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アンドロメダ


昼間のネイチャーガイドの仕事で雨に濡れて、
身体は泥だらけ、髪の毛はベッタベタ。
もう無理!帰りたい~と思いながら残業をしていた時だ。

おじいちゃん上司が、古くて重い天体望遠鏡を運んでいた。
こういう時は、手伝わないといけない感じじゃないか…。
重い身体を引きずって手伝いに行ったら、
「アンドロメダ銀河を見てもらおうと思ってね。」だって。

「星なんか見るよりも、今の仕事を終わらせたいんですよ。」って
言い返したくなったけれど。
望遠鏡の準備を一生懸命やっている姿に、とても言えなかった。

三脚を出して望遠鏡を組み立てて、今度は接眼レンズをのぞいている。
上司は、マイペースな人なのだ。
私はやることがなくなったので、また残業仕事へ戻った。

「見えたよ!」と嬉しそうな声が聞こえたので、私は望遠鏡の所へ行く。
のぞいてみると、楕円形のぼんやりした明るい雲のようなものが見えた。

疲れと身体の汚れで不快感MAXなはずなのに、
お腹の底から「すごい」って思った。
それに、なんか不思議な感じもした。
鏡に映った自分の姿を初めて見たような、懐かしいような、そんな感じ。


その夜が、今から5年前。
手術することになり、当時の仕事は辞めた。

今の私は、自分の心を動かしたい。

秋の星座として知られているアンドロメダ座。
そこに見える、ぼんやりした楕円形を、また見たい。



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