気象データを用いた稲作育成支援アプリケーションの開発
🔊 背景
水田水位センサは水位という稲の育成期にアプローチするもので、リアルタイム性の高いデータを収集できるという点では優秀です。ただし、多くの農家の方はすでに多くの投資を行っているため、IoT機器の導入までコストを掛けられないというお話はよく聞いていました。
そこで重要となるデータが「気象データ」です。現状気象データは気象庁が過去データの配布を、民間企業がリアルタイム性の高い気象データの有償、無償配布を行っています。ビッグデータの取り扱いに関する技術がバックエンド、フロントエンドで発展した関係により、とりわけ気象データは大変利用しやすくなりました。
IoTデバイスからは決められた局所的なデータを得られるというメリットがありますが、誰か導入するのか、運用するのか、といったコストがかかります。これらのスキームがあり、コストメリットが見られるのであれば導入への期待ができますが、面的に集められ、データ補正がなされている気象データを他のデータと掛け合わせることにより局所にもデータ活用ができるようにすることを本取り組みでは目指しました。
🔊 気象データを用いた稲作育成支援アプリケーション
このような背景からIoTアプリケーションの導入とは別プロジェクトとして、同時期に気象データを活用した稲作育成支援アプリケーションを作成し始めました。
🔊 アプリの目的
水稲は出穂後20日間の平均気温が26℃~27℃以上になると白未熟粒の発生の割合が増加するという性質を持っています。また、10日間の最高気温が32℃を超えると胴割粒が発生し品質に影響を与えてしまいます。
そこで本取り組みでは、気象ダッシュボードを利用し,高温障害の危険度を提供することで高温障害の予防・対策を目指しました。
🔊 高温障害とは
高温障害で米に対して起きる2つの事例を示します。基本的にはいいお米を作るためには高温障害を防ぐことが必要になります。
白未熟粒:
米にデンプンが充分に蓄積されないまま登熟を完了してしまうことで,デンプンのつまらなかった部分が白濁して見える
高温障害によって発生する主な白未熟粒は,乳白粒,背白粒,基部未熟粒と言われている
胴割粒:
粒平面に亀裂の程度に関わらず亀裂が入っているものを指す
利用データ
今回は株式会社IBMのグループ会社が提供しているTWC(The Weather Company)を利用しました。
TWCではWeb APIを用いることで地形、時間に最も適した気象予測データを500mメッシュで作成するもので、気象予測データは最大15日先まで取得できます。今回はJSON形式のデータを利用し、Webアプリケーションの構音障害の予想データを生成し、通知するアプリを作成することとしました。
Webアプリケーション
今回はNode-REDという開発ツールを用いアプリケーションを開発しました。Node-REDについては以下を参考にいただければと思いますが、リアルタイム性の高いデータを扱うためのツールであり、バックエンド、フロントサイドともに開発可能です。
こちらのツールを使い作成したWebアプリケーションを以下の画像に示します。こちら実際に農業IoTチームの梅木さんにご使用いただきました。
🔊 まとめ
実験を行った2021年は8月の平均気温が低く、下旬以降は低温、日照不足であったため,高温障害の影響が少なく、こちらの症状が出なかったこともあり、高温障害予測は需要が高くありませんでした。また、南小国町は比較的夏は涼しいため、本機能はさらに利用が少なかったことが挙げられます。しかしながら気候変動によって今後の気温については変動する可能性がありますので、注視する必要があると考えています。
また、本アプリには刈り取り時期予測を搭載していましたが、こちらはかなり好評でした。刈り取り時期情報の需要は高いことは小谷村の実験からもわかっていましたので、こちらも今後ともデータ収集し、精度を上げていく必要があると感じました。
🔊 参考文献
[1] 検査用語の解説 “URL: https://www.maff.go.jp/j/seisan/syoryu/kensa/kome/k_kikaku/k_kaisetsu/”