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猫の痛み検知AI「CatsMe」の資金調達に、弱小投資家である私が思いを馳せてみた

ペットテック(「ペット×テクノロジーの略」として、テクノロジーの力によって、ペットに関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとすることを指し、価値や仕組みの創出に寄与している企業・サービス)。

先日プレスリリースがあった株式会社Carelogyが開発・商品化している【CatsMe】というペットテックがシード期における7,000万円の資金調達したよ、という内容。以下。

プレスリリースの記事

「猫のSOS」を見逃さない。精度95%以上の精度で猫の痛みを検知できるAIが「CatsMe(キャッツミー)」。以下、解説動画。

ローンチからわずか1年少しで、世界50カ国で24万ユーザー以上を獲得するという飛躍的な成長をしている。創業が2021年の非上場企業の株式会社Carelogyの近々での成績は以下にバフェット・コードのリンクを貼っておくので参照してほしい。

https://www.buffett-code.com/company/3xhbq0ewk2/

資本金が6,620,200円で、2023年時点でのバリエーションは59百万円。上記調達前での調達額は8百万円。またバフェット・コード以外の評価額は2023年8月時点で408百万円(何この開き…)。現時点では正直わからないが、上記7,000万円調達後はもっと上がりそう。2024年1月からシード投資開始を始めたときの記事と上記プレスリリースのときのVCや投資家の顔ぶれを見ると、今はかなり期待値は上がっていると思う。



そもそもペットテックはどうなっていく?

ここからは私見になる。個人的にこれまで弱小投資家としていくつかのペットテックにも出資してきたので(主にエンジェルとシード期のみ)、ヒットしたか・生き残ったか・終わってしまったか、くらいの発言はできる。ちなみに、上場したペットテックは内資ではゼロだ。3年以上、非上場株を持ち続けている意味はほぼないので、出資してから3年くらいしか追い続けてはいないが、そのくらいのゆるい温度感で話を進める。

ペットテックカオスマップ

ヒット2割・生き残り1割・終わった7割。これが現実。自分が獣医師という職業でもあるので、一般的な投資家とは違った変な期待値を抱えての出資になるのだが、勝敗をつければ完全負け越し。「IPOをするぞ!」「ユニコーンを目指すぜ!」といったイケイケドンドンなスタートアップはほぼないので、そこまで大きいリターンはいつもしていないが、まぁ期待株にはなっていくことはまずない。逆に海外は違う。ペットのAirbnb版で有名なRoverはブラックストーンに買収される前から(2023年にプライベートエクイティファンドにより約23億ドルで全額現金買収された)、かなりのバリエーションの高さが際立ったので株は持たせてもらっていた(キャピタルゲイン済み)。

つまり何が言いたいかというと、日本国内ではあくまでもペットテックはスモールビジネスの域を超えていない、ということ。この先、爆発的に人口もペットの数も増えていけば話は違う。違うが、簡単な話ではない。ではどうなっていくべきなのか?という問いが出てくる。答えは明確で、海外進出しかない、と私は思う。つまり市場のメインを国内だけではなく、海外にも目を向けているスタートアップだけがこの先も勝てる要素を持っていると思われる。


シード期ってなに?

このタイミングでシード期について軽く説明する。シード期というのは、わかりやすくいうとスタートアップが商品やサービスを開発している段階、プロトタイプ開発なう!の時期。ちなみにその前段階のアイデアの検証時期をプレシード期といって、別名エンジェルとも呼ぶ。私自身は、このタイミングで出資することが多い。以下に各資金調達ラウンドを羅列してみる。

エンジェル:アイデア検証
シード:プロトタイプ開発
シリーズA:事業モデル確立
シリーズB:事業拡大
シリーズC以降:さらなる成長・上場準備

資金調達の額面もそれぞれ違っていて、

エンジェル:数百万円
シード:500万円〜5,000万円
シリーズA:1億円〜10億円
シリーズB:10億円〜50億円
シリーズC以降:50億円以上

ざっくりな感じで書いたが、だいたいこんな感じ。なので今回のCarelogyが「シード期における7,000万円の資金調達」というのはだいたい状況的には合っている。合っているけど、もうすでにCatsMeというAIデバイスがあり、国内外にユーザーもいるなかでのこの資金調達なので、深読みするとまだまだこの会社は何かしらを開発していると思われる(採用も)。実際に、今後の展望に書かれており、iOS/Androidアプリの全世界リリースや動物病院との連携機能の搭載や猫関連企業様との事業提携など、CatsMeを猫の総合飼育支援サービスへと進化させていく、と明記されている。

資金調達も難しいってことだ

▷ 資金調達のラウンドについて軽めに解説する

上記で紹介した資金調達ラウンドだが、今後の展望に書かれた事業展開が7,000万円でできるのか?おそらくできない。できないから、このタイミングでプレスリリースを打ったと、私は感じた。追加調達の意味合いでも。実際に、今現時点での売上高はわかっていない。シリーズA〜Bまで至っている商品やサービスなら別だが株単価もわかっていないため、今は粛々に準備をしている状況だと思う。この点が、これまでのペットテックのスタートアップとはだいぶ違う感じがする。整理すると、社内の状況的には、商品があり、国内外のユーザーも多く、サービスの一部は課金制が開始された状況。今後、全世界リリースでユーザー数は100万人以上になるなかで、今回のシード投資を受けた。投資家側からすると、潜在力はシーズンA以上を感じる。開発もだが、今回の資金調達は開発より採用がメインだと思う。上記状況と今後の国内での事業展開のためには、とにかく人が必要だ。特に、動物病院というキーワードからもステークホルダーが一気に増えていくはずで、ここを一気に走ってもらえたら(ここのセールスとマーケティングが大きな分かれ道)、私は大いなる希望を持って投資をしたい。


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