水田水位監視システムの導入①
稲作における水管理とは
稲作には様々な工程がありますが、田植え後には圃場の苗の育成のためにその土地や品種に適した水量を維持することが必要となります。こういった水管理は大変重要ではありますが、現状育成者が田んぼを見回り、水が少なければ水を入れ、深すぎる場合は水を抜かなくてはなりません。以下は水管理の様子を示した文章です。
水管理が必要な時期は気候、品種によって異なりますが、平均5月から8月までの期間となり、この間に水位が高くなりすぎないよう、水温が低くなりすぎないよう調整する必要があるのです。
一見単純な作業に見えるかもしれませんが、稲作農家戸数のうち小規模な兼業稲作農家が大きな割合を締めます(参考文献)。兼業農家の方々の多くはこういった水管理を朝、昼、晩のタイミングで行っていますが、現場に行く回数を減らすことで省力化を図ることができます。
南小国町の水田は平野だけではなく、山の中や谷合いにおいても営われており、水位の遠隔監視は見回り時間の短縮に寄与します。また雨や台風の際の見回りは危険を伴いますので、遠隔で状態監視を行うことができるとするならば防災面でも役立つでしょう(参考文献)。
水管理システムの現状
上記のような背景から稲作における水管理の自動化や支援システムは農業IoT、スマート農業黎明期から存在しました。以下2つのサービスをご紹介します。
PaddyWatch
本サービスは水田水位センサと対応データのアプリケーションが一体化されたものです。
水田の水管理に焦点を当てたサービスで、水位センサを水田に設置し、水位だけでなく環境データなどを収集するものです。
paditch
水田の水管理のために3種類のサービスが提供されています。
paditch drain 01:スマホで田んぼダム自動化
padich gate +2:水門向け自動給水装置
padich valve:パイプライン型の自動給水栓
このように水管理に関するデータ収集、利活用、また水の給水自動化といった農業IoT、スマート農業向けのサービスは農業の現場に広まりつつあります。
水管理システム開発の意義
長野県小谷村で行ったおたりスマートソンプロジェクトでは、棚田といった環境において既存のシステムを導入しづらい状況にありましたので、環境に合わせたシステム開発を行いました。
大規模農業向けの製品・サービスのラインナップは多様化しているものの、棚田といった広域ネットワークが入りづらい、機械を利用しづらい場所においてはカスタマイズが必要になってしまう部分もあり、ある程度利用可能性を調査するために自身で開発して調査してみる必要がありました。
参考 おたりスマートソン
南小国町でも類似の環境であったため、今回私たちの研究室で培った知見を共有させていただくことになりました。
次の記事にて実際に南小国町に水田水位センサを導入した事例についてご紹介いたします。