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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問98-126【衛生】論点:疫学研究 / 観察研究

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疫学研究 / 観察研究 
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第98回薬剤師国家試験では、必須問題と薬学理論問題の両方において論点を疫学研究、観察研究、疫学研究の分類を論点とした設問が出題されました。

第98回薬剤師国家試験|必須問題 / 問19

Q. 要因曝露に起因する疾病発生頻度が得られる疫学研究手法はどれか。

選択肢|

1. 無作為化比較試験
2. 症例対照研究
3. 記述疫学
4. 横断研究
5. コホート研究

第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126

Q. 以下の疫学調査に関する記述のうち、正しいのはどれか。

スライド1

イタイイタイ病は富山県神通川流域に発生し、1968(昭和 43)年に公害病として認定された疾患である。図1はその当時の神通川流域のカドミウム汚染地域と汚染の程度、図2はその当時の 50歳以上女子人口のイタイイタイ病有病率を示したものである。
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選択肢|

1. 患者発生地域と汚染地域が一致するために、カドミウムを原因とする仮説が立つ。
2. この調査は、介入研究である。
3. この調査は、症例対照研究である。
4. この調査では、交絡因子に関する情報は得られない。
5. この結果からオッズ比を求めることができる。
(論点:疫学研究 / 観察研究)

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滝沢 幸穂

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問98-126【衛生】論点:疫学研究 / 観察研究

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。

解説します。薬剤師国家試験の衛生から、疫学研究 / 観察研究を論点とした問題です。

第98回薬剤師国家試験【衛生】必須問題の問19(問98-19|論点:疫学研究 / 観察研究)および第98回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問126(問98-126|論点:疫学研究 / 観察研究)では、疫学研究の分類およびそれぞれの疫学研究の特徴の理解を問われました。

選択肢から正しいテクニカルタームを選ぶ必須問題および正しい記述を選ぶ薬学理論問題でした。

スライド2

問98-19および問98-126を解説します。
苦手意識がある人も、この機会に疫学研究の基礎を一緒に完全攻略しましょう!

目次|

1|記述疫学と分析疫学
2|介入研究と観察研究
3|横断研究、症例対照研究、コホート研究
4|交絡因子
5|オッズ比

1|記述疫学と分析疫学
Q1. 患者発生地域と汚染地域が一致するために、カドミウムを原因とする仮説が立つ。【正・誤】

解説します。選択肢1(問98-126-1)では、疫学研究における発生要因の仮説設定に関する理解を問われました。

疫学研究には、記述疫学分析疫学という分類の仕方があります。

日本疫学会HP|疫学用語の基礎知識>索引>記述疫学 http://glossary.jeaweb.jp/glossary002.html によれば、記述疫学とは、疫学特性(発症頻度、分布、関連情報)を、人(だれが)、場所(どこで)、時間(いつ)という項目で分別して整理しながら詳しく正確に観察し、記述する研究です。ある集団における疾病の記述疫学の研究結果に基づき、その疾病の発生要因の仮説を設定します。

設問の図を示します。

スライド1

図1には、1968(昭和 43)年当時の水田土壌上層のカドミウム(要因)の分布(μg/g)が場所別に示され、他方、図2には、1968(昭和 43)年当時の50歳以上女子人口のイタイイタイ病有病率(%)が場所別に示されています。

この図から判断すると、設問の疫学研究は、記述疫学である要件「疫学特性(発症頻度、分布、関連情報)を、人(だれが)、場所(どこで)、時間(いつ)という項目で分別して整理しながら詳しく正確に観察し、記述する」を満たしています。

疾病(イタイイタイ病)の発生頻度を、場所(どこで)別の有病率として示して、要因(カドミウム)の場所別の濃度と比較しているからです。

記述疫学の研究である場合、患者発生地域と汚染地域が一致するために、カドミウムを原因とする仮説が設定されます。

設問の図では、有病率が示されました。有病率および罹患率について、解説します。

日本疫学会HP>疫学用語の基礎知識 目次 、有病率と罹患率 http://glossary.jeaweb.jp/glossary016.html を参考として引用します。

有病率とは、ある一時点においての、その集団において疾病を有している人の割合です。横断研究では、その集団の中での、その一時点の有病率と要因の有無の関係から、オッズ比を求めます。

有病率=(集団のある一時点における疾病を有する人の数)÷(集団の調査対象全ての人の数) …(1)

一方、罹患率は、一定期間にどれだけの疾病(健康障害)者が発生したかを示す指標です。
罹患率が上がった場合、発生要因がある場合が多いので、罹患率はアウトカム(転帰|疾病)とその要因との因果関係を研究する場合に有用な指標です。

罹患率=(一定の観察期間に罹患した患者数)÷(危険暴露人口のひとりひとりの観察期間の総和|人-年法) …(2)

ただし、ここで、危険曝露人口とは、疾病に罹患する危険性を持った集団のことです。
例)子宮がんの場合は女性、はしかの場合ははしかの既往歴がない者など。

追跡期間中に対象者が転出、死亡、拒否などで観察集団から脱落することによる追跡バイアスが生じるため、罹患率の分母に、観察された対象者と各対象者についての観察期間を同時に考慮に入れた、人-年が用いられます。

2|介入研究と観察研究
Q2. この調査は、介入研究である。【正・誤】

疫学研究の分類について解説します。

CORE Journal循環器online|EBM用語集 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary/index.php 、「か」の項目、介入研究、観察研究によれば、疫学研究の分類として、介入研究観察研究という分類があります。

介入研究は、治療や薬物投与などの介入が計画的に行われる研究です。あらかじめ治験に関する計画書などが作成されたのち、計画書に書かれた通りの治療や薬物投与などの介入を行い、試験結果を考察します。

それに対して、観察研究は、条件・要因を人為的に変化させない研究です。観察研究の代表的なものとして、横断研究、症例対照研究、コホート研究があげられます。

スライド4

設問の疫学研究では、図2に示されたように、1968(昭和 43)年当時の50歳以上女子人口のイタイイタイ病有病率(%)が場所別に示されています。これは、治療や薬物投与などの介入が計画的に行われる疫学研究である介入研究ではない、条件・要因を人為的に変化させない疫学研究である観察研究です。

3|横断研究、症例対照研究、コホート研究
Q3. この調査は、症例対照研究である。【正・誤】

記述疫学と分析疫学という分類について、まず解説します。

日本疫学会HP>疫学用語の基礎知識 目次、分析疫学 http://glossary.jeaweb.jp/glossary003.html によれば、分析疫学は、記述疫学などから得られた、関連があると疑われた要因(仮説要因|例:カドミウム)と疾病(例:イタイイタイ病)との統計学的関連を確かめ、要因の因果性を推定する方法です。
仮説の検証を主な目的とします。

分析疫学の分類として以下の分類があります。

分析疫学の種類|

症例対照研究、コホート研究、横断研究、生態学的研究

設問の図は、前述のように記述疫学である要素を満たしている一方で、記述疫学から得られた、関連があると疑われた要因(仮説要因|例:カドミウム)と疾病(例:イタイイタイ病)との統計学的関連を確かめ、要因の因果性を推定する疫学研究、分析疫学の一部である可能性もまたあります。

次に、介入研究と観察研究という分類で考えた場合の観察研究の分類、特に、分析疫学の分類について解説します。

日本疫学会HP>疫学用語の基礎知識 目次、コホート研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary006.html によれば、罹患率を算出して因果関係を調査する疫学研究の観察研究に、コホート研究があります。

コホート研究は、調査時点で、要因を持つ集団(曝露群)と要因を持たない集団(非曝露群)を追跡しはじめ、一定期間の追跡の後、両群の疾病の罹患率(または死亡率)を比較する方法です。

どのような要因を持つ者が、どのような疾病に罹患しやすいかを究明し、かつ因果関係の推定を行うことを目的とします。

要因へ曝露した集団と曝露していない集団のそれぞれの共通要因を持つ集団コホートといいます。これらのコホート(それぞれの共通する要因を持つ人たちの集団)がある転帰(アウトカム / 例:咽頭がんを発症する)を示すか追跡する研究です。

コホート研究が症例対照研究と異なる点は、要因を持つ集団に対して転帰を示すまで追跡するという時系列の前後関係が成立するので、要因暴露とアウトカム(転帰)との因果関係の推定を行うことができること、および要因別の母集団(コホート)の罹患率(例:喫煙がある場合とない場合のそれぞれの咽頭がんの罹患率)およびその比率または差分である相対危険度・寄与危険度が算出できることがあげられます。

スライド5

他方、日本疫学会HP>疫学用語の基礎知識 目次、症例対照研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary005.html によれば、症例対照研究とは、疫学研究の観察研究の一種であって、疾病の原因を過去にさかのぼって探索する研究です。

現時点で過去にさかのぼり、目的とする疾病(例えば、咽頭がん)の患者集団(症例)とその疾病に罹患したことのない人の集団(対照)を選択し、要因(例:喫煙)に曝露された人の割合を症例と対照の両群で比較します。

症例対照研究の欠点としては、症例と対照とに母集団からのサンプリングが分かれているので、要因(例:喫煙)の有無で分けた集団のそれぞれの要因別罹患率が算出できないこと、さらに、罹患率の比または差分から求める相対危険度または寄与危険度を直接計算できない側面があり、オッズ比で近似することがあげられます。
要件として、疾病の頻度が低いこと、症例群が母集団の全患者を代表する場合、対照群が母集団を代表する場合を満たすと、オッズ比(≃相対危険の近似値)から因果関係の推定が可能です。

スライド4

日本疫学会HP>疫学用語の基礎知識 目次、横断研究と生態学的研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary004.html によれば、観察研究のひとつである横断研究では、集団の「ある一時点」での疾病(健康障害)の有無と要因の保有状況を同時に(横断的に)調査します。

その調査結果から疾病と要因との関連を明らかにする方法です。

疾病と要因との関連を評価するため、罹患率でなく、一時点でのその集団の「有病率」が用いられます。

横断研究の利点と欠点が、上記参考資料の表1に示されています。

「表1横断研究の利点と欠点」によれば、横断研究の利点としては、研究時間が短い、調査が容易、多くの対象者に対し、多要因に関する調査が可能であること、経済的であることがあります。
一方、欠点としては、疾病と要因の時間的な前後関係が不明であるため、因果関係の推測が困難であること、慢性疾患では疾病罹患前の要因ではなく、疾病罹患により変化した要因との関連性を検討している可能性があること、研究対象要因が必ずしも真の要因ではなく、それと関連する他の要因が真の要因となることもあること、があります。

以上から、設問の図が、仮に、観察研究の疫学分析の論文の一部であったとすると、図2に一時点でのその集団の有病率が記されていて、図1に示されたように、要因の保有状況を同時に(横断的に)調査しますので、この疫学研究は、横断研究である可能性があります。

他方、生態学的研究という分類があります。

生態学的研究では、分析対象を個人でなく、地域または集団単位(国、県、市町村)とし、異なる地域や国の間での要因と疾病の関連を検討します。

イタイイタイ病を地域の特性、地方病というアプローチでとらえる論文であれば、生態学的研究を論じた疫学分析の観察研究である可能性もまたあります。

4|交絡因子
Q4. この調査では、交絡因子に関する情報は得られない。【正・誤】

交絡因子について解説します。

観察研究は、介入研究と異なり、要因をランダムに割付けできないため、バイアスや交絡因子が入り込みやすい特徴があります。

上記、EBM用語集「か」の項目、「交絡因子」によれば、例えば、心筋梗塞(観察事象)との関係を検討する際、仮にコーヒー好きな人に喫煙者(交絡因子)が多い場合、コーヒー好き(要因)が心筋梗塞(観察事象)と関連すると誤認されるおそれがあります。

交絡因子とは、研究対象の要因(例:コーヒー好き)と観察事象(例:心筋梗塞)の真の関係性を歪める別の因子のことです。交絡因子(喫煙)と要因(コーヒー好き)との関連があることによって、要因(コーヒー好き)がアウトカム(転帰|あるいは観察事象 / 心筋梗塞)と関連すると誤認されます。

日本疫学会HP|疫学用語の基礎知識>索引>交絡バイアス 交絡因子 http://glossary.jeaweb.jp/glossary014.html によれば、交絡バイアスは、交絡因子の存在によって生じます。
交絡因子と思われる要因(例:喫煙)が、
1)アウトカム(例えば、心筋梗塞の発生)に影響を与える、
2)要因(例:コーヒー好き)と関連がある、
3)要因(例:コーヒー好き)とアウトカム(例:心筋梗塞の発生)の中間因子でない、
という3つの条件を満たすと、交絡因子であると言うことができます。

また、交絡因子(例:喫煙)が、要因(例:コーヒー好き)とアウトカム(転帰|あるいは観察事象 /例:心筋梗塞の発生)の双方に関連し、片方の集団(例:コーヒー好き)に偏って存在する場合は、要因があるかないかの2つの集団のアウトカムを比較する際に、交絡バイアスを生じます。

スライド4

設問では、土壌中のカドミウムの地域別の分布と、イタイイタイ病の地域別の分布が示されています。

このデータのみでは、交絡因子の情報が得られる可能性は低いかもしれません。

一時点でのその集団の「有病率」が記されていて、疾病(イタイイタイ病)と要因(土壌のカドミウム濃度)の時間的な前後関係は不明であるため、因果関係の推測は困難です。

慢性疾患では疾病罹患前の要因ではなく、疾病罹患により変化した要因との関連性を検討している可能性もあり、研究対象要因が必ずしも真の要因ではなく、それと関連する他の要因(交絡因子)が真の要因となることもあります。

なお、厚生労働省|「食品に含まれるカドミウム」に関するQ&A http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/12/h1209-1c.html Q1-Q4によれば、カドミウム濃度の高い食品を長期的に摂取することで、近位尿細管の再吸収機能障害により腎機能障害を引き起こす可能性があります。

カドミウム中毒としてイタイイタイ病があります。

これは、高濃度のカドミウムの長期にわたる摂取に加えて、様々な要因(妊娠、授乳、老化、栄養不足等)が誘因となって生じたものと考えられています。

低濃度のカドミウムの摂取とは状況が異なり、低濃度の摂取でイタイイタイ病が発症するとは考えられていません。

日本には、全国各地に鉛・銅・亜鉛の鉱山や鉱床が多数あり、鉱山や鉱床に高濃度に含まれるカドミウムが、鉱山開発・精錬などの人の活動によって環境中へ排出されるなどの原因により一部地域の水田・土壌に蓄積されてきました。

米など作物に含まれるカドミウムは、栽培する土壌に含まれるカドミウムが吸収され蓄積されたものです。

以上から、イタイイタイ病の原因は、高濃度のカドミウムの長期にわたる摂取に加えて、様々な要因が誘因となって生じたものと考えられており、他の要因、妊娠、授乳、老化、栄養不足等による分類での有病率のオッズ比の統計的な分析によって、交絡因子の存在の可能性が示唆されることはあると考えられます。

5|オッズ比
Q5. この結果からオッズ比を求めることができる。【正・誤】

オッズ比について解説します。

日本疫学会HP|疫学用語の基礎知識>索引>オッズ比 http://glossary.jeaweb.jp/glossary019.html によれば、オッズとは、「見込み」のことです。
オッズは、ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1-p)に対する比を意味します。

オッズ比とは二つのオッズの比のことです。

コホート研究では、罹患率からオッズ比を得ます。一方、症例対照研究では曝露率からオッズ比を得ます。

前者は曝露群と非曝露群それぞれの罹患/非罹患オッズの比であり、後者は罹患率と非罹患率それぞれの曝露/非曝露オッズの比です。また、横断研究では、有病率からオッズ比を得ることができます。

スライド6

オッズ比(コホート研究)=(A/B)÷(C/D)=(A*D)÷(B*C)

オッズ比(症例対照研究)=(a/b)÷(c/d)=(a*d)÷(b*c)

オッズ比(横断研究)=(A'/B')÷(C'/D')=(A'*D')÷(B'*C')

厚生労働省の正答では、選択肢5(問98-126-5)は、となっていました。有病率からオッズ比は、計算できますよね。

「この結果からオッズ比を求めることができる。」という記述は、正しいです。

スライド8

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スライド7

追記|

問98-126は、疫学研究の実際のデータのような図を示して、疫学研究の分類(記述疫学・分析疫学、介入研究・観察研究)に関する理解と、分析疫学における統計手法の指標(有病率・オッズ比)や疫学統計データの取り扱いにおける特徴(交絡因子・因果関係・発生要因の仮説設定)の概要の理解を問う問題でした。

スライド2

図だけでは、この疫学研究の趣旨や実施に至った経緯や実験計画、結果・考察は不明なので、実際に、記述疫学の研究論文の一部なのか、分析疫学の研究論文の一部なのか、横断研究なのか、生態学的研究なのか、その詳細な分類は判別不可能です。

さらに、オッズ比の概念を正しく理解していれば、選択肢5の記述は正しいことがわかります。

記述の正誤を問う問題としては、言葉がやや足りない設問でした。
気づきがカイゼンにつながります。

スライド9

ポイント|

この調査は、【A】疫学研究(【B】研究)であり、【C】(発症頻度、分布、関連情報)を、【D】という項目で分別して整理しながら詳しく正確に【B】し、【E】する疫学研究(【E】疫学)のイタイイタイ病がカドミウムを原因とするという【F】を目的とした調査結果であるか、または、【G】をする目的での【H】疫学の、ある【I】において、その集団で疾病を有している人の割合である【J】率を示した【K】研究あるいは【L】研究の調査結果である可能性がある。

A. 条件・要因を人為的に変化させない
B. 観察
C. 疫学特性
D. 人(だれが)、場所(どこで)、時間(いつ)
E. 記述
F. 仮説の設定
G. 仮説の検証
H. 分析
I. 一時点
J. 有病
K. 横断
L. 生態学的

この調査は、疾病と要因の【M】が不明であるため、【N】が【O】であること、慢性疾患では【P】ではなく、【Q】との関連性を検討している可能性があること、【R】が必ずしも真の要因ではなく、それと【S】が真の要因となることもある。イタイイタイ病を地域の特性、地方病というアプローチでとらえるなら、設問の図を含む論文が、【L】研究を論じた疫学分析の観察研究をテーマとしている可能性もある。

M. 時間的な前後関係
N. 因果関係の推測
O. 困難
P. 疾病罹患前の要因
Q. 疾病罹患により変化した要因
R. 研究対象要因
S. 関連する他の要因

【T】とは、「【U】」のことであり、【T】は、ある【V】pの、その【W】(1-p)に対する比を意味する。【T】比とは二つの【T】の比のことである。【X】研究では、罹患率から【T】比を得る。一方、【Y】研究では曝露率から【T】比を得る。前者は曝露群と非曝露群それぞれの罹患/非罹患【T】の比であり、後者は罹患率と非罹患率それぞれの曝露/非曝露【T】の比である。また、【K】研究の【J】率から【T】比を得ることができる。

T. オッズ
U. 見込み
V. 事象が起きる確率
W. 事象が起きない確率
X. コホート
Y. 症例対照

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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第98回薬剤師国家試験|必須問題 / 問19

Q. 要因曝露に起因する疾病発生頻度が得られる疫学研究手法はどれか。

選択肢|

1. 無作為化比較試験
2. 症例対照研究
3. 記述疫学
4. 横断研究
5. コホート研究

第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126

Q. 以下の疫学調査に関する記述のうち、正しいのはどれか。

スライド1

イタイイタイ病は富山県神通川流域に発生し、1968(昭和 43)年に公害病として認定された疾患である。図1はその当時の神通川流域のカドミウム汚染地域と汚染の程度、図2はその当時の 50歳以上女子人口のイタイイタイ病有病率を示したものである。
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選択肢|

1. 患者発生地域と汚染地域が一致するために、カドミウムを原因とする仮説が立つ。
2. この調査は、介入研究である。
3. この調査は、症例対照研究である。
4. この調査では、交絡因子に関する情報は得られない。
5. この結果からオッズ比を求めることができる。
(論点:疫学研究 / 観察研究)

参考資料|

スライド3

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