水田水位監視システムの導入②
こちらの記事で水田水位監視システムの導入の背景についてお話しました。
次に南小国町さんにおける2021年からはじまった水田水位監視システムの導入についてお話していきたいと思います。
水田水位監視システム導入のステップ
デバイスの選定
おたりスマートソンの際にはデバイスの大きさが課題となっており、小型化を目指していました。その際にご協力いただいたInnovation Farm, Inc.さんから一台Sigfoxベースの1mm単位の水位計測が可能なデバイスをお借りしました。取得データは、「水位」、「温度」、「湿度」、「気圧」、「RSSI(電波強度)」、「電池残量」です。
この時に比べるとだいぶコンパクトに、またデバイスを構成する部品がかなり少なくなったため、設置においても簡潔に行うことができるようになりました。
ネットワークの選定
上記ですでに記載していますがデバイスがSigfoxネットワークとつながるためのインターフェースを搭載しているため、今回はSigfoxを利用することになりました。Sigfoxては以下のようなネットワークです。
南小国町には残念ながらSigfoxネットワークエリア圏外であったため、簡易基地局を借りて、実証実験を行う田んぼの近くの建物内に設置しました。
Webアプリケーション
今回は小谷村での実証実験で利用したアプリケーションの流用と、Slackを利用しました。Slackでは毎日サマリーとして以下の画像データを自動投稿し、ナタリーさんにデバイスの稼働状況と水位をアプリケーションより細かく確認してもらいました。
今回はWebアプリケーションは主に農家の梅木さん向けに、Slackへの自動グラフ投稿は管理者のナタリーさん向けとしました。WebアプリケーションからはRSSIや電池残量のデータはグラフ化せず、水位や他の環境データのみとしたためです。本来であれば管理者モードをWebアプリケーションに搭載して、閲覧したいデータを選択できるようにすべきでしたが、どのようなデータやグラフなどの情報提示方法が役立つかわからなったため、テストも兼ねてSlackの自動グラフ投稿botを作成しました。
実証実験
上記を用いて梅木さん所有の田んぼにデバイスを設置しました。今回はフルリモートでの設置を行ったため、以下の段取りで開始しました。
ナタリーさんが梅木さんと相談上、実証実験の水田を確保(ネットワークが入るか等の下準備をした上で選定)
東京電機大学知的情報空間研究室より機材を発送
ナタリーさんが機材を設置、リモートにて知的情報空間研究室でデータがデバイスから届いていることを確認
実験開始
チームの体制は以下の記事を参照ください。
残念ながら筆者は水を張っている時期に南小国町を訪れることが難しかったため、以下の写真は2021年9月のものです。すでに稲穂が実っているため水は抜いている状態ですが、環境データの収集とデバイスの耐久テストを行うために設置を続けていました。
実験後にデータ精度の確認およびWebアプリケーションの使用感を確認しました。今回の実証実験は水位データが最も必要にある5月以降、7月の設置となってしまったため、使用感に関するデータに不足がありました。梅木さんからいただいた感想を以下にまとめます。
水位データが正確であれば見回りの順番を決めて効率化が図れそう
見回り後には水位を適正に保つために水路の調整などを行うため、サポートにはなるものの実際の現場に行くことにはかわりないため画像データが欲しい
まとめ
今回水位データが最も必要となる時期に導入できなかった点は改善すべき点ではあるものの、今回の実証実験ではリモートで実施する体制づくりはできました。こちらは大変大きな成果でナタリーさんのようなIoTについて理解した地域コミュニケーターの方がいると協力体制が作りやすく、技術サポート側が現地に足を運ばなくとも運用できるようになれば、コストも大幅に下がります。前述は地域の農業について地域共有してくださる梅木さんのご協力、また後者はネットワークの理解も含めて適切なネットワーク運用ができれば他のIoTシステムも導入でき、他の地域課題解決にも利用可能です。
2021年の実証実験は上記のように幕を閉じました。また梅木さんの要望から2022年は画像データの取得に挑戦することになりました。こちらの実験についてはナタリーさんがまとめてくださる予定ですので、公開されましたらご紹介させていただきます。