大阪から来た 私にとっての松川町
南信州クリエイティブコミュニティに参加する大学生のきなりです。
松川町のPRの一環として、松川町に住む同年代の女子にインタビューをした内容を記事として投稿していきます。]
初回は、大阪から松川町に来て果樹研修生として果樹栽培を学ぶなおにインタビューしました。
きなり
まずは松川町で今、何をしているのか?簡単に説明してもらえますか?
なお
私は果樹研修制度という3年間研修を受けて、果樹農家の独立を目指す研修制度を利用しています。去年の2月に松川に来て、今2年目を迎えています。去年はリンゴの会社で基礎的なことを教えてもらって、今年は個人の農家さんの下で、果樹の勉強をしています。来年からは自分一人で畑作業をして、再来年からは補助金がなくなって農業で稼いで生計を立てていく形になります。
きなり
去年の2月から研修を受けて、今は農家さんの下でりんごを育てているんですね。
なお
今は桃と梨を育てています。果樹研修制度は毎年2人ずつで、1年目はリンゴの会社に行くんですけど、2年目は役場の人が希望を聞いてくれて。
今行っている農家さんは桃に梨、リンゴ、さらには市田柿までやってます。
きなり
幅広いですね。
なお
今通っている農家さん以外も、季節ごとに複数の種類の果樹を育てていて、1本に絞っている人はあまりいないと思います。果樹研修制度の1期生の先輩が桃1本で取り組んでいますが、その人くらいしか聞いたことないかも。
きなり
そういった農家の移り変わりみたいなものを知らないので面白い。
なお
スーパー行ったらなんでもあるもんね。私も松川に来て、その魅力を全力で感じているかもしれない。果物以外にも果物や野菜、山菜も虫も花も鳥も、この時期になるとこれが出てくるみたいなのがあって。
きなり
それはめっちゃ良い!ほんとうに四季を全力で感じてるんですね。
なお
季節の移り変わりはどの国でもあるわけではないし、日本の中でも地域によっては感じづらい。松川町は春も秋もしっかりあると私は思う。例えば、春は桜も咲くけど、果樹の木も全部お花が咲く。週単位で花が咲いていくから、これから果樹の時期が始まるということでみんなそわそわしている。
きなり
なるほど。都会にいると春って少し桜があったり、桜のスイーツが出始めたり、その程度じゃないですか。だからめっちゃいいなって思いました。
なお
みんな忙しいから、お花見をする文化もあんまりなくて。あと、都会の桜は道に1本ずつ生えているイメージだけど、こっちの桜は1本で見せてくる。巨大な桜の木があって、みんなそれを見に来るから、レジャーシートを敷いて楽しむとかそんな感じではない。是非、春にも来てほしい。
きなり
今は秋ですけど、何で秋を感じますか?
なお
一つはリンゴが凄く美味しくなることですかね。8月を過ぎたあたりからリンゴは出始めるんだけど、やっぱり秋のリンゴは違う、美味しい!
きなり
どういう風に違うんですか?
なお
こっちの言葉で「ぼけぼけ」っていうんですけど、夏のリンゴはやわらかいというか。それが、秋になって少し寒くなると、リンゴも引き締まって美味しい。
きなり
少し話が変わって、そもそもどうして松川町に来ようと思ったんですか?
なお
元々、普通に就職活動して、自分も3年生からインターンに参加して、会社の説明会にもいろいろ行って、面接も何件か受けたんだけど、自己分析した結果、農業に行きついて。
でも農業はしたことがなかったので、夏休みに行こうと思って、農業向けの求人サイト・あぐりナビで2週間の短期で住み込みOKの募集を探したら、長野県・川上村っていうレタスの名産地の案件しかなくて、そこで最初はレタスの収穫をやってて楽しかったんやけど、なんかぴんと来なくて。
農業にも向き・不向きがあるから、食べるのが好きなもので行こうと思って。それで川上村の人から果物だと松川というところが最高に美味しいらしいと教えてもらって。その村の人の知り合いについて松川町に行ったのが、大学三年生の9月末くらいでした。ちょうど梨の季節で、南水っていう南信エリアで生まれた梨の品種があるんだけど、それが美味しくて。
梨は元々好きで大阪の時も食べてたけど、豊水幸水とか20世紀梨とかしか売ってなかったから、南水なんて見たことなくて。それが松川町との出会いです。
きなり
最初から農家として松川に行ったわけではないんですね。
なお
最初は付き添いでした。その後、入っていたサークルの先生が農学部の先生だったので、進路の相談をしたところ、福島県の地域おこし協力隊を勧めてもらいました。福島と私が通っていた大学とで提携している農家さんが居て、地域おこしもやっているから行ってみたら?って教えてくれて。
それで、福島を訪れて1週間ほど、体験をさせてもらいました。そこは苺とアンスリウムっていうお花の農家さんで、完全ハウス栽培で温度調整も出来るみたいな感じだった。
刺激的やったけども、なんか違うなと思った。とは言っても、先生にお勧めしてもらったから福島に行くんだろうなと思っていたところ、松川町にも果樹研修制度があることを知って、これだ!と思った。
きなり
どこが違うなと思ったんですか。
なお
なんというか、業務的な側面が強くて、会社っぽく、植物を育てるのは簡単という感じもあって。だから、私がやりたい農業ではないなと感じ、私に何かできるわけでもないけど、私は必要とされてなさそうだなって思って。
きなり
なるほど。
なお
それで松川に来たら果物は美味しいし、何よりも人が良すぎて、それが決め手になった感じですね。
きなり
そもそも就職活動をしている中で、何がきっかけで農業に行こうと思ったんですか?
なお
自己分析をしている中で、自分が死ぬまでになっていたい姿ややっておきたいことを考えていたら、「誰もが心地いいと感じる場所を作り上げたりとか提供したりとか、築きたい」ということが浮かんできて。それを軸にやってみたいことリストを作っていました。それこそ、お風呂に入っているときやテレビを見ているときに浮かんだやってみたいことも全部メモしていて。
それで浮かんだのは、例えば、鶏を飼ってみたいとか、自分のオリジナルロゴを作りたいとか、ショップやりたい、民泊やりたいとか・・・
沢山出てくる中で、次第にどうやってこれを1つの職業にまとめるんだろうと思い始めて。まず、鶏を飼いたいの時点で田舎暮らししかないし、すべて出来るのは農業じゃないか?と思ったのが一つ(笑)
あと、大学の時に食品ロス削減のサークルに入っていたんですが、卒業して就職して、食品ロスの取り組みも終わりみたいなのも気持ち悪くて。
どうせなら食品ロス削減の取り組みを続けられる職業をしたいなとも思っていて。その点、食品ロス削減の究極が自分で必要な分だけ作って自分で消費することだと思う。それであれば農業じゃない?みたいな感じにどんどん繋がってきた。だから果物が好きで育てたかったとかじゃなくて、周辺部から農業になっていった。
だから、別に野菜でも花でも果物でもなんでも良かった。
でも、自分で育てて納得するし、うれしいのは果物やなって思って、果樹栽培を選んだ感じです。
きなり
自分のやりたいことを整理していったときに手段として浮上してきたのが農業だった。その結果、大阪から農業をやるために松川町に来たんですね。
なお
そうです!
きなり
農業の良いところはどこだと思いますか?
なお
これがゴールですっていうのが決まっていないことだと思っています。
ちょっと飛躍的かもだけど、普通の会社だと目標が昇格するとか社長になるとかがゴールになると思う。
でも、農業には決まった形が無くて、やり方次第で色々出来るし、いろんな形態もある。数十年かけて、一番の上の立場になるとかそういうのもない。数年頑張れば、十数年働いた社会人に値する収入を頑張ったら得られる可能性もあるし、それが農業の魅力かなと思っています。
きなり
話を聞いていて、「場づくり」というのも一つのテーマであるように感じたのですが、場づくりの視点で、今、やってみたいことはあるんですか?
なお
それが今、難しくてね。大学生の時に思い描いていたより、現実的になってきているので。経済的な部分や資金面もあるし、拠点も畑と近い方が良いけど、そんな拠点なかなかない、みたいに考えが狭くなってきちゃって。大学生の時は自分の畑をベースに宿泊できる民泊にしたり、畑で映画館やってみたかったり、結婚式場に出来ないかな?とも思ったり。
結婚式場の何が良いって、思い出になるから、将来、思い出の地にリンゴ狩りに行こうとか繋がりにもなっていくし。
なお
結婚式場も良いなと思っていたんだけど、いざこっちに来てみたら、同じようなことをしようとしている人も何人かいるし、違うことしたいなって思って。
最近、気になっているのは松川町って歩ける場所が少ないなということ。
そもそも町を歩いている人がいないし。自分の家から近い所に歩いていくことはあるけど、知り合いが増えれば増えるほど、この前、歩いてたねと声を掛けられて。嬉しいけどちょっと恥ずかしいみたいな。なんで歩かないのかなって言うと立ち止まるスポットがあんまりない。街灯は可愛いとかないし、マンホールは可愛いけど、道路に絵が描いているとかそういうのもない。せめて県外の人が宿泊できる「清流苑」あたりの道くらいは歩く人が多くなるような工夫ができたら良いなとか思っていて。
そうしたら、カフェとかやっちゃうか、みたいにも思い始めていて(笑)
きなり
さっき現実的になっているって言ってたと思うんですけど、聞いているとネガティブではないなと感じていて。ただ考えているだけじゃなくて、実際に行動してみた結果、見えてくることじゃないですか。1回動いてみて、その結果を踏まえて、こうしたほうが良いなという風に町に合わせて新しいアイデアになっているのはめっちゃ良いなと思って。
なお
なんていい子なんでしょう。リンゴいります?(笑)
きなり
ありがとうございます。研修制度が終わった後はどう考えていますか?
なお
少なくとも今は松川町に骨をうずめてやるぞと思っています。今は。気が変わらない限りはそうかな。
きなり
松川でやっぱりやろうって思える理由は何ですか?
なお
私、辞めるとか断るのが大嫌いで。来月には辞めたいですって言った後のこいつやめるんだみたいに思われるのが嫌だから、辞めると言い出すのがめっちゃ嫌で、バイトを辞めるのも凄い嫌だったくらい。だから転職とかも無理なタイプだと思っていて。家族が引っ越すとかそういう理由じゃないと辞められないと思っているくらい。大学卒業してからまっすぐ農業に来たので就職してからでも良いんじゃない?って言われるけど、それは無理。農業の場合、果物を作り始めてお客さんが出来てしまったら断ることが出来ない。
そういう意味では最初から覚悟は決まっています。
きなり
楽観的にとりあえず2,3年やって、無理だったら辞めようみたいな人も絶対いると思うんですけど、決めたらやるというか、自分の性格を理解したうえでどうなるかわからないのにそこに行くのは凄いなと思う。
なお
本当に町の人のおかげだとめっちゃ思っています。別に長野に親戚がいるとかそういうわけじゃないけど、全然寂しくないのは皆さんが気にかけてくれるからかなと。
きなり
最後に、今後、松川町でこう暮らしていきたいとかありますか?
なお
松川町の人は県外からやって来たこんな小娘も受け入れてくれて、受け止めてくれるような性格なので、自分もとどまりたいし、その姿勢を尊重したい。松川町の人が守ってきた畑も、慣習も良い意味で受け取って引き継いでいきたいと思っています。