PATIENT NUMBER 9 / Ozzy Osbourne
コロナ禍だからこその産物。オジーから3年間我慢し続けている地球上へのせめてものプレゼント。前作から2年という異例のスピードでリリースされた本作は誇張なく名盤の輝きをもつ素晴らしい作品となった。
プロデュースは前作と同様のグラミー・プロデューサーのアンドリュー・ワット。
ジャスティン・ビーバーやポスト・マローンとの仕事で名を上げているが、HRHM好きとしては、グレン・ヒューズ、ジェイソン・ボーナムと共に結成したCarifolnia Breedのギタリストのイメージが強いだろう。
なので根底にはロック、ハードロックの血が色濃く流れるミュージシャンであることは間違いなく、逆にポップやヒップホップにも精通する多彩でリベラルなコンポーザーとも言えよう。
前作「Ordinary Man」はスラッシュやトム・モレノといった所謂"コッチ側"ゲストに加え、"ソッチ側"のポスト・マローンやトラヴィス・スコットも交え、オジーのメロディやハードロックへのリスペクトは表しつつ、ヘヴィさの解釈やアンビエントさも含め最先端のエッセンスを帝王に纏わせた快作となった。
今作はある種前作と似て非なるアプローチの作品に感じる。もちろん「Ordinary Man」も極端に現代アメリカン・ポップやヒップ・ポップを導入したような実験的な作品ではなかったが、今作は前作に感じた「オジーらしさと現代の混ざり感」ではなく、「よりオジーの原点を感じさせる初期作品の現代アップロード版」のような聴き応えだった。
この辺はゲスト・ギタリストにも表れていて
・ジェフ・ベック
・エリック・クラプトン
・マイク・マクレディ(Pearl Jam)
・ザック・ワイルド
そして、オジーのソロアルバム初参加の
トニー・アイオミ
前作の"安定と変化のハイブリッド"なメンバーからすると、よりプリミティブでオーセンティックなロック、ハードロックを想起させるギタリスト陣であることが分かる。
楽曲もダイレクトにハードロックのダイナミズムやオージーらしい泣きメロを感じる曲が多く、ゲストの"絶対にクラプトン!""コレはJBしかあり得ない"と言ったプレイやトーンが絶妙にブレンドされているので、この辺りの塩梅はアンドリュー・ワットに拍手しかない。
どの曲も基礎点が高いのだが、個人的な思い入れも含めて、やはり
トニー・アイオミとの共演となった
#7 No Escape From Now
はまさに2022年のBlack Sabbathとしか言いようのない楽曲でベストソングとしたい。
最後にバックを固めた、前作から引き続きのチャド・スミス、ダフ・マッケイガン。
奇しくも今WOWOWのFoo Fightersライブを見ながらこのコラムを書いているが、先日惜しまれつつ亡くなったテイラー・ホーキンスも本作には参加しており、パワーとポジティブな活力ある彼らしいドラミングを聴かせてくれている。
また、ベースにはMetalicaのロバート・トゥルージロも加わり盤石のオジーバンド体制を築いた。
テイラーは叶わないが、このメンバーのいずれかの組み合わせで是非来日公演を実現して欲しい。そして(キャンセルになった)2019年のダウンロード ・ジャパンで来日していたとしても聴けなかった直近2枚のアルバムの曲を披露し
「待った甲斐があった(泣)」と思わせて欲しい。