「ヴェノム:ザ・ラスト・ダンス」~SSUの閉店セールか?part1
スタジオ:ソニー・ピクチャズ/コロンビア・ピクチャーズ
監督・制作・原案・脚本:ケリー・マーセル
キャスト
エディ・ブロック/ヴェノム:トム・ハーディ
ストリックランド将軍:キウェテル・イジョフォー
ペイン博士:ジュノー・テンプル
あらすじ
エディとヴェノムが軍隊、警察、シンビオートハンターことゼノファージから狙われて逃亡しつつN.Y(ニューヨーク)を目指します。
① はじめに
SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)の第5弾にして「ヴェノム」シリーズとしては3作目である今作。
ヴェノムとその宿主エディ・ブロックの物語に一つの終止符が打たれるのが本作の一番の見どころであり、今後の作品に繋がる?ヴィランでありシンビオートの創造主、ヌルの登場など話題に事欠かない作品だ。
はじめの感想としては「なんて緩い映画だ、自分個人としては良い所もあるし悪い所もある作品」という感じだった。
この映画の緩さは例えて言うならゴムの緩くなったズボンを履き続けて終いにはパンツが見えてしまっている位の緩さだ。
ここからはどこまでこの映画が緩く、そしてこうなってしまったのかを考えていきたい。
ちなみに今回の記事はかなりのネタバレをしているので苦手な方や今作を見て楽しんだ方は読まないで欲しい。
②行き当たりばったりなストーリー
今作は前作「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」の最後、強制的にトム・ホランドの居るMCUの世界、アース616に着いたヴェノムとエディ。
その後の「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でバーで一杯やってる内に元の世界に戻る場面から始まる。
まずこの時のエディが消えるシーンからして「ノー・ウェイ・ホーム」と「ザ・ラスト・ダンス」では微妙に描写が違う。
作ってる側も明らかに違うことは承知の上でやっているだろうし、うるさ方からツッコまれるのも分かっていながら、変えているのだろう。
この歴史修正からして賛否分かれるのではないか。
更に舞台は変わってエディ達にとって元の世界に戻ると前作に登場した刑事・パトリック・マリガン死亡の原因がエディ・ブロックにあるとの理由で全国指名手配になる。
自分を指名手配にした裁判官を探し出し脅すネタを探すというヒーローあるまじき理由でメキシコからN.Yを目指す。
道中で“偶然”犬を売買している連中の頭を食べたり、酸素がどう考えても薄そうな飛行機の外にへばり付き密航しようとするなど何も計画性のない旅を満喫する2人。そこにヴェノムの種族・シンビオートの創造主ヌルが送り込んだゼノファージが遅いかかってくる。
理由はヴェノムとエディにある物質“コーデックス”を手に入れてどこかの空間に幽閉されているヌル自身を解放するために“コーデックス”が必要だと言うのだ。
しかもコーデックス”を除去する為には、どちらかが死ななくてはならない。
死にたくない2人は逃亡生活を強いられるがシンビオートを研究している謎の組織が2人を襲う。
ここからは更に箇条書きにするが、“偶然”目に入った馬に寄生して移動手段にしたり“偶然“道中に居た面白家族にラスベガスに送ってもらったり、少ないお金を増やすために”偶然“居た酔った放尿男のスーツを取り上げて”運“頼みでスロットに全額突っ込み一瞬で破産したり”偶然“ベガスに居た旧友のミセス・チェンと出会ってゼノファージに見つかるのを承知で完全体の姿でダンスをして、案の定見つかって、更には謎の組織に捕まるというほぼ偶然頼りで物語が進んでいく。
この展開の連続は半ば意図的になのだろう。凸凹二人組による当ての無い旅をコミカルに描きたいのは分かる。
謎の組織も、研究施設が今時エリア51の地下にあるという設定だし、外には「スーパー溶解液?(名前は忘れた)」なる「いつ使うんだ!」と言いたくなるような強力兵器もある。
全体的に設定が緩い組織だ。
組織の科学者ペイン博士(傷と引っ掛けてる?)の登場時、夢の中でお兄さんの死のトラウマを抱えてる事を説明してクライマックスにフラッシュバックを含めた彼女のトラウマ克服をエモさたっぷりに描いているが、正直シリーズ3作目の完結編で急に出てきたキャラクターのエモ話を急に見せられても反応に困るのが正直な気持ちだ。
(見てる間は凄く情感たっぷりの演出に笑いはしたが。)
と、こんな感じで非常に緩く作られてる本作だが、中ば意図的に作られているのだろう。
③どこが意図的?
このシリーズは、重苦しい教訓話や現実の社会を反映しているような映画として作っていないし、あくまで娯楽映画として作っているのだろう。
しかしアメコミの知識が、あるのか、ないのか分からないで作っている雰囲気は2000年代初期辺りのアメコミ映画にも通じる。
この路線で2作成功したヴェノムなので今作でもその路線を変更しなかったのだろう。しかし余りにも過剰に緩くないだろうか?
前作では一応の理屈があって動いていた登場人物も、今作ではほぼ理屈なしで動いている。(前2作でも雑な流れはあったが)
その雑さが許せる人と許せない人は居るだろう。僕は許せたが、それでも「真面目に作ってるのか!」と言いたくなる部分も多い。
かなり長文になってしまったので、一旦本作の感想は終了してpart2ではキャラクター編に移りたいと思います。