。

検査結果から、この患者は、ALTおよびASTが基準値上限の5倍以上(約10倍)になっている状態です。肝機能障害があります。

問107-218-219 論点解説|matsunoya_note

既に肝障害がある場合、下記の医療用医薬品添付文書の用法及び用量に関連する注意に準じた検討が必要です。
副作用発現時の用量調節基準で見ると
「ALT又はASTがベースライン又は基準値上限の3倍以下に回復するまで休薬する。」
が正しいです。

以下、アレクチニブ塩酸塩の医療用医薬品添付文書から抜粋します。

7. 用法及び用量に関連する注意

〈ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法〉
副作用が発現した場合には、以下の基準を考慮して、休薬、減量又は中止すること。

肝機能障害
総ビリルビンが基準値上限の2倍以下でALT又はASTが基準値上限の5倍を超える上昇|ALT又はASTがベースライン又は基準値上限の3倍以下に回復するまで休薬する。回復後は1用量レベル減量して投与再開できる。
総ビリルビンが基準値上限の2倍を超えALT又はASTが基準値上限の3倍を超える上昇|投与を中止する。

PMDA 医療用医薬品添付文書 アレクチニブ塩酸塩
製造販売元/中外製薬株式会社 アレセンサカプセル150mg

9. 特定の背景を有する患者に関する注意
** 9.3 肝機能障害患者

〈効能共通〉
9.3.1
肝機能障害が増悪するおそれがある。[8.2 参照],[11.1.2 参照]
アレクチニブの血漿中濃度が上昇するとの報告がある。[16.6.1 参照]

〈ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法〉
9.3.2 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者
減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。アレクチニブの血漿中濃度が上昇し、副作用が増強されるおそれがある。[16.6.1 参照]

18. 薬効薬理

* 18.1 作用機序

ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌及び未分化大細胞リンパ腫では、ALKチロシンキナーゼ活性が異常に亢進しており、癌化及び腫瘍増殖に関与している。アレクチニブは、ALKチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、ALK融合遺伝子陽性の腫瘍細胞の増殖を抑制する21)

18.2 抗腫瘍効果

アレクチニブ及び主要代謝物(M-4)は、ALK融合遺伝子陽性のヒト非小細胞肺癌由来NCI-H2228細胞株の細胞増殖を抑制した12)。また、アレクチニブは、NCI-H2228細胞株を皮下移植した重症複合型免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した21)


🫛豆知識① ソラフェニブトシル酸塩

問 107-218|実務
本剤の投与を休止し、ソラフェニブトシル酸塩へ変更する。(選択肢5)[誤り]

下記の医療用医薬品添付文書に示されている通り、ソラフェニブトシル酸塩は、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌に適用される抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤です。
ソラフェニブトシル酸塩は、腫瘍進行に関与するC-Raf、正常型及び変異型B-Rafキナーゼ活性、並びにFLT-3、c-KITなどの受容体チロシンキナーゼ活性を阻害し、さらに、腫瘍血管新生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体、血小板由来成長因子(PDGF)受容体などのチロシンキナーゼ活性を阻害した、と記載があります。

出典:

PMDA 医療用医薬品添付文書 ソラフェニブトシル酸塩
製造販売元/バイエル薬品株式会社 
以下抜粋します。


薬効分類名

抗悪性腫瘍剤/キナーゼ阻害剤

4. 効能又は効果

  • 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌

  • 切除不能な肝細胞癌

  • 根治切除不能な甲状腺癌

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

In vitro試験において、本剤は腫瘍進行に関与するC-Raf、正常型及び変異型B-Rafキナーゼ活性、並びにFLT-3、c-KITなどの受容体チロシンキナーゼ活性を阻害した。さらに、本剤は腫瘍血管新生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体、血小板由来成長因子(PDGF)受容体などのチロシンキナーゼ活性を阻害した。
In vivo試験では、本剤は腎細胞癌及び肝細胞癌細胞株を用いた担癌マウスにおいて、腫瘍組織中の血管新生を抑制した。また、肝細胞癌細胞株を用いた担癌マウスでは、腫瘍細胞のERKリン酸化を抑制し、アポトーシスを誘導した30),31),32)

18.2 抗腫瘍効果

本剤は腎細胞癌細胞株(RENCA、786-O)及び肝細胞癌細胞株(PLC/PRF/5)を移植したマウスにおいて腫瘍の増殖を抑制した。さらに、k-ras又はb-rafの変異を有するヒト由来腫瘍の他、EGFR等の増殖因子受容体を過剰発現している腫瘍の担癌マウスにおいても、腫瘍増殖を抑制した30),31),32)


🫛豆知識② STEMをおぼえよう。

-nib|チロシンキナーゼ阻害薬

がん治療において細胞増殖を阻害する
例:イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ

よろしければこちらもどうぞ。
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート【複合問題】番外編 論点:STEMとは: 医薬品名の主要なSTEM一覧|matsunoya


チロシンキナーゼ阻害といっても、様々な薬理作用機序があり、それに従って様々な臨床試験のエビデンスがあり、承認された様々な効能又は効果があります。
薬剤師国家試験において、チロシンキナーゼ阻害薬の知識をどこまでを問うかは、厳にコントロールされる必要があります。
議論をし、その議論の内容を公開すべきです。
もちろん、各論に至るまで既に標準化されていて然るべきではないでしょうか。
時間がなかったわけではないからです。


まず基本的な知識について復習しておきましょう。

■■GPT4o


ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの
病態と薬物治療 概説


1. 病態の概要

非小細胞肺がん(NSCLC)の約3~7%では、ALK(anaplastic lymphoma kinase)融合遺伝子が検出されます。
この遺伝子異常は、特に腺がんタイプの若年非喫煙者において頻繁に確認されます。

  • ALK融合遺伝子の形成

    • 染色体逆位により、ALK遺伝子と他の遺伝子(例:EML4)が融合します。

    • この結果、制御不能なチロシンキナーゼ活性を持つ融合タンパク質が生成され、腫瘍形成を促進します。

  • 活性化経路

    • 主にPI3K/AKT、MAPK/ERK経路、STAT3経路が亢進し、腫瘍細胞の増殖・生存に寄与します。

  • 臨床像

    • ALK融合陽性NSCLC患者は、肺腺がんであることが多く、早期には症状が乏しい場合もありますが、進行すると体重減少、呼吸困難、転移による症状が出現します。


2. 診断

  • 遺伝子検査

    1. FISH(fluorescence in situ hybridization)
      ALK遺伝子の転座や融合を検出するゴールドスタンダード。

    2. RT-PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)
      融合遺伝子の発現を検出。

    3. 次世代シークエンシング(NGS)
      包括的な遺伝子異常の解析が可能。


3. 治療の選択肢

ALK阻害薬は、標的治療の中核を成し、治療開始後は迅速かつ持続的な腫瘍縮小効果を示します。

  1. 第一世代

    • クリゾチニブ

      • ALK融合タンパク質に対するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)。

      • 臨床試験(PROFILE 1014)で、化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)が大幅に延長されることが証明されています。

      • 限界:中枢神経系(CNS)転移に対する効果が限定的。

  2. 第二世代

    • アレクチニブセリチニブブリグチニブ

      • クリゾチニブ抵抗性患者においても有効。

      • CNS浸潤への高い有効性を持ち、アレクチニブは特に第一選択として推奨されています(ALEX試験)。

  3. 第三世代

    • ロルラチニブ

      • ALK阻害薬に対する複数の耐性変異に有効。

      • CNS浸潤がある症例においても、良好な治療効果を示します。


4. 耐性と対策

  • 耐性メカニズム

    • ALK遺伝子の二次変異
      治療薬が結合する領域の変異(例:G1202R)。

    • シグナル経路の切り替え
      EGFRやKRAS経路の活性化。

  • 対策

    • ALK阻害薬の変更や、免疫チェックポイント阻害薬の併用が試みられます。


5. 副作用の管理

  • 一般的な副作用

    • 肝機能障害、間質性肺炎、心毒性。

  • 管理方法

    • 軽度~中等度の障害では、投与量の調整。重度の場合は治療中止が推奨されます。


文献リスト

  1. Solomon, B. J., Mok, T., Kim, D. W., et al. (2014). First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer. New England Journal of Medicine, 371(23), 2167-2177.

  2. Camidge, D. R., Kim, H. R., Ahn, M. J., et al. (2018). Brigatinib versus crizotinib in ALK-positive non-small-cell lung cancer. New England Journal of Medicine, 379(21), 2027-2039.

  3. Gadgeel, S. M., Shaw, A. T., Govindan, R., et al. (2018). Alectinib versus crizotinib in treatment-naive ALK-positive non-small-cell lung cancer: CNS efficacy results from the ALEX study. Journal of Clinical Oncology, 36(25), 3297-3304.


患者の所見および検査値と
正常範囲、考察


1. 患者の所見

  • 年齢・性別: 60歳女性

  • 基礎疾患: 右上葉原発性肺腺がん

  • 治療経過:

    1. 右上葉切除術を実施

    2. 術後補助化学療法を受け経過観察

    3. 術後4年経過時、右鎖骨上窩リンパ節への転移がCTで確認され、再発と診断

  • 遺伝子情報: ALK融合遺伝子陽性

  • 治療: クリゾチニブ250mg、1日2回(13日間経過時点)


2. 肝機能検査値の抽出と正常範囲

検査項目|投与前|8日目|13日目|正常範囲
AST(IU/L)|30|100|350|13~33
ALT(IU/L)|30|120|400|7~42
ALP(IU/L)|200|600|2000|38~113
総ビリルビン(mg/dL)|1.0|1.1|1.3|0.2~1.2


3. 考察

(1) AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

  • 観察:
    投与前は正常値内(30 IU/L)であったが、8日目に100 IU/L、13日目に350 IU/Lと著明に上昇。

  • 考察:
    ASTの急激な上昇は、肝細胞障害を示唆。クリゾチニブの肝毒性の可能性が考えられる。

(2) ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

  • 観察:
    投与前は正常値内(30 IU/L)であったが、8日目に120 IU/L、13日目に400 IU/Lと急激に上昇。

  • 考察:
    ALTは肝細胞傷害をより特異的に反映するため、ASTと同様にクリゾチニブによる肝障害が疑われる。

(3) ALP(アルカリホスファターゼ)

  • 観察:
    投与前200 IU/Lと軽度上昇、8日目600 IU/L、13日目2000 IU/Lと著しい上昇。

  • 考察:
    ALPは胆道系障害の指標。胆汁うっ滞型の肝障害または腫瘍の進展による影響の可能性がある。

(4) 総ビリルビン

  • 観察:
    投与前1.0 mg/dL、8日目1.1 mg/dL、13日目1.3 mg/dLとわずかな上昇。

  • 考察:
    軽度の上昇だが、AST・ALT・ALPの変動に比べて小さいため、肝機能の低下よりも他因性の影響の可能性が高い。

(5) 全体的な解釈

  • 原因として疑われるもの:

    • クリゾチニブの肝毒性(重篤な肝障害のリスクが既知)。

    • 原発疾患(肺腺がん)の進行や転移が肝機能に与えた影響。

    • 合併症として胆汁うっ滞や炎症が発生している可能性。

  • 臨床的対応の必要性:

    • クリゾチニブの投与継続は肝障害の進行を助長する可能性が高い。治療の中断や他剤への切り替え(例:アレクチニブ)を検討すべき。


文献リスト

  1. Shaw, A. T., Kim, D. W., Mehra, R., et al. (2014). Ceritinib in ALK-rearranged non-small-cell lung cancer. New England Journal of Medicine, 370(13), 1189-1197.

  2. Solomon, B. J., Mok, T., Kim, D. W., et al. (2014). First-line crizotinib versus chemotherapy in ALK-positive lung cancer. New England Journal of Medicine, 371(23), 2167-2177.

  3. Gadgeel, S. M., Shaw, A. T., Govindan, R., et al. (2018). Alectinib versus crizotinib in treatment-naive ALK-positive non-small-cell lung cancer: CNS efficacy results from the ALEX study. Journal of Clinical Oncology, 36(25), 3297-3304.

  4. FDA. (2011). Xalkori (crizotinib) prescribing information. Available at: [FDA Website].


論点およびポイント

■■GPT4o


問107-218|実務
論点| ALK融合遺伝子陽性肺がん / 肝障害 / クリゾチニブ治療 / アレクチニブ切り替え
ポイント|

  • ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者に対する治療では、クリゾチニブが第一選択となるが、肝機能障害が重大な副作用として現れることがある。

  • 本症例では、投与13日目に肝機能マーカー(AST、ALT、ALP)が著しく上昇しており、クリゾチニブ継続は危険と判断される。

  • アレクチニブは、クリゾチニブ不耐容または効果不十分な症例で推奨される次世代ALK阻害薬であり、肝障害のリスクが低減されている。

  • 他剤(ソラフェニブ)は、作用機序が異なるため、ALK陽性腫瘍には効果が期待できない。

  • 適切な薬剤選択には、患者の腫瘍遺伝子背景や薬剤の安全性プロファイルを考慮する必要がある。


問107-219|生物
論点| ALK融合遺伝子 / 染色体逆位 / チロシンキナーゼ活性化 / 分子検査技術
ポイント|

  • ALK融合遺伝子は染色体の逆位や転座によって形成され、肺腺がんの約5%に関連している。

  • この融合遺伝子により、ALKタンパク質のチロシンキナーゼ活性が恒常的に亢進し、細胞増殖や腫瘍形成を促進する。

  • 遺伝性ではなく体細胞変異によるものであり、親から遺伝するものではない。

  • ALK融合遺伝子の検出には、FISH法やNGSが用いられるが、ELISAは遺伝子検出には適していない。

  • フィラデルフィア染色体(BCR-ABL)は慢性骨髄性白血病(CML)に関連しており、ALK融合遺伝子とは無関係である。


薬剤師国家試験 出題基準

出典: 薬剤師国家試験のページ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

出題基準 000573951.pdf (mhlw.go.jp) 


論点を整理します。

■■GPT4o


総合的な論点


問 107-218(実務)

本症例では、ALK融合遺伝子陽性の肺腺がん患者にクリゾチニブが投与されているが、治療開始後13日目に肝機能検査値(AST、ALT、ALP)が著しく上昇している。
このような肝機能障害の進行は、クリゾチニブの主要な副作用の一つであり、早期の対処が必要である。
肝機能障害が進行すると、患者の治療継続が困難になるだけでなく、生命予後に悪影響を及ぼす可能性がある。

肝障害の原因が薬剤性である場合、適切な措置として以下が考慮される:

  1. 原因薬剤の休止または中止。

  2. 肝障害を回復させるための支持療法。

  3. 代替治療薬への変更。

本症例では、クリゾチニブの継続、代替薬への変更、緩和療法への移行などが選択肢として挙げられているが、適切な判断には、患者の肝機能状態、病状の進行具合、および代替治療薬の効果や安全性の評価が必要となる。

  1. クリゾチニブの副作用
    クリゾチニブは、ALK融合タンパク質を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるが、治療中に肝障害が高頻度で報告されている。AST、ALT、ALP、総ビリルビン値の上昇は、薬物性肝障害の典型的なパラメータである。

  2. 代替薬
    アレクチニブ(選択肢4)は、ALK陽性非小細胞肺がんに有効性が確認されている第2世代TKIであり、肝障害リスクが比較的低いことが知られている。

エビデンスに基づき、肝障害が確認された場合には、代替薬への変更を検討するのが適切である。


各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法


選択肢1:本剤の投与を同一用量のまま継続し、他剤の追加は行わない。

  • 論点
    肝機能検査値(AST、ALT、ALP)の著しい上昇が確認されている状況で、薬剤を継続することは肝障害の悪化リスクを高める可能性がある。

  • アプローチ方法
    肝障害が薬物性である可能性が高いことから、この選択肢は不適切と判断される。治療方針を再評価し、肝機能を回復させるための対応が必要である。

選択肢2:本剤の投与を同一用量のまま継続し、グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物を追加する。

  • 論点
    グリチルリチン製剤などの肝保護薬は、薬物性肝障害における補助療法として有用だが、原因薬剤の継続は肝機能悪化のリスクを残す。

  • アプローチ方法
    肝保護薬の投与だけでは、クリゾチニブによる肝障害を十分に制御できない可能性があるため、肝機能障害が軽減しない場合には薬剤の休止または中止を検討する必要がある。

選択肢3:本剤の投与を中止し、緩和ケアのみの治療へ変更する。

  • 論点
    本剤の中止は肝機能障害の軽減には寄与するが、緩和ケアのみへの移行は患者の腫瘍制御を放棄することを意味する。

  • アプローチ方法
    患者の治療目標を考慮し、代替治療薬(アレクチニブなど)を用いた腫瘍制御を試みるのが望ましい。本選択肢は最終手段として位置づけられるべきである。

選択肢4:本剤の投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩へ変更する。

  • 論点
    アレクチニブはALK陽性非小細胞肺がんに対する第2世代TKIであり、クリゾチニブに比べて肝障害リスクが低いとされる。また、腫瘍制御効果が確認されている。

  • アプローチ方法
    本選択肢は、肝機能障害を軽減しつつ腫瘍制御を継続するための最も合理的な対応であると考えられる。

選択肢5:本剤の投与を休止し、ソラフェニブトシル酸塩へ変更する。

  • 論点
    ソラフェニブは、マルチキナーゼ阻害薬であり、ALK融合遺伝子陽性肺がんには適応外である。

  • アプローチ方法
    腫瘍制御効果が期待できないため、不適切と判断される。


引用文献

  1. Pfizer. (2023). "XALKORI (Crizotinib) Prescribing Information."
    クリゾチニブの副作用(特に肝障害)およびその管理方法について記載されている。

  2. Sasaki H, et al. (2017). "Characteristics of the second-generation ALK inhibitor alectinib in lung cancer." Annals of Oncology.
    アレクチニブの有効性および安全性に関する臨床試験データが含まれている。

  3. FDA. (2022). "Drug Safety Information for ALK inhibitors in NSCLC."
    ALK阻害薬に関する安全性情報および肝障害リスクの比較。


問 107-219(生物)

本症例では、ALK融合遺伝子陽性の肺腺がんが確認されている。
この遺伝子変異は、染色体再構成による逆位や転座によって生じ、異常なALK融合タンパク質を形成する。
これにより、チロシンキナーゼ活性が異常に亢進し、細胞増殖シグナルが制御不能になり、腫瘍の形成および進展が引き起こされる。

ALK融合遺伝子を検出するためには、分子生物学的技術が用いられる。
代表的な手法には、FISH法(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)や次世代シークエンシング(NGS)があり、これらにより遺伝子変異を高感度で特定できる。

  1. ALK融合遺伝子の発生機構
    逆位や転座が染色体異常を引き起こし、異常なALK融合遺伝子が形成されることが広く報告されている。

  2. ALK融合タンパク質の役割
    チロシンキナーゼ活性の亢進は、RAS/RAF/MEKやPI3K/AKT/mTORなどの下流シグナルを活性化し、腫瘍細胞の成長や増殖を促進する。

  3. 検出技術
    FISH法およびNGSは、ALK融合遺伝子の検出において標準的な技術として使用されており、腫瘍治療の選択に重要な役割を果たす。


各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法


選択肢1:この患者のがん細胞では、染色体上、ALK遺伝子の一部分に逆位が生じている。

  • 論点
    ALK融合遺伝子の形成は、染色体の逆位や転座によるものが多い。特に、非小細胞肺がん(NSCLC)の場合、染色体2番上の逆位によるEML4-ALK融合が典型的である。

  • アプローチ方法
    この記述は、臨床および分子生物学的なエビデンスに基づいて正しいと判断できる。

選択肢2:この患者のALK融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が亢進している。

  • 論点
    ALK融合タンパク質は、チロシンキナーゼ活性が常に活性化された状態にあるため、腫瘍細胞の増殖や生存に寄与する。

  • アプローチ方法
    この記述は、ALK陽性腫瘍の病態生理に基づいて正しいと判断される。

選択肢3:この患者では、ALK融合遺伝子が親から遺伝したと考えられる。

  • 論点
    ALK融合遺伝子は体細胞変異により発生するものであり、遺伝的に親から引き継がれるものではない。

  • アプローチ方法
    遺伝性ではなく後天的な変異であるため、この記述は誤りである。

選択肢4:この患者のALK融合遺伝子は、フィラデルフィア染色体の形成により生じる。

  • 論点
    フィラデルフィア染色体は、慢性骨髄性白血病(CML)で見られるBCR-ABL融合遺伝子に関連しており、ALK融合遺伝子とは無関係である。

  • アプローチ方法
    記述の対象疾患が異なるため、この選択肢は誤りである。

選択肢5:ALK融合遺伝子の検出にはELISA法が用いられる。

  • 論点
    ALK融合遺伝子の検出にはFISH法やNGSが用いられるが、ELISA法は通常、タンパク質レベルの検出に使用される。

  • アプローチ方法
    遺伝子レベルの検出手法としては不適切であり、この選択肢は誤りである。


引用文献

  1. Soda, M., et al. (2007). "Identification of the transforming EML4-ALK fusion gene in non-small-cell lung cancer." Nature.
    ALK融合遺伝子の発見とその機能について詳述。

  2. Shaw, A. T., et al. (2014). "Crizotinib in ROS1-rearranged non-small-cell lung cancer." New England Journal of Medicine.
    ALK融合遺伝子に関連した肺がん治療の臨床データを含む。

  3. Solomon, B., et al. (2018). "Clinical and molecular characteristics of ALK-positive lung cancer." Annals of Oncology.
    ALK融合遺伝子の臨床的意義と分子メカニズムを概説。

  4. Tsao, M-S., et al. (2017). "Molecular testing in lung cancer in the era of precision medicine." Lancet Respiratory Medicine.
    分子診断技術(FISH法、NGS)の概要と適用例。


以上で、論点整理を終わります。
理解できたでしょうか?


大丈夫です。
完全攻略を目指せ!


はじめましょう。

薬剤師国家試験の薬学実践問題【複合問題】から肺炎球菌ワクチン / 不活化ワクチン / 莢膜多糖 / 予防接種法 / 救済制度 / 基礎疾患 / 保存方法 / 投与経路 / 混合投与を論点とした問題です。


なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形で GPT4o & Copilot 、Gemini 2、または Grok 2 が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。

生成AIの製造元がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。

Here we go.


第107回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問218-219

一般問題(薬学実践問題)


【物理・化学・生物、衛生/実務】

■複合問題|問 107-218-219

Q. 60歳女性。右上葉原発性肺腺がんと診断され、右上葉切除術が施行された。その後、術後補助化学療法が施行され経過観察となった。術後4年経過時、胸部CT写真で右鎖骨上窩リンパ節に転移が認められ、再発と診断された。ALK融合遺伝子陽性が確認されたため、クリゾチニブ250mg、1日2回の投与による治療が開始された。投与13日目時点でリンパ節の腫瘍は縮小傾向を認めた。各時点における主な検査値は以下のとおりである。


肝機能検査値 | 投与前 | 8日目 | 13日目|
AST(IU/L) | 30 | 100 | 350|
ALT(IU/L) | 30 | 120 | 400|
ALP(IU/L) | 200 | 600 | 2000|
総ビリルビン(mg/dL) | 1.0 | 1.1 | 1.3|


実務

問 107-218|実務
Q. 医師との合同カンファレンスにおいて、医師から薬剤師へ投与13日目以降の薬物治療について意見を求められた。薬剤師の提案として、適切なのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 本剤の投与を同一用量のまま継続し、他剤の追加は行わない。
2. 本剤の投与を同一用量のまま継続し、グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物を追加する。
3. 本剤の投与を中止し、緩和ケアのみの治療へ変更する。
4. 本剤の投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩へ変更する。
5. 本剤の投与を休止し、ソラフェニブトシル酸塩へ変更する。


Here:

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 107-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:原発性肺腺がん / ALK融合遺伝子 / クリゾチニブ / アレクチニブ|matsunoya


物理・化学・生物

問 107-219|生物
Q. 本症例では、遺伝子変異により生じたALK融合遺伝子及びALK融合タンパク質が検出されている。がんとこの遺伝子変異に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
■選択肢
1. この患者のがん細胞では、染色体上、ALK遺伝子の一部分に逆位が生じている。
2. この患者のALK融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が亢進している。
3. この患者では、ALK融合遺伝子が親から遺伝したと考えられる。
4. この患者のALK融合遺伝子は、フィラデルフィア染色体の形成により生じる。
5. ALK融合遺伝子の検出にはELISA法が用いられる。


Here:

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 107-218-219【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:原発性肺腺がん / ALK融合遺伝子 / クリゾチニブ / アレクチニブ|matsunoya


■■GPT4o


■問 107-218|実務

■論点|

この問題の論点は、ALK融合遺伝子陽性肺がん患者におけるクリゾチニブの副作用管理と治療選択を特定することです。

■解説1|

本剤の投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩へ変更する。(選択肢4)[正しい]

  • 肝機能障害の評価

    • 本症例では、クリゾチニブ投与によりAST、ALT、ALPが急上昇しており、重大な肝機能障害を示唆しています。
      これはクリゾチニブの既知の副作用で、重篤な場合には投与中止が推奨されます。

  • アレクチニブの適応性

    • アレクチニブは、クリゾチニブ耐性または不耐容のALK陽性非小細胞肺がん患者における標準治療薬であり、肝毒性が比較的少ないことが特徴です。

  • 作用機序の継続性

    • アレクチニブもALKチロシンキナーゼ阻害薬であり、腫瘍抑制効果を維持しつつ副作用のリスクを軽減できます。

■解説2|

  • 国内外のガイドライン(例:NCCNガイドライン)では、クリゾチニブ不耐容の場合にアレクチニブが推奨されることが明記されています。

  • 臨床試験データ:
    ALEX試験では、アレクチニブがクリゾチニブよりも進行の抑制において優れており、副作用プロファイルも改善されていることが示されています。

  • 肝障害の管理指針:
    肝機能障害時には原則として薬剤休止や変更が必要であり、肝障害の程度によっては肝保護剤の併用が推奨されることがありますが、今回のケースでは薬剤変更が合理的です。

■結論|

本剤(クリゾチニブ)の投与継続は患者の肝機能に重大な悪影響を及ぼす可能性があるため、投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩への変更が最適な選択肢です。

■補足|

本剤の投与を同一用量のまま継続し、他剤の追加は行わない。(選択肢1)[誤り]

重篤な肝障害が進行する可能性が高く、安全性が担保されない。

本剤の投与を同一用量のまま継続し、グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物を追加する。(選択肢2)[誤り]

肝保護剤の追加のみでは症状改善が期待できず、根本的な対応にならない。

本剤の投与を中止し、緩和ケアのみの治療へ変更する。(選択肢3)[誤り]

本患者は治療可能な状態であり、緩和ケアへの変更は時期尚早。

本剤の投与を休止し、ソラフェニブトシル酸塩へ変更する。(選択肢5)[誤り]

ソラフェニブはALK陽性腫瘍には適応がなく、効果が期待できない。


■問 107-219|生物

■論点|

この問題の論点は、ALK融合遺伝子及びALK融合タンパク質の特性を正確に把握することです。

■解説1|

この患者のがん細胞では、染色体上、ALK遺伝子の一部分に逆位が生じている。(選択肢1)[正しい]

  • 遺伝子変異の種類

    • ALK融合遺伝子は、2番染色体上で逆位(inversion)が生じ、ALK遺伝子と他の遺伝子(例:EML4)が融合することによって形成されます。

  • 逆位の結果

    • この構造異常により、異常な融合タンパク質が形成され、がん細胞の増殖シグナルが恒常的に活性化します。

この患者のALK融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が亢進している。(選択肢2)[正しい]

  • タンパク質の特性

    • ALK融合タンパク質は、内因性のチロシンキナーゼ活性を持ちますが、融合により制御不能な活性化が引き起こされます。

  • がん細胞の挙動

    • チロシンキナーゼ活性の亢進により、増殖促進や細胞生存に関与するシグナル伝達経路(PI3K/AKT、MAPK経路など)が異常に活性化します。

■解説2|

  • ALK融合遺伝子の診断的重要性

    • ALK融合遺伝子は、特定の肺がん患者において治療標的となるバイオマーカーであり、分子標的薬(クリゾチニブ、アレクチニブなど)の使用を決定づける要因です。

  • 検査方法

    • ALK融合遺伝子の検出にはFISH法(蛍光in situハイブリダイゼーション)やRT-PCR法が用いられます。

■結論|

選択肢1と2は、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの病態生理と関連する正確な記述であり、正しい選択肢です。

■補足|

この患者では、ALK融合遺伝子が親から遺伝したと考えられる。(選択肢3)[誤り]

ALK融合遺伝子は体細胞変異によるものであり、遺伝的に受け継がれることはありません。

この患者のALK融合遺伝子は、フィラデルフィア染色体の形成により生じる。(選択肢4)[誤り]

フィラデルフィア染色体はBCR-ABL融合遺伝子に関連しており、ALK融合遺伝子とは無関係です。

ALK融合遺伝子の検出にはELISA法が用いられる。(選択肢5)[誤り]

ELISA法はタンパク質の検出には適していますが、遺伝子異常の検出には使用されません。


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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。


第107回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問218-219

一般問題(薬学実践問題)


【物理・化学・生物、衛生/実務】

■複合問題|問 107-218-219

Q. 60歳女性。右上葉原発性肺腺がんと診断され、右上葉切除術が施行された。その後、術後補助化学療法が施行され経過観察となった。術後4年経過時、胸部CT写真で右鎖骨上窩リンパ節に転移が認められ、再発と診断された。ALK融合遺伝子陽性が確認されたため、クリゾチニブ250mg、1日2回の投与による治療が開始された。投与13日目時点でリンパ節の腫瘍は縮小傾向を認めた。各時点における主な検査値は以下のとおりである。


肝機能検査値 | 投与前 | 8日目 | 13日目|
AST(IU/L) | 30 | 100 | 350|
ALT(IU/L) | 30 | 120 | 400|
ALP(IU/L) | 200 | 600 | 2000|
総ビリルビン(mg/dL) | 1.0 | 1.1 | 1.3|


実務

問 107-218|実務
Q. 医師との合同カンファレンスにおいて、医師から薬剤師へ投与13日目以降の薬物治療について意見を求められた。薬剤師の提案として、適切なのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 本剤の投与を同一用量のまま継続し、他剤の追加は行わない。
2. 本剤の投与を同一用量のまま継続し、グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物を追加する。
3. 本剤の投与を中止し、緩和ケアのみの治療へ変更する。
4. 本剤の投与を休止し、アレクチニブ塩酸塩へ変更する。
5. 本剤の投与を休止し、ソラフェニブトシル酸塩へ変更する。


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物理・化学・生物

問 107-219|生物
Q. 本症例では、遺伝子変異により生じたALK融合遺伝子及びALK融合タンパク質が検出されている。がんとこの遺伝子変異に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
■選択肢
1. この患者のがん細胞では、染色体上、ALK遺伝子の一部分に逆位が生じている。
2. この患者のALK融合タンパク質では、チロシンキナーゼ活性が亢進している。
3. この患者では、ALK融合遺伝子が親から遺伝したと考えられる。
4. この患者のALK融合遺伝子は、フィラデルフィア染色体の形成により生じる。
5. ALK融合遺伝子の検出にはELISA法が用いられる。


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