「五等分の花嫁*」と五つ子の未来(前編)
アニメーション制作:バイブリーアニメーションスタジオ
監督・シリーズ構成:神保昌登
脚本原案:春場ねぎ
出演者
上杉風太郎:松岡禎丞
中野一花:花澤香菜
中野二乃:竹達彩奈
中野三玖:伊藤美来
中野四葉:佐倉綾音
中野五月:水瀬いのり
あらすじ
勉強嫌いで落第寸前に陥った同級生の五つ子姉妹らをアルバイト家庭教師として高校卒業まで導いた上杉風太郎。それぞれの道へと歩み出した五つ子だったが何か悩みを抱えている様子。
そんな中、風太郎と五つ子は新婚旅行を兼ねたハワイ旅行を計画する。準備は順調に進んでいたが、ある事件が発生して大騒動に。さらにハワイでもトラブルに巻き込まれてしまう。(映画comの解説参照)
①はじめに
2019年にアニメ1期が始まり、2021年公開のアニメ「五等分の花嫁」は劇場映画として完結した。しかし想像以上の大ヒットに応えてアニメで描かれなかった原作のエピソードをアニメ化した「∽(相似記号)」が2023年に劇場公開し更にヒット。
このヒットを受けて、まさかの原作のその後を描いたのが「*」だ。
筆者も楽しみにしていた五つ子と風太郎の物語。果たしてどう描かれたのか。
②全体の感想(ネタバレあり)
まず最初に感じた映画の出来としては、流石に内容が緩すぎて’これでいいのか!'と感じてしまった。
内容は上杉風太郎と中野四葉の新婚旅行に姉妹全員付いて来て、皆んなでハワイのバカンスを楽しむ。しかし現地の子供が突然現れ次女の中野ニ乃に好きな人が居るからと恋愛相談を持ちかける。言語の壁に苦しむニ乃の替わりに五つ子達が入れ替わりながら恋愛相談を受けるのがメインの話。
それと並行して、五つ子達の現在の悩みを風太郎が聞き解決方法を探すのがサブストーリーだ。
まず姉妹全員が新婚旅行に行くというのは最後のオチの笑いとして機能していたのが原作だったが、本当に皆んなで行ってしまうというのは2人だけで落ち着けないではないか!(しかも中野家は父親も同行)とツッコミたいのは置いておこう。
現地の子供が知らない人に声をかけて恋愛相談するというメインストーリーも導入として無理はないか。
サブに追い込まれた五つ子の働き始めてからの悩みも結論が「まず自分の力で頑張る」というのも結局気合いでなんとかしようとしているとしか思えず、何とも言えない気持ちになった。
②どうしてこうなった?
これはインタビューなども見ていない状態での考察になってしまうが、2023年公開の「∽(相似記号)」が公開してからの反響や興行成績などを確認してから続編の発表が決まったのだろう。恐らく制作期間1年あるかないかの状態で作られた本作は明らかに脚本の開発の段階でブラッシュアップ不足が見られる。
五つ子がメインの筈なのに彼女らの悩みは急に現れた現地の女の子の悩みにかき消される。今までの原作準拠のアニメーションとは違い原作のないオリジナルストーリーであっただけに新しい物語を作るのにもう少し時間は必要あったのではないか。
そもそも今後の物語として風太郎と五つ子の関係に変化がないのは想像可能だし、続編の企画としては難しかったのではないか。
次回(後編)では過去作を振り返りつつ今後の作品への予想・アイディアを出していきたいと思います。